AND MORE

2023.11.15

“お宝”が隠れていた! 超優良な未上場の日系企業とは?

日本最大級の就職・転職サイト「OpenWork」に日々寄せられる社員のクチコミ。そこから分かってくるリアルな“企業の姿”は、転職活動の有力情報となるばかりか、優良な投資先を見極めたり、経営者であれば、自分の会社を見直すきっかけにもなる。今回は、未上場でも「上場企業以上」に優秀な20社を紹介。『1300万件のクチコミでわかった超優良企業』(東洋経済新報社)の一部を再編集してお届けする。

※写真はイメージ

上場企業を超える「お宝企業」がけっこうある

このランキングでは、OpenWorkに投稿された社員クチコミのうち、「未上場企業」かつ「日系企業・組織」に関する評価に限定し、「総合評価」を集計した。

「総合評価」は、8つの評価項目点(「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」)をもとに、独自のアルゴリズムにより算出している。

これまで紹介してきたランキングでは、外資系企業、上場企業のランクインが目立った。ただ、実は日系企業・未上場企業でも、従業員・元従業員から高く評価されている会社はたくさん存在する。どのような企業が高く評価されているのかを紹介したい。

99 .9%の選択肢

日本取引所グループに上場している企業は3831社(※1)であるのに対し、全国の企業数は約367万社(※2)となっている。すなわち、上場企業は全国の企業数の約0.1%にすぎず、約99.9%が未上場企業なのである。

また、「株式会社」だけでなく、「一般社団法人」や「一般財団法人」「NPO法人」「官公庁」「特殊法人」など、働く先はたくさんある。意外にもこういった組織は、働き手から高く評価を受けていることも多い。

企業の全体数を考えると、求職者はなにも上場企業だけに絞って会社を探す必要はないだろう。時折、意地でも上場企業に勤めたいという方を見かけるが、世の中における法人組織の比率を考えると、その考えに固執しすぎるのは合理的ではないかもしれない。

また余計なお世話かもしれないが、このランキングは未上場企業の経営者の方にも注目いただきたい。「うちは上場していないから……」を言い訳に、あらゆる組織課題を後回しにしている経営者も見かけるが、未上場企業でも従業員から高く評価されている企業がたくさんあることをお伝えしたい。

(※1)日本取引所グループ発表「上場会社数・上場株式数」2022年7月15日時点
(※2)総務省・経済産業省「令和3年経済センサス 活動調査 速報集計 結果の概要」令和4年5月31日

未上場日系企業の総合評価TOP20

注目企業の概要

第2位 サントリーホールディングス株式会社
1899年創業。「The PREMIUM MALT’S」などさまざまな飲料品を開発・販売する以外にも、健康食品事業や研究開発も行うサントリーグループの親会社。「グローバル」「ビール」「やってみなはれ」といったキーワードが多く投稿されている。
■PICK UP クチコミ/「やってみなはれ」の文化が根付いており、多くの社員が愛社精神にあふれている。温かい人も多い。これがこの会社の強みだと思う。やる気があれば挑戦させてもらえる風土がある(新卒、マーケティング、在籍10年以上)

第5位 株式会社コーポレイト ディレクション
1986年設立。経営戦略立案および実地支援などのコンサルティング業務を、経営トップ層だけでなくミドル層へのアプローチと同時に行うコンサルティング企業。「新卒」「優秀」「育成」といったキーワードが多く投稿されている。
■PICK UP クチコミ/個人として活躍することを志向する人たちが自由・自律の精神のもと集まるプラットフォームのような場である、という共通理解があるため、働き方や活動の自由度が非常に高い(新卒、コンサルタント、在籍5年未満)

第6位 一般財団法人電力中央研究所
1951年設立。50年以上にわたる電気事業に関連する研究活動をもとに、先駆的な提言を行っている研究機関。「研究」「国際」「国内」といったキーワードが多く投稿されている。
■PICK UP クチコミ/多様な分野の専門知識と経験を有した人材が集まっている。国内外の研究所とコミュニケーションを取っており、先端技術に触れながらその開発も行うことができる(新卒、研究職、在籍5~10年)

「評価が高い未上場日系企業」の特徴

「未上場企業」かつ「日系企業」で「総合評価」が高い会社・組織にはどのような共通項があるか、分析していきたい。

1000名超えの未上場企業・官公庁には、組織拡大ができた理由がある

未上場企業と聞くと、従業員数規模の少ない企業を想像する方が多い。

しかしサントリーホールディングス株式会社のように非常に知名度が高く、ブランドもある大企業で未上場な企業もある。また、特許庁のように官公庁として非常に多くの職員を採用しながら、高評価を得ている組織もある。

共通点があるわけではないが、未上場ながらに組織をここまで拡大できているのには、それぞれの企業・組織に「風土」「成長環境」「仕事内容」「待遇」など、独自の理由があるようだ。

