“キング・オブ・ポップ”と言われるアーティスト、マイケル・ジャクソンの輝かしいキャリアを描いた映画が2026年6月12日に全国で公開。歌、ダンスはもちろん、エンタテインメントの裏側、大スターの孤独までが描かれる。大スクリーン、大音量で楽しみたい、劇場に足を運ぶべきミュージック映画だ。

世界各国で大ヒット
2026年6月12日、映画『Micael/マイケル』がいよいよ日本で公開される。この作品は「キング・オブ・ポップ」と言われたレジェンド、マイケル・ジャクソンの幼少期から黄金期を描いた。全米をはじめ世界各国ではすでに公開され、大反響。歴史的メガヒットへと突き進んでいる。
クライマックスは1984年のシーンだろう。マイケル・ジャクソンがリードヴォーカルを担う兄弟グループ、ジャクソンズの「ヴィクトリー・ツアー」最終公演をリメイクしている。
会場は米ロサンゼルスのドジャー・スタジアム。マイケルは、美しいバラード曲「ヒューマン・ネイチャー」を透き通るような声で歌い上げる。プロデューサーのクインシー・ジョーンズとマイケルがTOTOのスティーヴ・ポーカロをプロデュース・チームに招き、レコーディングもジェフ・ポーカロ(ドラムス)やスティーヴ・ルカサー(ギター)などTOTOのメンバーを起用した名曲。モータウン・サウンドに米西海岸のさわやかな風が吹く。
会場は熱狂。本編終演後、舞台袖も興奮は収まらない。お互いのコンディションを確認し合うメンバー。大観衆が求めるステージに駆け戻っていく。ドキュメントのような臨場感だ。
この映画のなによりの魅力は、今自分のいる場所はシアターではなく、ドジャー・スタジアムであるように感じられること。そして、映画を鑑賞しているのではなく、蘇ったマイケルのショーをスタジアムで観ているかのように興奮できること。
だからこそ、全国63館でのIMAX(大画面、高解像度カメラ、プロジェクター、急勾配のフロアのシステム)の進化型で、さらに高音質で高画像のプレミアム・ラージ・フォーマットでも上映される。
スクリーンでは、アンコールのリクエストに応えてステージに戻ったマイケルが、音響スタッフにマイクの音量ダウンを促す。そして、これがジャクソンズのラスト・ショーであることを伝える。客席の悲鳴も消えぬ間にバンドはアップテンポの曲を演奏する。ジャクソンズの人気曲「シェイク・ユア・ボディ」だ。次男、ティト・ジャクソンが終焉の寂しさをかき消すようにギターを鳴らす。三男、ジャーメイン・ジャクソンのベースギターが太いグルーヴで歌う。マイケルは軽快にステップを踏み、ターン。代名詞のムーンウォークを披露し、シャウトする。
このジャクソンズとのステージを最後に、マイケルは、幼少時からの父親の呪縛を振りほどき、過去の自分から解き放たれ、偉大なキャリアの次章へとステージを上げていく。
アルバム総売り上げ5億枚の大スター
マイケルは2009年に50歳でこの世を去っている。映画は、シンガーになるべく父親に厳しく鍛えられた幼少期、ジャクソン5(後にジャクソンズに変更)として活躍した少年期、ソロとして世界的ヒットを連発した黄金期までを描く。
アルバム総売上枚数は5億枚。伝説的スターの圧倒的な人生がよみがえる。ただし、スクリーンに映し出されるのは輝かしいキャリアだけでない。
父子の確執、母親の愛情、世界的プロデューサーであるクインシー・ジョーンズとのタッグで制作した大ヒット作『オフ・ザ・ウォール』や『スリラー』などの誕生秘話、そして音楽業界の裏側も見せていく。
製作はグレアム・キング。ロックバンド、クイーンのヴォーカリスト、フレディ・マーキュリーを描いた2018年公開映画『ボヘミアン・ラプソディ』を手掛けたプロデューサーだ。『ボヘミアン・ラプソディ』のクライマックスもライヴ・シーンだった。アフリカの飢餓を救うためのチャリティコンサートで、英ウェンブリー・スタジアムのクイーンのパフォーマンスを再現した。その映像技術が『マイケル』にもあますことなく発揮されている。
マイケルを演じるのはジャファー・ジャクソン。兄、ジャーメイン・ジャクソンの息子で、マイケルの甥にあたる。ジャファーは叔父、マイケルのパフォーマンスを高精度で再現するだけでなく、哀しみや切なさをリアルに表現している。
つまり『マイケル』は、ミュージック映画で、青春映画で、伝記映画。さらに生きるヒントの詰まったメッセージ作としての視点からも描かれている。
劇中で使用される曲は時代を超え、レーベルの垣根も超える。
ジャクソン5時代からは全米1位曲「帰ってほしいの」「ABC」「アイル・ビー・ゼア」など。ソロの名作『オフ・ザ・ウォール』からは全米1位の「今夜はドント・ストップ」。全世界最多の約6600万枚を記録し、第26回グラミー賞を8部門で獲得し日本でも12週間連続1位になった『スリラー』からも全米1位「今夜はビート・イット」「ビリー・ジーン」などを劇中で堪能できる。
生まれ育った米インディアナ州ゲイリーで貧しい幼少期を描く前半部はちょっと切ない。父親のしごきが厳しい。父は息子たちに音楽の訓練を強い、幼いマイケルにも容赦しない。泣き叫びキッチンへ逃げ込むマイケル。それでも、音楽への情熱は揺るがなかった。
