吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。今回はマスターズ制覇目前のローリー・マキロイに学ぶ正しいスイングを紹介する。
キャリアグランドスラムまであと一歩のローリー・マキロイ
マスターズが近づいてくると、必ず優勝候補に名前が挙がるのがローリー・マキロイ(34歳)だ。
2011年に全米オープンを制すると、翌年に全米プロ、2014年には全英オープンと全米プロで優勝し、メジャー4勝。残るメジャータイトルはマスターズのみとなっている。
2024年こそ「マスターズを制してグランドスラムを達成できるか」というゴルフファンの注目を集めてきたものの、最後のメジャー制覇から約10年の月日が流れた。今年は例年以上にマキロイがマスターズへの思いをメディアに積極的に語っていることもあって注目を集めている。
マキロイにはマスターズとの様々な因縁がある。
2011年に全米オープンを制する2ヵ月前、当時21歳のマキロイは3回目の出場となるマスターズで3日目まで首位を走っていた。
ところが、最終日の10番パー4でティーショットを大きく左に曲げてトリプルボギーにする。
その後も4パットによるダブルボギーがあり、終わってみれば「80」の大失速で最終的に15位に終わった。その夜、彼は英国の父親に電話をかけ、明け方まで泣き続けたそうだ。
ゴルフ界では、マスターズと全米オープン、全英オープン、全米プロのメジャー4大会をすべて制することをグランドスラムと呼ぶ。
これまでグランドスラムを達成したのは、ゲーリー・プレーヤー、ベン・ホーガン、ジーン・サラゼン、ジャック・ニクラウス、そしてタイガー・ウッズの5人だけだ。
勝負に「たら、れば」は禁物だが、マキロイが2011年にマスターズを制していれば、10年前に6人目のグランドスラム達成者の称号を手にしていたことになる。
その後もマキロイはマスターズに挑戦し続けているが、どうしてもグリーンジャケットに手が届かない。
2022年には単独2位だったが、この年はスコッティ・シェフラーが2日目から独走。マキロイは最終日に追い上げたものの、3打差につけるのがやっとだった。そして、2023年は無念の予選落ちに終わった。
マスターズで念願の優勝に意欲を見せる
最近のマキロイは積極的にマスターズについて語っているように見える。
マキロイは2023年11月、突如PGAツアー選手会理事を辞任することを表明した。この2年間、サウジアラビアの政府系ファンドの支援を受けて創設されたLIVゴルフに対し、選手を代表して厳しい批判を続けていただけに、PGAツアーとLIVの電撃的な統合発表に対する不満の表明とも受け止められた。
しかし、米メディアのインタビューに答えたマキロイは「私の人生にはより多くの時間が必要だ」と述べ、マスターズに向けて万全の準備をすることが選手会理事を辞任する理由の一つだと語っていた。
2024年の初戦となった欧州ツアー「ドバイ招待」の試合後も、マスターズまで出場試合を増やして万全のコンディションを整えたいと語っていた。
例年は新年初戦から6試合程度の出場数だったが、今年は例年よりも試合数を増やして調整している。
「マスターズで勝ちたい。数少ないグランドスラムを達成した選手に並びたい」と語るマキロイに、2024年こそオーガスタの女神は微笑むだろうか。
マキロイのようなフィニッシュをつくるポイント
マキロイのスイングに憧れている人は多いだろう。マキロイのスイングは全てにおいてレベルが高いが、特にフィニッシュの姿が美しい。
彼のフィニッシュは、正面から背中が見えるほど体が回り、右肩がターゲット方向に向いた状態でぴたりと静止する。
アマチュアゴルファーのなかには、あまりフィニッシュを意識しない人がいるが、フィニッシュをしっかりととることでスイングが良くなることがある。
今回はマキロイのような美しいフィニッシュをつくるポイントを解説しよう。
フィニッシュにおいて重要なポイントは下半身だ。フィニッシュでは体重の90%以上が左足にかかり、右足はつま先立ちのような状態になる。バランスよく左足に体重をかけることを意識することで、スイング中の体重移動を適切にすることができる。
フィニッシュでバランスよく体を支えるためには、左股関節を中心に回転する意識を持つことが大切だ。
左股関節を中心に体を回転させ、フィニッシュの位置で止まる練習を繰り返してみてほしい。肩を回して体を回転させようとする人がいるが、下半身の動きを意識して体を回転させることで、上半身は自然に回転するようになる。
フィニッシュの見た目を良くするために気をつけたい点は、グリップの位置を高くすることだ。手の位置が低いと、フィニッシュがつぶれているように見えてしまうので、腕を伸ばしてできるだけ高い位置にフィニッシュをおさめる。
最初のうちは、肘を曲げるないようにして極端に高い位置に振り抜く意識を持つといいだろう。そうすることで、スイング中の不必要なヒジの曲げ伸ばしが少なくなり、腕の使い過ぎも軽減できるようになる。
フィニッシュが良くなれば、スイング全体もよくなり、見た目もカッコよくなる。ぜひ、周囲から一目置かれるような美しいフィニッシュを目指してほしい。
動画解説はコチラ
吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。