今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回はシュガー・ベイブの『SONGS 50th Anniversary Edition』。

山下達郎の艶やかで歯切れのいい声、永遠に聴き続けたいカッティング
山下達郎がデビュー50周年記念アルバムをリリースする。2CDの一枚はバンド、シュガー・ベイブとして1975年に発表したデビュー作『SONGS』。もう一枚は、1994年に中野サンプラザで行った「山下達郎シングス・シュガー・ベイブ」の音源。山下がシュガー時代に歌っていた曲を主にセットリストを組んだショーだった。
この時はシュガー・ベイブの「DOWN TOWN」「過ぎ去りし日々ʼ60ʼs Dream」をはじめ、鈴木茂の曲「砂の女」や同時代にともにキャリアを重ねた浜田省吾のバンド、愛奴の「二人の夏」なども歌った。会場の空気がʼ70年代のビートで震えた。
シュガー・ベイブは色鮮やかなメジャーセブンスのコードで展開するロックが中心。そこに艶やかで歯切れのいい山下の声が乗る。フェンダーテレキャスターそのものを鳴らすカッティングが疾走感を生む。洗練と、R&Bの持つ肉体性。相反する魅力が楽曲で共存し、ラテンのアレンジも見え隠れする。
山下の切れ味鋭いカッティングを体験すると、永遠に聴き続けたくなる。生理的になくてはならない音になってしまう。その原点がシュガー・ベイブのパフォーマンスにあり、この記念盤にパッケージされている。
Kazunori Kodate
音楽ライター。近著は『不道徳ロック講座』(新潮新書)、『ジャズ・ジャイアントたちの20代録音「青の時代」を聴く』(星海社)。他に『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』(新潮新書)など多数。