今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回はミルトン・ナシメントとエスペランサ・スポルディングの『Milton + esperanza』。
肉声も楽器。楽器も演奏者の歌。風、雨、川、鳥のように響く歌。
“ブラジルの声”と称えられるレジェンド、ミルトン・ナシメント。60年以上世界中の音楽家にリスペクトされてきた。今の音楽シーンを象徴する才能、エスペランサ・スポルディング。2000年に、ジャズ・シンガーとベーシストとしてデビュー。そのあとは毎アルバム、まったく新しい音楽のアプローチを体験させている。
肉声も楽器。楽器も演奏者の声。ふたりの音楽は、そよぐ風のように、ふりそそぐ雨のように、川のせせらぎのように、鳥のさえずりのように響く。人も自然の一部だと知らされる。
「フリースタイルの画を描くイメージで歌い、演奏しています」エスペランサをインタビューした際語っていたのが印象的だ。
今作からは、彼女が晩年のウェイン・ショーターとつくった作品の影響も強く感じられる。
ラストナンバー「ホエン・ユー・ドリーム」はウェイン作。音楽から水彩画のような色彩が感じられ、透き通る声でどこまでも、三次元に音楽が広がっていく。彼女はミルトンやウェインなどレジェンドたちの世界観を継承、進化させている。
エスペランサは2024年10月30日から、大阪、横浜、東京のビルボードライヴで来日公演を予定。絶対に見るべきショー。
Kazunori Kodate
音楽ライター。近著は『不道徳ロック講座』(新潮新書)、『ジャズ・ジャイアントたちの20代録音「青の時代」を聴く』(星海社)。他に『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』(新潮新書)など多数。