今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回はGORO ITO+PAULA MORELENBAUM+JAQUES MORELENBAUMの『TREE, FORESTS tribute to RYUICHI SAKAMOTO』。

リオの風、光、さざ波を感じるトリビュート
ボサ・ノヴァを演奏するギタリストの伊藤ゴローと、ブラジル人のジャキス(チェロ)とパウラ(ボーカル)のモレレンバウム夫妻による、坂本龍一へのトリビュートアルバム。アコースティック主体の演奏によって、10テイクが温かく響く。
2001年、坂本はレジェンド、故アントニオ・カルロス・ジョビンのリオ・デ・ジャネイロの家のピアノでアルバム『CASA』を録音した。リオの風、光、さざ波を感じさせるこの名作で共演したのがモレレンバウム夫妻であった。そして、3人は約3年間の世界ツアーで大喝采を浴びた。あの時の音と空気感が今作で蘇る。
「美貌の青空」「Rain」をはじめ全編を通してジャキスのチェロはやさしく、切なく、時に激しく歌い、リスナーの感情を揺さぶる。もっとも儚さを感じたのは「Fotografia」。坂本がトリオで、世界各国で演奏したジョビンの曲でコパカバーナの潮の匂いがする。チェロの調べがレクイエムに聴こえる。
ボーナストラックには坂本の代表曲である「Merry Christmas Mr. Lawrence」を収録。生前の坂本自身の演奏を伊藤がリミックスした。

GORO ITO+PAULA MORELENBAUM+JAQUES MORELENBAUM
『TREE,FORESTS tribute to RYUICHI SAKAMOTO』
ユニバーサル ミュージック¥3,520。
坂本龍一と共演してきた音楽家による、トリビュートアルバム。収録曲である「Happy End」では細野晴臣がゲストでベースを演奏している。
Kazunori Kodate
音楽ライター。近著は『不道徳ロック講座』(新潮新書)、『ジャズ・ジャイアントたちの20代録音「青の時代」を聴く』(星海社)。他に『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』(新潮新書)など多数。