「安定的な事業成長と海外展開という点で、入社当初に思い描いていたとおりに会社は成長してきたと考えている。海外拠点への人材配置を増やすことで、将来的にグローバルなリーダーを増やそうとする試みも行われており、海外勤務を志す人にとって良い環境が整っている」(サントリーホールディングス株式会社、総合職、在籍10年以上)

「審査官1人ひとりが、特許権の付与という絶大な許認可権限を持ちます。とてもやりがいのある仕事です。幅広い技術と法令に対する理解、なにより高い倫理観が求められます。特許査定を出したら、特許公報に審査をした自分の名が載ります。多くの人は、自然と高いプライドを持って、自分の名に恥じない仕事をすることになります。また間違いなく、特許のプロフェッショナルになることができる。この経験は、特許庁を離れても役立つものと信じている」(特許庁、審査官、在籍5~10年)

「給料は他の大手の日経IT企業に比べるとかなり高いと感じる。基本給ではなくインセンティブによる収入が多いため、今後の業績次第で給与の変動はありうる」(株式会社アシスト、エンジニア、在籍5~10年)

未上場ならではの独自の経営スタイル

海外にある本社からの方針伝達もなければ、不特定多数の株主とのコミュニケーションもないことが起因しているのか、上位にランクインした企業には独自の経営スタイルで事業・組織を運営しているというコメントが散見された。

ただし、評価の低い企業を見ると、この独自の経営スタイルが悪い方向に働いているケースもある。「独自の経営スタイル」が必ずしも良いとは限らないことに注意いただきたい。

「診療科が多く、最新の医療を学べる。大学・大学院もあるため勉強会の機会も多い。多職種連携がよくできていると思う」(聖路加国際病院、看護師、在籍5年未満)

「コンサルティングファームにおいては異色と言えるほど、事業価値への忠実性を重視している。すなわち、顧客におもねるのではなく、時には顧客にとって不都合・不愉快な内容であっても真実を重要視する」(株式会社経営共創基盤、コンサルタント、在籍5~10年)

「電力会社などのプラント運用に研究成果が反映されたり、学会発表や論文投稿を通じて社会への学術的な貢献ができるところにやりがいを感じる。人事評価は主に電力会社向けの研究報告書や論文・学会発表の数といった成果面と、社内の円滑な業務遂行に貢献できたかという行動面により評価される」(一般財団法人電力中央研究所、研究員、在籍10年以上)

「評価が低い未上場日系企業」の特徴

対象企業が非常に多く一概には言えないが、未上場日系企業の中で従業員・元従業員から低評価を受けている企業の中には、「タコツボ化現象」が起きている企業が多く見られた。外部資本が入っていないことが悪い方向に働いており、端的に言えばガバナンスが効いていないと感じざるをえない状態だ。

たとえば創業者一族の経営に対し、周囲が物申せない状態になり、経営に客観性を持てていないというコメントが散見された。また、年功序列の影響でパフォーマンスが出せない人材が役職者として居座ってしまっているというコメントも見られた。理由としては、外部からの圧力が少ない分、経営合理性が失われやすいことが考えられる。

経営者や人事部においては、自社が「タコツボ化」していないかを客観的に把握することをおすすめする。他社と比較できる従業員エンゲージメント調査ツールは世の中に多く存在し、客観的に自社を見つめ直すきっかけになる。また、外部から新しい人材を採用・抜擢することで、組織の腐敗を止めることもおすすめしたい。

求職者も、地場の有名な会社に入る際は、「タコツボ化」していないかを確認するようにしよう。合理的でない意思決定が日常的に行われる職場は、将来的にあなたを苦しめるかもしれない。

大澤陽樹/Haruki Ohsawa
オープンワーク代表取締役社長、働きがい研究所 所長。福島県生まれ。東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。リンクアンドモチベーションに入社し、組織人事コンサルティング事業のマネジャーを経て、企画室室長に就任。従業員エンゲージメント市場で、国内売上シェア5年連続No.1のモチベーションクラウドの立ち上げに従事。2018年、オープンワークに参画。執行役員、取締役副社長を経て、2020年より現職。OpenWorkのデータを活用したオウンドメディア「働きがい研究所」の所長としても活動し、毎日数百件の社員クチコミを読み続ける「社員の声のプロ」。

TEXT=大澤陽樹

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年1月号

シャンパーニュの魔力

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年1月号

シャンパーニュの魔力

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ1月号』が2024年11月25日に発売となる。今回の特集は“シャンパーニュの魔力”。日本とシャンパーニュの親和性の高さの理由に迫る。表紙は三代目 J SOUL BROTHERS。メンバー同士がお互いを撮り下ろした、貴重なビジュアルカットは必見だ。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる