今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は、テデスキ・トラックス・バンド&レオン・ラッセルの『Mad Dogs&Englishmen Revisited』。

米東部、バージニア州の湿気のある土と風のにおいがムンムンするライヴ
ゴスペルのクワイアとともにスーザン・テデスキがシャウトする一曲目、「あの娘のレター」から、米バージニア州の湿気ある土と風のにおいがムンムンする。2015年に実現したテデスキ・トラックス・バンドと翌年にこの世を去ったレジェンド、レオン・ラッセルがコラボレーションしたライヴ盤。
世界最高峰のスライドギタープレイヤー、デレク・トラックスが「ダーリン・ビー・ホーム・スーン」「デルタ・レディ」など火を噴くようなソロを弾く。
レオンは4曲で歌い、ピアノを演奏。最後の名演といっていい。やはりバラードが魅力。「ザ・バラード・オブ・マッド・ドッグス・アンド・イングリッシュマン」や、彼のバンド、マッド・ドッグスの酒焼けしたような声の女性ヴォーカリスト、クラウディア・リニアとの「北国の少女」は自分へのレクイエムか。代表曲「ソング・フォー・ユー」とテイストは近い。それでもいい。リスナーは彼の“味”を聴きたい。
圧巻はザ・バンドのカバー曲「ザ・ウェイト」。マッド・ドッグスにも在籍したネイティブ・アメリカンの“歌姫”、リタ・クーリッジが参加している。

『Mad Dogs & Englishmen Revisited』
ユニバーサル ミュージック ¥3,300。
スライドギターの名手、デレク・トラックスとレジェンド、レオン・ラッセルが世代を超えて共演した名曲、名演奏が収録されている。
Kazunori Kodate
音楽ライター。近著は『不道徳ロック講座』(新潮新書)、『ジャズ・ジャイアントたちの20代録音「青の時代」を聴く』(星海社)。他に『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』(新潮新書)など多数。