今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は馬場智章の『ELECTRIC RIDER』。
12月のモントルー・ジャズフェスも期待される日本ジャズシーンの新鋭。
2024年12月6〜8日、スイス発の世界的音楽イベントが横浜に上陸する。「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン2024」。ハービー・ハンコックなどレジェンドに加え、ステージに上がるのがテナー・サックス奏者の馬場智章だ。
2023年にジャズアニメ映画『BLUE GIANT』の主人公の演奏で注目された馬場がメジャー・デビューアルバム『ELECTRIC RIDER』をリリースした。打ち込みを使ってはいるものの、王道のジャズ。音に懐かしさがにじむ。例えば「PRIME」。1956年にソニー・ロリンズがコルトレーンと録音した「テナー・マッドネス」を思いださせる。
バラード曲「Fade into you」はとてつもなく美しく、涙腺を刺激する。トランペット奏者、佐瀬悠輔との「Circus Ⅱ」は、管2本が絡み合い激しく刺激し合い、実にスリリング。ロック曲「BaBaBattleRoyale」はベック・ボガード&アピスを思わせる重さ。ラストの曲、「Still Remember」のゲスト、ermhoiの歌は小鳥のささやきのよう。
アルバムとしてはコンパクトな34分のなかで、音楽の持つあらゆる魅力を体験させてくれる。このアルバムをフィーチャーするモントルージャズのステージが楽しみだ。
Kazunori Kodate
音楽ライター。近著は『不道徳ロック講座』(新潮新書)、『ジャズ・ジャイアントたちの20代録音「青の時代」を聴く』(星海社)。他に『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』(新潮新書)など多数。