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2023.11.14

ワーク・ライフ・バランス優良な「年収1000万円超」企業20社。日系企業が健闘!?

日本最大級の就職・転職サイト「OpenWork」に日々寄せられる社員のクチコミ。そこから分かってくるリアルな“企業の姿”は、転職活動の有力情報となるばかりか、優良な投資先を見極めたり、経営者であれば、自分の会社を見直すきっかけにもなる。今回は、年収とワーク・ライフ・バランスを両立させている企業を紹介。『1300万件のクチコミでわかった超優良企業』(東洋経済新報社)の一部を再編集してお届けする。

※写真はイメージ

ワーク・ライフ・バランスと年収は「生産性」の指標

このランキングでは、社員クチコミを利用して算出した「年収推定プログラム」と「WLB(ワーク・ライフ・バランス)スコア」を活用し、「年収1000万円超えのワーク・ライフ・バランスが優れた会社」を集計した。

データがやや複雑なので、1つひとつ説明していきたい。まず「年収推定プログラム」だ。OpenWorkでは蓄積された実際に働く社員の年収データをもとに、独自のアルゴリズムによって企業ごとに異なる賃金カーブを可視化した「年齢別年収(※1)」を掲載している。この年収推定プログラム上で、40歳時点で一度でも年収1000万円を超えた企業を対象とした。中には20代で平均推定年収が1000万円を超える企業もある。

つぎに「WLBスコア」だ。こちらは残業時間と有給休暇消化率をスコア化したものである。残業時間は少ないほうが、有給休暇消化率は高いほうがスコアが高くなるロジックだ。

つまり、このランキングは、「40歳までに年齢別の平均推定年収が1000万円を超える会社群から、残業時間が少なく、有給休暇消化率が高い順に並べたもの」と捉えていただくことができる。

生産性も給料も低い日本

公益財団法人日本生産性本部の調査によると、日本の1人あたりの労働生産性はOECD加盟38カ国中28位、主要先進7カ国(日本、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア)で比較すると50年以上も最下位となっている(『労働生産性の国際比較2020』)。

また、OECDが発表したデータによると、OECD加盟諸国内における日本の購買力平価ベースの平均賃金は、「OECD加盟諸国の平均以下の数値」となっている。アメリカの半分強、カナダやオーストラリアの6~7割、韓国やスロヴェニアの約9割だ。

そんな中、ランキング上位の企業は生産性が高いといえる。経営者はそういった企業から学ぶべきことが多いはずだ。

一方で、求職者には1つ注意喚起をしておきたい。「年収」や「ワーク・ライフ・バランス」を重視している方は多いと思うが、意外にも入社後のミスマッチはソフト面(風土や成長環境、人間関係など)から起こることが、OpenWorkの過去の調査でも明らかになっている。

(※1)「年齢別年収」は、会社評価レポートにて回答された有効な年収データを統計的に処理し、推定した年収値と約80%の推定範囲。個人の年収データやそれらの平均値ではなく、ある年齢および前後の年齢の複数のデータからOpenWork独自のアルゴリズムによって統計的に算出。

ワーク・ライフ・バランス優良な「年収1000万円超」

注目企業の概要

第3位 関西電力株式会社
1951年設立。近畿地方・一部関東地方で電力小売事業や発電事業を行う。東証プライム市場上場。「ステージ」「出世」「スーパーフレックス」といったキーワードが多く投稿されている。
■注目データ/年齢別の年収(年収データをもとにした推定値と約80%の推定範囲):25歳 420万円 (330万円~534万円)、30歳 600万円 (472万円~763万円)、35歳 831万円 (653万円~1057万円)、40歳 1007万円 (791万円~1281万円)

第8位 株式会社INPEX
2006年設立。国内外で石油・天然ガスなどの探鉱・掘削・生産・運搬などの開発を行う大手石油開発企業。東証プライム市場上場。「昇給」「フレックス」「ワーク・ライフ・バランス」といったキーワードが多く投稿されている。
■注目データ/年齢別の年収(年収データをもとにした推定値と約80%の推定範囲):30歳 707万円 (595万円~840万円)、35歳 853万円 (718万円~1014万円)、40歳 1066万円 (897万円~1267万円)

第18位 農林中央金庫
1923年設立。生産から消費までのあらゆる場面で付加価値を向上させる食農ビジネス以外にも、リテールビジネス・投資ビジネスを主軸に展開する。「福利厚生」「寮」「(ワーク・ライフ・バランスは)部署による」といったキーワードが多く投稿されている。
■注目データ/年齢別の年収(年収データをもとにした推定値と約80%の推定範囲):25歳 428万円 (320万円~574万円)、30歳 742万円 (554万円~994万円)、35歳 1018万円 (761万円~1364万円)、40歳 1159万円 (866万円~1552万円)、45歳 1214万円 (907万円~1626万円)

「高収入でWLBが良い企業」の特徴

「40歳までに年齢別の平均推定年収が1000万円を超える会社群から、残業時間が少なく、有給休暇消化率が高い順に並べた」ランキングの上位企業には、どのような共通項があるかを分析していきたい。

