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2024.05.24

ソン・ガンホが語る、ディズニープラス『サムシクおじさん』はなぜ、配信直後から話題なのか

『パラサイト 半地下の家族』『ベイビー・ブローカー』などで知られるソン・ガンホがデビュー35年にしてドラマに初挑戦。配信直後から好評が相次いでいる『サムシクおじさん』はビジネスパーソンとしてキャッチアップしておきたい。連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは

『サムシクおじさん』ディズニープラス スターにて5月15日(水)より独占配信開始
© 2024 Disney and its related entities

世界の映画スター、ソン・ガンホがドラマに初挑戦

近年、韓国オリジナルシリーズに力を入れている動画配信サービス「ディズニープラス」。

三池崇史監督が演出を務めた『コネクト』や、制作費約70億円が投じられた『ムービング』など、話題性と作品性を兼ね備えた大作が次々と配信されている。

2024年5月15日から配信がスタートした『サムシクおじさん』も注目作だ。韓国では配信前にここまで注目されたドラマがあったかと思うほど、話題性に富んでいた。

映画『パラサイト 半地下の家族』で知られる韓国屈指の名優ソン・ガンホが主演することはもとより、彼が35年の役者人生で初めて出演を決めたドラマ作品というので、誰もが好奇心を抱かざるを得ない。

メディアは「ソン・ガンホのドラマ初挑戦」「ソン・ガンホのドラマデビュー」といった枕詞をつけて『サムシクおじさん』を取り上げている。

先日、そのソン・ガンホをはじめとする『サムシクおじさん』の主要キャストたちがゲーテのためにオンライン・インタビューに応じてくれた。

インターネットを介した非対面取材とは思えない熱量で、ソン・ガンホはドラマ初挑戦の理由を次のように語った。

「コロナ禍を経験しながら、どうすればより効果的に観客と交流できるかについて多くの悩みがあった。今は色んな形のコンテンツが色んなプラットフォームで消費される時代なので、俳優たちにも色んなチャレンジが求められる。そんなことを思っていたところ、ちょうど『サムシクおじさん』という作品に出合って僕もその自然な流れに乗ったまでです」

政財界の陰で暗躍する謎のフィクサー”サムシクおじさん“

韓国では国民俳優という称号まで得ているソン・ガンホに「時流に乗ろう」と思わせた『サムシクおじさん』とは、一体どんな物語なのか。

舞台は戦後の苦境にあえぐ1960年代の韓国。

政財界の陰で暗躍する謎のフィクサー”サムシクおじさん“と、国の運命を好転させようと奔走するエリート青年が、豊かな国づくりを目指して不穏なパートナーシップを結び奮闘する様子を描くヒューマンドラマだ。

ソン・ガンホは“戦争中にも周囲の人たちだけは一日三食食わせた”ということで「サムシク(三食の韓国語読み)おじさん」と呼ばれる表題役のパク・ドゥチルに扮する。

アメリカ留学から帰ってきたエリート青年キム・サンを演じるのはピョン・ヨハン。ドラマ『ミセン』や『ミスター・サンシャイン』、映画『ハンサン ―龍の出現―』などに出演して実力派俳優として着実にキャリアを積んでいる。

ピョン・ヨハンに出演を決めた理由について尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「まるでその時代を生きた人が書いたかのように繊細な台本で、その時代の香りさえ漂う気がした」

サムシクおじさんを演じたソン・ガンホ(左)とキム・サンを演じたピョン・ヨハン(右)。
© 2024 Disney and its related entities

シナリオに惹かれたのはピョン・ヨハンだけではない。チン・ギジュや ファン・ステファニー・ヤン(少女時代のティファニー)など、ほかの俳優たちも出演の最大の理由を「台本に魅了されたから」と口を揃えた。

配信直後から好評相次ぐドラマ『サムシクおじさん』

それは1〜5話を見れば納得がいく。丁寧に繰り広げられるストーリーはスピーディーで刺激的な展開を好む最近のトレンドからは外れているが、俳優たちにとってはきっとチャレンジ精神を刺激するような台本だったに違いない。

キム・サンの婚約者で、父が現大統領の最大のライバルであるチュ・ヨジン役を演じたチン・ギジュも「何よりもセリフがとても良いなと感じたし、自分のキャラクターにも魅力を感じた。私が感じた魅力以上の何かを届けられたら最高に嬉しいけど、感じた分だけでもしっかりと盛り込もうという覚悟で臨みました」とコメントした。

チュ・ヨジン役を演じたチン・ギジュ/『サムシクおじさん』ディズニープラス スターにて独占配信中
国文科をトップの成績で卒業し、のちに新聞記者となるチュ・ヨジン役を演じ演じたチン・ギジュ。
© 2024 Disney and its related entities

とはいえ『サムシクおじさん』で1秒たりとも見逃せないのは、韓国最高峰の演技だろう。1〜5話の配信直後、韓国では俳優たちの白熱の演技合戦に好評が集まった。

映画『オールド・ボーイ』『お嬢さん』『別れる決心』などのパク・チャヌク監督も「ソン・ガンホの演技の絶頂であり、集大成。『ゴッドファーザー』でマーロン・ブランド、アル・パチーノ、ロバート・デュバルが変身・合体し、1人の人物を演じたとすればこうじゃなかっただろうか」と絶賛のコメントを寄せている。

「豊かさにあふれた理想の暮らしを夢見た激動の時代に、情熱や野心、信頼といったピュアな感情を燃やしていた男2人のバディぶりがとても魅力的だった」としながら、ゲーテの読者たちにもその部分をぜひ注目して観てほしいと話すソン・ガンホ。

第5話以降から謎の女性レイチェル・ジョン役として登場するファン・ステファニー・ヤンも、「サムシクおじさんとキム・サンの関係がとても魅惑的だったので、少し深堀りしたかった。これは一体なんだろう、と心理的な部分を分析したくなる作品だった」と語っていた。

レイチェル・ジョン役として登場するファン・ステファニー・ヤン
少女時代のティファニーこと、ファン・ステファニー・ヤン。財団の理事、レイチェル・ジョン役を務める。
© 2024 Disney and its related entities

ちなみに『サムシクおじさん』の撮影はコロナ禍に行われ、関わった全員が大変な思いをしたそうだ。韓国で外出・集合規制が解除された日、ソン・ガンホは苦楽をともにした制作チーム全員に高級焼肉を振る舞ったという。

「腹が満ちれば心も開く」という持論を持つサムシクおじさんらしいその太っ腹ぶりに、キャストたちの心も満たされたのは言うまでもないだろう。『サムシクおじさん』もそれこそ高級焼肉のような、心が開く満腹感たっぷりの作品。今後の配信も楽しみだ。

■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。

 ■連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは
ドラマ『愛の不時着』、映画『パラサイト』、音楽ではBTSの世界的活躍など、韓国エンタメの評価は高い。かつて「韓流」といえば女性層への影響力が強い印象だったが、今やビジネスパーソンもこの動向を見逃してはならない。本連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」では、仕事でもプライベートでも使える韓国エンタメ情報を紹介する。

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TEXT=李ハナ(ピッチコミュニケーションズ)

PHOTOGRAPH=YONHAP NEWS/アフロ

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