GOLF

2025.07.02

右手の力が入りすぎてパッとでミスする人に有効なグリップの握り方とは

2025年の全米オープンを制したのは、34歳のJ.J.スポーン。厳しいコンディションのなか迎えた最終日、次々とクラッチパットを沈めて悲願のメジャー初制覇を果たした。そんな彼が用いるクロスハンドグリップを紹介する。パッティングが苦手なアマチュアは必見だ。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

全米オープン2025の最終日、18番ホールで静かにバーディーパットを沈めたJ.J.スポーン。
厳しいコンディションのなか、18番ホールで静かにバーディーパットを沈めたJ.J.スポーン。その瞬間、悲願のメジャー初優勝が決まった。

全米オープン王者へと導いた“クロスハンドグリップ”とタイガー・ウッズの言葉

2025年の全米オープン最終日(オークモントCC)は、激しい雨に見舞われ、約90分の中断を挟む過酷な状況下で行われた。コースは雨によってフェアウェイに水が浮くバッドコンディション。

救済の判断を巡って議論も起きた。「あるがままに打つべきか」「公平性を優先すべきか」。自然と向き合うゴルフならではの難しい問題であり、こうしたテーマは今後も繰り返し議論されていくだろう。

そんななか、混戦を制したのは34歳のJ.J.スポーン。全米オープン2度目の出場で、初のメジャータイトルをつかんだ。今季はザ・プレーヤーズ選手権でローリー・マキロイとプレーオフを戦うなど、優勝争いに絡む場面もあった。勝利こそ逃したが、地道な努力を積み重ねてきた苦労人に、ついにメジャーの栄冠が訪れた。

最終日、1打差の2位でスタートしたスポーンだったが、序盤は5つのボギーと大苦戦。2番ではボールがピンに当たって約50ヤードも戻るという不運も重なった。

しかし、後半に入ると流れが一変。次々とバーディーを奪い猛追を開始。最終18番ホールでは、20mのロングパットを強気に攻め、見事に沈めて優勝を決めた。同組のビクトル・ホブランが直前に同じラインでパットをしており、そのボールの転がりを参考にできたことも、勝利を後押しする幸運となった。

苦節のキャリアと飛躍の鍵

ロサンゼルス出身のスポーンは、サンディエゴ州立大を経て2012年にプロ転向。2013年からカナダツアーに参戦し、2016年には米下部ツアーの出場権を獲得。その年に1勝してPGAツアー入りを果たしたが、トップ10入りはあっても勝ち切れない日々が続いた。

2022年のバレロテキサスオープンで初優勝を挙げたものの、それ以降は勝利から遠ざかり、2024年の今頃はゴルフの調子が上がらず、出場権喪失の不安に苦しんでいたという。6月までに出場した15試合のうち、予選落ちは10回。25位以内に入った試合は一度もなく、メジャーの出場権も得られないまま低迷が続いた。

そんななかでも地道な努力を重ね、レギュラーシーズン後半と「フェデックスカップフォール」シリーズで調子を取り戻し、4度のトップ10入りを果たした。最終的にフェデックスポイントランキングは96位まで上昇し、シード権を確保した。

注目を浴びることの少ない場所でコツコツと積み上げてきた努力が、2025年シーズンついに実を結んだ。その勝因のひとつは、安定したドライバーとアイアンに加え、長年の課題だったパッティングの改善である。

2024年108位だったストロークス・ゲインド・パッティング(パットによるスコア貢献度)は、2025年は40位まで大幅に上昇。グリーン上でも落ち着いてプレーできるようになり、ミドルパットやロングパットの成功率も着実に向上している。

レベルアップの要因は、スイングを指導するアダム・シュリバーと、パッティングや戦略面を支えるパフォーマンスコーチのジョシュ・グレゴリーという2人のコーチの存在にある。彼らの献身的なサポートが、今回の勝利に大きく貢献した。

タイガー・ウッズの言葉を胸に

全米オープンの厳しいセッティングを乗り越え、J.J.スポーンが見事に初優勝を飾ったが、その裏には、タイガー・ウッズの言葉が大きな支えとなっていた。

優勝後の会見でスポーンは、あるエピソードを明かしている。これは、同じ地域に住み、同じゴルフクラブに通う友人のPGAツアー選手・マックス・ホーマとランチをした際に、ウッズの言葉を聞いたのだという。全米オープンのような厳しい舞台では、たとえリードから離れていても焦らず、その場にとどまり、状況の変化を待つことが大切だと。

「再開後、特別なことはせず、パーを積み重ねてバーディーも取れた。気づけば首位に並んでいた。あの言葉どおり、焦らず耐えることが結果につながった」

ウッズの教えを胸に、自分のプレーに徹したスポーン。その冷静さと粘り強さが、悲願のメジャー初制覇を引き寄せた。

クロスハンドグリップがもたらす安定感

スポーンはバックナインで次々とクラッチパット(勝敗を左右するような重要な局面でのパット)を決めた。12番ホールで12m、14番で6.5m、そして最終18番では20mのバーディーパットを沈め、勝負を決めた。

大会を通じてのストロークスゲインド・パッティングは全体で2位と、神がかり的なパットを披露した。これらの好パットは、クロスハンドグリップから生まれたものだ。

クロスハンドグリップとは、通常の順手グリップとは逆に、左手を下にして右手を上にする握り方で、右手の力が入りすぎてミスする人に特に有効だ。

ポイントは左手をしっかり伸ばしてパターと左腕を一体化させること。脇を締め、右手は軽く添えるだけでよく、右手首の余計な動きを抑えることで、胸と腕の動きが連動し、ストロークの安定につながる。

さらに、この握り方では左肩がわずかに下がるため、肩のラインを水平に保ちやすくなる。その結果、体の向きや目線が安定し、アドレス時の方向性も改善される。

パッティングが苦手な人は、ぜひ一度このクロスハンドグリップを試してみてほしい。ストロークが安定すればパットに自信が生まれ、グリーン上での不安もきっと減っていくはずだ。

クロスハンドグリップの動画解説はコチラ

◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=AP/アフロ

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