2022年、2023年と2年連続で国際競争力ナンバーワン。それどころか、世界デジタル競争力、電子政府ランキング、環境パフォーマンス、SDGs達成度などで世界でもトップレベルの評価を受けている北欧の小国、デンマーク。しかし、デンマークのビジネスパーソンは午後4時に仕事を切り上げて家族や友人との団欒を愉しみ、週末はスポーツ大会やホームパーティを楽しむなど、どうみても仕事に精を出している様子は見えない。世界一ゆるいけどすごい働き方を実践する、デンマーク人の思考法とは?『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(PHPビジネス新書)の一部を引用、再編集してお届けする。全4回。3回目。#1/#2
世界一のワークライフバランスを実現する首都コペンハーゲン
フォーブスの調査によると、2023年、コペンハーゲンは世界の主要な都市のなかで、ワークライフバランスを実現している都市ナンバーワンに選ばれた。フォーブスは、コペンハーゲンが1位に輝いた理由について、以下のように述べている。
コペンハーゲンに暮らす人々は「ヒュッゲ(心地よさ)」を大切にしている。自分や他人を大切にし、リラックスし、人生の喜びを感じることに時間を使っている。
また、職場もプライベートライフを尊重し、年間5週間の休暇とフレックスタイム制、夫婦合わせて52週間の育児休暇を提供している。
コペンハーゲンは緑豊かで、大きな公園がいくつもあり、春夏には人々が水着で(たまに女性も上半身裸で)寝転がって日光浴をしている。快晴で温かい平日の午後3時頃、運河沿いに並んで座っておしゃべりをしたり、寝そべったりしている人たちを見ると、とてもではないが「ビジネスライク」には思えないだろう。
しかし、デンマーク人は「ライフ」を大切にしているからこそ、フルに充電したエネルギーを使って「ワーク」に取り組めている。「ワーク」の目的が「ライフ」を充実させることにあるから、プライベートの時間を侵さず、短時間で最大限の成果を出せるのだ。
「ワーク」と「ライフ」がトレードオフの関係ではなく、ポジティブなサイクルになって循環する。それこそがデンマークが体現する、本当の意味での「ワークライフバランス」なのである。
仕事も家事育児も「夫婦の共同プロジェクト」
デンマークは「家事育児は女性が担うもの」といった考え方は通用しない。男性は仕事を言い訳に家事育児を放棄できないし、女性は家事育児を言い訳に仕事を放棄できないのだ。
だから、「結婚して専業主婦になりたい」「ちょっと社会人を経験してから寿退社したい」という女性や、「一家の大黒柱として稼いでいるのだから、家事育児は妻がすべき」「仕事が忙しいから、子供の世話はできない」という男性には、かなり厳しい社会である。
2人ともフルタイムで働いて、午後4時以降は夫婦そろってファミリータイムを持つ。そして2人分の財布を合わせ、快適な暮らしづくりや、長いバケーションを楽しむ。それがデンマークの一般的な夫婦の形だ。
そのためデンマークでは、仕事漬けの男性は、経済的に自立している女性からあっさりと別れを告げられてしまう。夫婦共働きの「ワークライフバランス先進国」は、そんな危険とも隣り合わせである。