2022年、2023年と2年連続で国際競争力ナンバーワン。それどころか、世界デジタル競争力、電子政府ランキング、環境パフォーマンス、SDGs達成度などで世界でもトップレベルの評価を受けている北欧の小国、デンマーク。しかし、デンマークのビジネスパーソンは午後4時に仕事を切り上げて家族や友人との団欒を愉しみ、週末はスポーツ大会やホームパーティを楽しむなど、どうみても仕事に精を出している様子は見えない。世界一ゆるいけどすごい働き方を実践する、デンマーク人の思考法とは?『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(PHPビジネス新書)の一部を引用、再編集してお届けする。全4回。4回目。#1/#2/#3
1.部下のためにNOと言う勇気を持つ
組織が高いパフォーマンスを発揮するためには、社員一人ひとりの「ウェルビーイング」が欠かせない。社員がプライベートも仕事も充実させて元気に働かせる環境があるからこそ、仕事で高いパフォーマンスを発揮でき、それが組織全体のパフォーマンスを上げてくれる。
そして、デンマーク人はそのことを「暗黙の了解」として理解している。我慢を強いられるような環境で、プライベートを犠牲にしなければならない環境で、上司に向かって意見が言えないような環境で、仕事の生産性なんて上がるわけがない、と。
何よりも、社員が心から仕事に喜びを感じて、情熱的に取り組むことが生産性アップにつながる。どんなに頑張って努力する人も、楽しんで情熱的に仕事に取り組む人には敵わない。
そのためには、部下を疲れさせてはいけない。
中間管理職の仕事は、上司の指示にただ従うことではない。部下が気持ちよく働いて仕事の成果を出せるように、部下の働く環境を整えることである。時には上司にもNOという必要だってある。結局は、それが組織全体の生産性の向上につながるのだ。
2.承認や確認そのものは、仕事の本質ではない
失敗に寛容なデンマークの職場では、マイクロマネジメントをしない。つまり、上司が部下の仕事をいちいち細かくチェックすることはない。上司は部下を信頼して仕事を任せるのだ。
デンマークの職場の最大の特徴は「信頼」に基づいたマクロマネジメントだ。
じつは、まったくの無意識かもしれないが、日本の多くの組織が「不信」をベースにしたマイクロマネジメントになっている。相手に対する不信と、自分に対する不信をベースにしたマイクロマネジメントである。
たとえば、上司が部下に逐一進捗状況の報告を求める。または、部下が上司に逐一承認を求める。こういった細やかなコミュニケーションは、一見すると安心感を生み出し、信頼関係を育んでいるように見える。もちろん、そういった面もたしかにある。
しかし一方で、上司の顔色をうかがい、実際に仕事を進めるよりも「上司に承認される」ことに、また部下に仕事を進めてもらうよりも、部下を「コントロールする」ことに時間とエネルギーを費やしてしまってはいないだろうか。
「承認」や「確認」は仕事を進めるためのひとつのコミュニケーション形態にすぎず、それ自体は仕事の本質ではない。
3.会社における「自分の役割」に気づかせる
上司の役割は、部下をファシリテートすることである。では、ファシリテートするうえで、重要なことは何なのだろうか。
それは、大きな文脈のなかで、社員に自分の果たすべき役割を理解させることだ。
私たちは目の前のタスクをこなすことが「仕事」であると錯覚しがちだ。だが、それよりも一人ひとりの社員が、大きな文脈における「自分の役割」を理解して動けるようになった方が、組織の機動力は高まる。また、近視眼的に目の前のタスクをこなすだけでは生まれない、もっとダイナミックな「効率」も生まれる。