2022年、2023年と2年連続で国際競争力ナンバーワン。それどころか、世界デジタル競争力、電子政府ランキング、環境パフォーマンス、SDGs達成度などで世界でもトップレベルの評価を受けている北欧の小国、デンマーク。しかし、デンマークのビジネスパーソンは午後4時に仕事を切り上げて家族や友人との団欒を愉しみ、週末はスポーツ大会やホームパーティを楽しむなど、どうみても仕事に精を出している様子は見えない。世界一ゆるいけどすごい働き方を実践する、デンマーク人の思考法とは? 『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(PHPビジネス新書)の一部を引用、再編集してお届けする。全4回。1回目。
素敵な矛盾に満ちた国
北欧のデンマークは素敵な矛盾に満ちている国だ。
スーパーに行っても気の利いた弁当もデリもなく、約500~1200円のサンドイッチやサラダくらいしかなくて、商品の選択肢の少なさに悲しくなる。
一般的に食への関心はそれほど高くはなく、ランチは茶色いライ麦パンのオープンサンドを食べれば十分といった国民である。それにもかかわらず世界のガストロノミーをリードするレストランが意外とある。ただし目を疑うほど高額だ。
物価が高くて、カフェでカフェラテ1杯とサンドイッチ1個を注文するだけで約2500円もする。(2500円が一般的に最低ラインの時給)また税金も高く、消費税は25%で給料の約半分を税金として納めなければならない。
一方で、家庭菜園を楽しみ、週末には公園や森を散歩し、のどかな自然を愛する国民たち。それなのに高齢者もITを駆使し、ネットバンクやオンライン手続きを当たり前に利用する「デジタル化先進国」でもある。
面積は九州程度で、人口は約590万人の小さな国であるにもかかわらず、幸福度・貧困率の低さ・格差の小ささ・汚職率の低さ・デジタル化・国際競争力など、社会的な国際ランキングにおけるデンマークの存在感は圧倒的だ。
玩具レゴブロックで知られるレゴ社、ビールメーカーのカールスバーグ社、風力発電機の設計・製造・販売で世界をリードするべスタス社、コンテナ船を強みとする世界一の海運企業マースク社、グローバルな製薬会社のノボノルディスク社など、デンマーク発の世界的企業も多い。
世界ナンバーワンの圧倒的な「ビジネス効率性」
2022年と2023年と連続して、デンマークは国際競争力ランキングで世界ナンバーワンに選ばれ、世界から大きな注目を浴びた。このランキングはIMD(国際経営開発研究所)が行なった調査で、ちなみに日本は2022年が34位、2023年は35位だった。
なぜデンマークは国際競争力が高いのか。
国際競争力ランキングは「経済状況」「政府の効率性」「ビジネス効率性」「インフラ」という4つのカテゴリの総合評価で決まる。デンマークは「ビジネス効率性」において、2020年から4年間連続で首位を走ってきた。
つまり、デンマークの圧倒的な強みは「ビジネス効率性」にあるのだ。
競争力の決め手は、時代の変化への対応力
デンマーク産業連盟(DI)のアラン・ソーレンセンは、こう話す。
「デンマークの高い国際競争力の主な理由は、状況変化に対する企業の迅速な対応力、モチベーションが高い社員、高度なDX化である」
また、デンマーク企業は社員・社会・環境に配慮する傾向があり、そのスタイルが時代のニーズに合っている、と言い添える。さらに、ソーレンセンの指摘はこう言い換えられないだろうか。
「デンマーク人は、時代のニーズを読み取って変化する力を持っている」
デンマークがさまざまなランキングに置いてトップクラスで評価されているのは、まさに未来を見通す「先見の明」を持っているからである。普段はのんびりしているデンマーク人だが、じつはさりげなく準備しているし、いざ変化が起こったときの機動力は半端ない。
変化し続ける環境を的確に把握し、自分たちが持っている知恵とリソースを最大限に使って、どんな状況でも前に進んでいこうとする。
これが「ビジネス先進国」を支えるデンマーク人の正体である。