今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は、U2の『Songs Of Surrender』。
音が少ないほど豊かになる。ジ・エッジ再編集の名曲集
ギタリスト、ジ・エッジがプロデュースと編集を手がけたU2のセルフカバー集。「ワン」「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム」「サンデイ・ブラッディ・サンデイ」など約40年のキャリアから、17曲収録されている(通常盤)。
U2の曲の多くはもともと、ライヴパフォーマンスを前提にアレンジが施されていた。一方このアルバムは今のリスナー環境に合ったアレンジでミックス。
ジ・エッジは「全員が思ったこと。それは“少ないほど豊かである”ということだ」と言う。メンバー4人共通の希望で必要最小限の音がシンプルに再構築され、多くの曲は3~4分ほどの尺になった。叫ばず圧倒してこないボノのボーカル。硬質でないエッジのギター。新鮮だ。
このアルバムでのボノはリスナーの心にソフトに語りかける。だから、歌詞に意識がいく。
例えば代表曲のひとつ、「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」のサビ。「君がいてもいなくても、僕はもう生きていくことができない」とボノは歌う。究極の愛だ。この曲もジ・エッジによって、あらゆる音の装飾が取り払われ、メッセージがくっきりと伝わる。ボノに耳もとでささやかれる感覚になる。
Kazunori Kodate
音楽ライター。『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(ともに新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名言・名盤・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。