当時のマイケルのことを2019年にブルーノート東京で来日公演を行った兄、ジャーメインもこう話していた。
「弟は子どものころから、眠る時間も惜しみ練習に励んだ。だから、ステージに上がったときにはなんでも楽々とやっていたよ。その姿勢が最高のアーティストである彼をつくったんだ」
兄弟のなかでも、マイケルの努力は突出していたそうだ。
自由を求め孤独に耐えたレジェンドの私生活
映画ではマイケルがいかに自由を求めていたかも描かれる。誰かに操られずに自分で自分をコントロールしたいという願望が、弁護士やプロデューサーの人選をはじめ、さまざまなシーンからうかがえる。その象徴のひとつが音楽史上最高のMVと称賛された「スリラー」のショートフィルムだろう。マイケルはカメラのフレーミングまで細かく指示。じわじわと攻めてくるゾンビの恐怖感が増した。
こうして制作した「スリラー」や「ビリー・ジーン」のMVをマイケルは、米音楽専門チャンネルMTVで流してほしい、と所属するレコード会社にネゴシエーションする。当時、MTVは黒人アーティストの音楽を扱わないのことが基本方針だった。「黒人として誇りがある」というのがマイケルの論調だ。
一歩も引かないマイケルに、所属レコード会社は覚悟を決める。MTVに「ビリー・ジーン」のビデオを流し続けるように指示する。
こうして「スリラー」も「ビリー・ジーン」もMTVで流れ始めるわけだが、この出来事はジャズやブルースなど、白人以外から生まれた音楽も放映される“新時代”の幕開けといっていいだろう。マイケルはポップ・ロックのカルチャーの進化に一役買った。
ただし、これらは彼の人生の“光”の側面。映画は“影”の側面も描く。それは全編に映し出される孤独だ。
マイケルは、自伝『ムーンウォーク』(訳/田中康夫・河出書房新社)でこうふり返っている。
「僕にはまったく親友がいなくて、すごく寂しかったのです。とても孤独だったので、話ができて、ことによったら友達にまでなれそうな人と出会えるかも知れないと思って、僕はよく近所をうろうろしていたものです」
お金はうなるほど持っている。でも、常に寂しい。そのデリケートな心をジャファーは劇中、悲しげな瞳で表現している。
「近所の子供とか、誰でもよかったのです。成功は確実に孤独をもたらします」
マイケルは同自伝で打ち明けている。 劇中、小児病院を慰問するシーンもあるが、子どもたちプレゼントを用意しやさしく話しかけることで、自分の孤独も癒していたのかもしれない。どれだけ脚光を浴びいても、心は満たされない。大スターゆえの孤独。そんな姿も映画は丁寧に描いている。
Michael Jackson’s History
1958年|8月29日、米インディアナ州ゲイリーで、10人兄弟の8人目(四男)として生まれる
1963年|兄弟のグループ、ジャクソン5に参加
1968年|モータウン・レコードと契約
1969年|「I Want You Back」でメジャーデビュー。全米チャート1位を獲得
1970年|デビューから「ABC」「The Love You Save」「Iʼll Be There」が4曲連続で全米チャート1位を獲得
1971年|「Got to Be There」でソロデビュー
1972年|「Ben」で初となるソロでの全米チャート1位を獲得
1975年|エピック・レコードへ移籍。グループ名をジャクソンズに変更
1979年|クインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎え、移籍後初のソロアルバムとなる名作『Off The Wall』をリリース
1982年|『Thriller』リリース。発売枚数約6600万枚。ギネス世界記録にて「史上最も売れたアルバム」として認定
1983年|代名詞になったムーンウォークを初披露
1985年|アフリカの飢餓を救うプロジェクト「USA for Africa」に参加。ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、レイ・チャールズ、ダイアナ・ロス、スティービー・ワンダーらと「We Are The World」を収録
1987年|『Bad』リリース。「Bad World Tour」を開催。ツアーは東京からスタート
1997年|ジャクソン5がロックの殿堂入りを果たす
2001年|ソロアーティストとして史上最年少でロックの殿堂入り
2009年|自宅にて心肺停止状態に陥り死去。享年50
『Michael/マイケル』
2026/アメリカ
監督:アントワーン・フークア(『トレーニング デイ』『イコライザー』シリーズ)
製作:グレアム・キング(『ボヘミアン・ラプソディ』)、ジョン・ブランカ、ジョン・マクレイン
出演:ジャファー・ジャクソン、ジュリアーノ・ヴァルディ、コールマン・ドミンゴ、ニア・ロング、ケンドリック・サンプソン他
配給:キノフィルムズ
2026年6月12日より日本公開。全国63館でのIMAX上映に加え、プレミアム・ラージ・フォーマットのDolby Cinema®、Dolby Atmos®、MX4D®、4DX、SCREENX、ULTRA 4DXでも上映
https://www.michael-movie.jp/