外資だけではない「30代で大台を超える」日系金融系

外資系企業のランクインが目立つかと思いきや、トップ20の半数以上は日系企業がランクインした。またその中でも、35歳時点の平均推定年収が1000万円を超えたのが、野村アセットマネジメント株式会社と農林中央金庫だ。人事制度や報酬体系は異なるがグーグル合同会社と並び、比較的早いタイミングで高い年収を実現でき、かつワーク・ライフ・バランスのレベルが高いというのは、日系企業では数少ない。

また40歳時点の平均推定年収が1000万円を超えた日系金融企業が7社もランクインした。古いクチコミを見ると年功序列や激務というコメントも多く見られたが、最近では「人事制度の改善」や「働き方改革の推進」がなされているというコメントがセットで投稿されていた。

「まったり高給と言われているが、世間と比較すればそれは当たっていると思う。福利厚生はかなり手厚いと思う」(農林中央金庫、営業、在籍10年以上)

「日系のアセマネでは、待遇は最高水準ではないでしょうか。外資でガツガツやってもっと給料をもらうというものとは対照的に、それなりにやってそこそこの給料をもらうという印象です。ただし、今後は人によって差を以前よりもつけるという人事制度になってきているので、少しずつ変わっていくようには思っています」(野村アセットマネジメント株式会社、運用、在籍5~10年)

「昔はむやみに残業があったし、休日に行事や寮の付き合いなどが普通にあったが、今はそういうこともなくなった。仕事後は自己啓発にも取り組むことができる。今はワーク・ライフ・バランスを自分で調整できる環境にある」(農林中央金庫、融資、在籍10年以上)

待遇も働き方も先をゆく外資IT系企業

他ランキングでも頻繁にランクインしているが、外資IT系企業も複数社ランクインした。グーグル合同会社やアマゾンジャパン合同会社のように誰もが知っているサービスを展開している企業もあれば、シスコシステムズ合同会社やSAPジャパン株式会社のように法人向けサービスでシェアが大きい企業もランクインしていた。

共通する点としては、各業界のリーダーポジションを取るような自社サービスを保有しているケースが多く、その結果、生産性高く事業展開ができていることが推測できた。また、生産性高く事業展開して創出した利益を従業員に還元することで、より優秀な人材がリテンションされ、商品サービスの競争力が増していくという好循環が起きているのかもしれない。

「同業種の他の企業よりは給与は良くなるように設定されているようです。基本的にはリーダーシッププリンシプル(OLP)と呼ばれる行動指針に基づいて評価される。またリーダーシッププリンシプルにおける自身の強みや弱みがフィードバックされ、自身の成長のための制度やインフラ(通信教育などのツール)は整っている印象。また、日常業務の合間を縫ってセルフマネジメントを実施していくことがなかなか大変で、高い時間管理能力が求められる」(アマゾンジャパン合同会社、ベンダーマネージャー、在籍5年未満)

「ワーク・ライフ・バランスはとても良い。一般的にはコンサルタントの仕事は忙しく思われがちですが、ワーク・ライフ・バランスを大事にしている社員は多くいて、有給消化率も高いです。また、COVID-19の対応も非常に早く、在宅勤務への切り替え、育児のための休暇拡充も行われた。働きやすさは、外資系らしいところがあるのかなと感じた」(SAPジャパン株式会社、コンサルタント、在籍5年未満)

「高収入だがWLBが悪い企業」の特徴

「40歳までに年齢別の平均推定年収が1000万円を超える会社群から、残業時間が少なく、有給休暇消化率が高い順に並べた」際、下位にランクインした企業の共通点を考察する。

読者の皆さまに誤解ないよう伝えておくと、そもそも「40歳までに年齢別の平均推定年収が1000万円を超える会社」は非常に少ない。そのため、下位にランクインしたとしても、総合評価が高くなるような優良企業が多かった。

下位にランクインした企業の業界は、コンサルティングファーム、広告代理店、金融・証券会社系が挙げられる。しかし、そのような企業のクチコミを見ていくと、ワーク・ライフ・バランスよりも成長環境を求めて働いている方が多く、不満として現れているケースは少なかった。

もちろん、企業の生産性を高め、従業員にしっかり還元していくことは大切であるが、ワーク・ライフ・バランスを意識するあまり、働く人から成長環境を奪ってしまうようなことにならないよう、経営者は注意すべきであろう。求職者もまた、自分が仕事に何を求めているかを改めて考え直すと良いだろう。

大澤陽樹/Haruki Ohsawa
オープンワーク代表取締役社長、働きがい研究所 所長。福島県生まれ。東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。リンクアンドモチベーションに入社し、組織人事コンサルティング事業のマネジャーを経て、企画室室長に就任。従業員エンゲージメント市場で、国内売上シェア5年連続No.1のモチベーションクラウドの立ち上げに従事。2018年、オープンワークに参画。執行役員、取締役副社長を経て、2020年より現職。OpenWorkのデータを活用したオウンドメディア「働きがい研究所」の所長としても活動し、毎日数百件の社員クチコミを読み続ける「社員の声のプロ」。

TEXT=大澤陽樹

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