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2023.06.25

【脳科学者が教える】商談の成功率が上がる意外すぎる一手とは

日常の何気ないシーンに現れる成功者の思考法を気鋭の脳科学者・西剛志が解説。今回はトップセールスマンは知っている、“質問”と“マネ”に隠された知られざる効果について。 連載「何気ない勝者の思考」とは……

勝者の思考

Unsplash/Cytonn Photography

前回は「話し方で、売り上げが変わる」ことを伝えましたが、日常の何気ない会話での話し方は更に素晴らしい効果を、人間関係とセールスの分野に生み出します。

これを理解するために、商談におけるこんな瞬間を考えてみてください。

【勝者の思考】相手のニーズを知り、かつ商談の成功率まで高めたい。そんなとき、あなたはどうしますか?

A. とにかく相手に質問する
B. 話す雰囲気を相手に合わせる

セールスには保険から商品、ファッションまで様々ですが、トップセールスマンに最も多いパターンは【AとBの2つを同時に行う】でした。

質問に隠された意外な効果

Aの『相手に質問する』は、相手のニーズを知るためのトップセールスマンの大原則と言えるでしょう。なぜなら、相手が求めているものを理解できなければ、最高のサービスや提案はできないからです。

実際に、一般の人の会話中の質問は10%ほどですが、交渉がうまい人は2倍以上(約21%)も質問しているそうです(*1)。

しかし、あまり知られていませんが、質問にはもう1つの効果、「脳がよい状態になるため、その人がやりたいことを後押ししてあげられる」という効果があります。

ハーバード大学の研究でわかってきたことですが、私達は人のことを話すよりも、自分のことを話すとき、脳の報酬系が活性化することが報告されています(*2)。つまり、私達は質問されると、自分自身のことを話すため脳は喜びを感じ、最高の状態になるのです。

そして、脳が最高の状態になると、やりたいことをやってみようという行動力が高まります(気分が落ち込んでいるとき、やりたくても行動できないことがありますが、それは脳の状態と関係しているからです)。

実際に4万人を対象に行われた研究では、クルマの購入を前向きに検討している人に「6ヵ月以内に新車を買う予定はあるか?」と聞くと、聞かれていないグループに比べてなんと35%も新車の購入率が高まったそうです(*3)。

また選挙に行こうと予定している人に「今度の選挙に投票するつもりか?」と聞くと、選挙への実際の参加率(投票率)が25%もアップしました(*4)。

質問そのものは一瞬ですが、たった1つの問いかけが、相手がやりたいと思う行動を促進し、顧客の望む状況を実現するお手伝いをできるようになるのです。

話す雰囲気を合わせると、相手のニーズがわかる

『話すスピードを合わせる』だけで、信頼関係を築けることは前回お伝えしましたが、話す雰囲気(話すスピード、明るさ、大きさなど)を合わせると相手のニーズまでわかるというのは、意外かもしれません。

でも、あなたは昔こんなことを体験したことはないでしょうか?

それは、好きな先生、友人、芸能人のモノマネをすると、その人の仕草だけでなく、当人の気持ちまで乗り移ってくるような感覚になる体験です。

感覚的で不思議に思えるかもしれませんが、これは気のせいではなく、私達の脳の中にあるミラーシステムと言われる神経ネットワークが相手の世界観(五感のシステム)を再現するからと言われています(*5,6)。

例えば、有名な現象に「もらい泣き」があります。これは泣いている人が目の前にいると何故か涙が出てくる現象です。なぜこんなことが起きるかというと、脳内の視覚野に映った「泣いている」映像が、ミラーシステムを通してまるで鏡のように体感覚に再現されるからです。その結果、涙が出てしまいます。

そして、このミラーシステムは、もともと子供が親のマネをして、学習するときに活性化すると言われています。

そのため、相手の雰囲気に合わせる(マネをしようとする)と、ミラーシステムが活性化して、相手が考えていることや見ている世界が自然と脳に浮かんでくる効果が期待できるのです。

現代の巻き髪の文化をつくったとも言われる美容家の土屋雅之氏は、相手がリクエストを言わなくても、その人に最も似合う色や髪型を提案することで有名な方です。紹介する美容器具も飛ぶように売れるそうです。

「なぜ、そんなことができるのか?」と聞いてみたことがあるのですが、それが「相手の雰囲気や声のトーンを合わせると、話しているうちに、なぜかその人が何を求めているのか? が浮かんでくる」とのことでした。「浮かんできたことをそのまま提供すると、お客さまが感動し喜ばれるんです。名古屋巻きのブームもお客様との会話から生まれた」とのことでした。

にぎやかな人には明るく話し、ゆったりとした雰囲気の人にはゆったりと話す。できる人ほど、まるでカメレオンのようです。声のトーンや雰囲気を合わせることで、無心で相手になりきると、ミラーシステムを通して、相手のニーズ(と思われるもの)が頭に浮かんでくるようになります。私も最初は科学者として信じられませんでしたが、相手の雰囲気に合わせるだけで、相手に合うサービスを提供できる確率が20〜30%もアップして驚いたことがあります。

相手のペースに合わせてあげること。これはトップセールスマンだけでなく、卓越したビジネスパーソンに共通する特徴の1つですので、是非実践してみてください。

過去連載記事

脳科学者・西剛志「勝者の思考」

西剛志/Takeyuki Nishi
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上に講演会を提供。メディア出演も多数。著書に『世界一やさしい 自分を変える方法』『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』など海外を含めて累計31万部突破。

<参考文献>
(*1) Neil Rackham, "The Behavior of Successful Negotiators," in Negotiation: R eadings, Exercises, and Cases, ed. R. Lewicki, B. Barry, and D. M. Saunders (New York: McGraw-Hill, 2007)
(*2)Tamir D.I., & Mitchell J.P. “Disclosing information about the self is intrinsically rewarding”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2012, Vol.109(21), p.8038-43
(*3) Vicki G. Morwitz, et.al., “Does Measuring Intent Change Behavior?” Journal of Consumer Research, Vol. 20(1), 1993, p.46–61
(*4) Greenwald, A. G. et.al. ”Increasing voting behavior by asking people if they expect to vote”, Journal of Applied Psychology, 1987, Vol.72(2), p.315–318
(*5) A. Murata, “Embodiment in Mirror neuron system”, Cognitive Rehabilitation, 2015, Vol.20, No.1,
(*6) Carrington, S. J. & Bailey, A. J. “Are there theory of mind regions in the brain? A review of the neuroimaging literature”, Human Brain Mapping, 2009, Vol.30, p.2313–2335

■連載「何気ない勝者の思考」とは……
日常の何気ないシーンでの思考や行動にこそ、ビジネスパーソンが成功するためのエッセンスが現れる。会議、接待、夫婦やパートナーとの関係や子育てなど、日常生活のひとコマで試される成功者の思考法を気鋭の脳科学者・西剛志が解説する。

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何気ない勝者の思考

日常の何気ないシーンでの思考や行動にこそ、ビジネスパーソンが成功するためのエッセンスが現れる。会議、接待、夫婦やパートナーとの関係や子育てなど、日常生活のひとコマで試される成功者の思考法を気鋭の脳科学者・西剛志が解説する。

TEXT=西剛志

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