今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は2024年5月から日本ツアーを行う、ラリー・カールトンの『Soul Searchin’』。
西海岸と南部のフュージョン。ミスター335、聴き納めか?
ギタリストのラリー・カールトンが約60年のキャリアにけじめをつける。“ミスター335”と言われグラミー賞を4度受賞したこのレジェンドが、2024年5月に来日公演を行う。
フュージョンがクロスオーバーといわれた1970年代、米西海岸のラリーの音楽は世界中で大ブームに。セミアコの名器、ギブソン335で演奏する「ルーム335」は大ヒットした。
しかし1988年、自宅前で暴漢に撃たれる。生死の境をさまよった彼は、懸命なリハビリでギタリストに復活。命の危機は音楽家を変え、音を変えた。「あの事件以降少しずつ僕の内側が進化し、音が熱を帯びた」
インタビューで話してくれた。「事件の前よりも、新しいメロディーやコードを生みだしたい欲求が強くなった」
ラリーは活動の拠点をカリフォルニアからテネシー州ナッシュビルに移した。南部の土地柄、音はブルージーになった。
ライヴでは今も「ルーム335」を演奏する。楽曲はウエストコースト生まれなので爽やか。ところが、ギターのアプローチは南部の土の匂い。両極端のテイストが絶妙に共存。ラリーの個性になっている。
横浜、東京、大阪での観納め聴き納めのショー、逃したくない。
Kazunori Kodate
音楽ライター。近著は『不道徳ロック講座』(新潮新書)、『ジャズ・ジャイアントたちの20代録音「青の時代」を聴く』(星海社)。他に『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』(新潮新書)など多数。