2026年のPGAツアーは、ひとつの問いから幕を開ける。――スコッティ・シェフラーの“絶対王者時代”は、どこまで続くのか。
圧倒的な数字でツアーを支配する王者の一方で、水面下では確実に新しい波が生まれている。フェデックスカップ・フォールで覚醒したリコ・ホイをはじめ、勢力図を塗り替える可能性を秘めた新顔たち。その象徴とも言える変化が、「長尺パター」の台頭だ。
今回は、シェフラー時代に風穴を開け得る新勢力の動向と、PGAツアーで増えつつある長尺パターの背景を数字から読み解く。さらに、アマチュアゴルファーにも応用できる「振り子型ストローク」を身につける練習法を動画で解説。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

6勝、トップ10率85%。シェフラーの時代は、どこまで続くのか
2025年シーズン、スコッティ・シェフラーは6勝。しかもその内訳には、全米プロゴルフ選手権と全英オープンという2つのメジャータイトルが含まれている。
出場20試合中17試合でトップ10入り。その確率は実に85%に達した。残る3試合もすべて25位以内で、予選落ちは一度もなかった。
年間王者こそ、プレーオフ最終戦のツアー選手権を制したトミー・フリートウッドに譲ったものの、賞金獲得額は大差をつけて1位。年間平均ストローク68.131は、2位のマキロイに約1ストローク弱の差をつける断トツの数字だ。
そして最優秀選手賞は、もはやシェフラーの指定席と言っていい状態だ。4季連続受賞という事実が、その支配力を雄弁に物語っている。
では、その王者が支配するPGAツアーに風穴を開ける存在は誰なのか。ここでは実績十分のスターではなく、ツアーの空気を変え得る新しい力に目を向けたい。
フェデックスカップ・フォールで覚醒したリコ・ホイ
2025年のフェデックスカップ・フォールで、最も鮮烈な躍進を見せた選手のひとりが、フィリピン出身の30歳、リコ・ホイだ。
ホイはツアー屈指のショットメーカーとして知られ、総合的なショットの貢献を示す指標、ストロークスゲインド(以下SG)・ティー・トゥ・グリーンは2025年、シェフラーに次ぐ2位を記録。
加えてパーオン率も2位と、ショットの正確性はツアーでもトップクラスで、数字だけを見れば、そのショット力はスコッティ・シェフラーに匹敵すると言っていい。
しかし、その圧倒的なショット力とは対照的に、パッティングは長年の課題だった。
2025年レギュラーシーズンを通して、パッティングの貢献度を示すSG・パッティングはツアー最下位クラス。グリーン上のパフォーマンスが足を引っ張るラウンドも多く、ショットが好調でも結果に結びつかない状態が続いていた。
転機となったのが、レギュラーツアー最終戦となったウィンダム選手権での深刻なパッティング不振だ。
その問題を解決するため、ホイはオフ期間にコーチやキャディと相談しながら長尺パターをテスト。フェデックスカップ・フォール初戦のプロコア選手権から実戦投入すると、グリーン上のパフォーマンスが一変した。
それまで最下位近辺に沈んでいたパッティングのスタッツは明確に改善し、その効果もあってバンク・オブ・ユタ選手権では優勝争いを演じ、レギュラーツアー自己ベストに並ぶ単独2位でフィニッシュした。
同大会でのSG・パッティングは、予選ラウンドこそ振るわなかったものの、決勝ラウンドの2日間はいずれもフィールドのベスト10に入り、数字の面でもパッティングの明確な向上が示された。
このパッティング改善により、フェデックスカップ・フォール7試合でトップ10入りを4度記録。フェデックスカップランキングはフォール初戦時点の106位から54位まで急浮上し、シード権を確保しただけでなく、51〜60位に与えられる2026年序盤のシグネチャーイベント2試合の出場権も引き寄せた。
もともと「ショット力だけならツアートップクラス」と評されてきたホイにとって、長尺パターへの変更は苦肉の策であり、同時に必然だったと言える。
