今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は、パット・メセニーの『ドリーム・ボックス』。
とろけるようなギター。3週間もの来日公演も実現
切なさ、はかなさ、郷愁……。世界最高峰のギタリストのひとり、パット・メセニーの『ドリーム・ボックス』は涙が溢れるほど情緒的だ。
パットは一年の大半でライヴを行い、ツアー暮らしを送っている。その旅の空の下で生まれたのがこの作品集。一曲目の「ザ・ウェイヴズ・アー・ノット・ジ・オーシャン」からラストの「コーラル」まで、絵画のように音の景色が描かれていく。
「僕の演奏は、素朴さや土の匂いがあると言われる。正しい感想だと思うよ。素朴さは僕そのもので、それが音になっている」
かつてインタビューした時に語っていた。彼は17歳までミズーリのカンザスシティで育ち、その後50年以上旅を続けている。土、風、水から、彼にしかないとろけるようなギターサウンドが育まれてきた。
2024年1月から2月、パットは約3週間のジャパンツアーを行う。各地のホールをまわった後、レジェンドのベーシスト、ロン・カーターとのデュオとソロで計約2週間ブルーノート東京に出演。セットリストは『ドリーム・ボックス』の曲が中心。海外公演では代表曲もメドレーで披露した。曲によってギターを持ち替え、ライヴでも情緒的な音を聴かせてくれる。
Kazunori Kodate
音楽ライター。近著は『不道徳ロック講座』(新潮新書)、『ジャズ・ジャイアントたちの20代録音「青の時代」を聴く』(星海社)。他に『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』など著書多数。