今後1年を通して“平均的なパッティング”を維持することができれば、優勝争いの常連として名前が挙がる日も、そう遠くはないだろう。
欧州ツアー、下部ツアーから押し寄せる新しい波
そのほかにも、PGAツアーに新風を吹き込む存在がいる。DPワールドツアーからの挑戦者として注目されるのが、マルコ・ペンジだ。
2025年は海南クラシック、デンマーク・ゴルフ選手権、スペイン・オープンで3勝を挙げ、ローリー・マキロイに次ぐ年間ポイントランキング2位でシーズンを終えた。2025年末時点で世界ゴルフランキングも29位まで押し上げている。
ペンジの魅力は、2025年シーズンのDPワールドツアーで平均319.26ヤード(5位)を記録した飛距離に加え、パーオン率72.16%(11位)という高いショット力にある。シーズンのイーグル数も20を数え、攻撃力を前面に押し出すプレースタイルは、PGAツアーでも大きな武器になるだろう。
一方、下部ツアーのコーンフェリー・ツアー昇格組のなかで、完成度という点で一歩抜けているのがジョニー・キーファーだ。
2025年シーズンのコーンフェリー・ツアーで、キーファーは優勝2回、トップ10入り9回と圧倒的な安定感を示し、年間ポイントランキング1位でシーズンを終えた。平均スコア67.95はコーンフェリー・ツアー史上最高で、年間最優秀選手賞と最優秀新人賞を同時受賞。
これは2018年のイム・ソンジェ、2019年のスコッティ・シェフラーに続く史上3人目の快挙であり、下部ツアーでの支配力がいかに突出していたかを物語っている。
プレースタイルは、平均飛距離320ヤード超のドライバーショットを武器に、パーブレイク率とイーグル数はいずれもツアー1位と攻撃力に長ける。ビッグスコアを叩き出す能力がありながら、スクランブリング2位とスコアメイクの力も兼ね備えている。
世界ランキングもわずか1年半で4桁台から48位(2025年末時点)へと急上昇しており、PGAツアーで早い段階から優勝争いに顔を出しても、不思議ではない存在だ。
日本勢からも、DPワールドツアーから中島啓太、コーンフェリー・ツアーから平田憲聖が昇格する。ともに日本ツアーで実績を積み重ね、それぞれの舞台を経てPGAツアーへの切符をつかんだ25歳の同世代だ。熾烈なサバイバルレースのなかで、どこまで存在感を示せるのか注目したい。
2026年シーズンも、シェフラーを中心とした戦いになるだろう。
すべての要素で依然として他を一歩も二歩も引き離している。しかし一方で、ここで紹介した選手たちのような新しい風が吹くことで、ツアー全体の競争力は確実に底上げされるはずだ。
長尺パターが教えてくれる、安定したストロークの作り方
近年のPGAツアーでは、リコ・ホイのように「ストロークの再現性」を求めて長尺パターを取り入れるプロが増えている。
その背景にあるのは、長尺パターならではの利点だ。クラブが自然に振り子運動を生み、余計な手先の操作を抑えられる。その結果、ストロークの再現性と安定性が高まる。
とはいえ、いきなり長尺パターに変えることに抵抗を感じる人も少なくないだろう。そこで、長尺を使わなくても同じ感覚を養える練習法を紹介したい。
ドライバーを長尺パターに見立てて行う練習は、通常の長さのパッティング改善にも効果的だ。
ドライバーを長尺パターのように構え、左手でグリップエンドを持ち、右手はシャフトを軽く支える。胸を支点に、体の回転だけでストロークしてみてほしい。
上半身とクラブが一体となって動くことでストロークの再現性が高まり、振り子のイメージを体に覚え込ませることができる。ショートパットに課題を抱えるゴルファーにとっては、安定した転がりと距離感を身につけるきっかけになるはずだ。
動画で解説|振り子型ストロークが身につく長尺パター練習法
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

