ENTERTAINMENT

2024.04.26

韓ドラ業界の深刻な不況。チョン・ギョンホ、コ・ヒョンジョン…俳優たちが明かしたリアルな現状とは

韓国俳優たちがドラマ業界の不況を身をもって実感しているという。俳優たちが明かしたリアルな現状はビジネスパーソンとしてキャッチアップしておきたい。連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは

Netflixシリーズ「賢い医師生活」独占配信中
Netflixシリーズ「賢い医師生活」独占配信中

世界的に注目を集める韓ドラが深刻な不況に

Netflixで配信中の『涙の女王』のように、世界的に注目を集める作品がたびたび登場する韓国ドラマ。傍から見れば絶好調そのものだが、実は深刻な不況に陥っていることは、以前に本コラムでも紹介したとおりだ。

コンテンツの制作費用に上限を設けないNetflixら動画配信サービスの登場によって、一部の主演級俳優たちの出演料と、ドラマの制作費が急騰した。

そのため、業界全体としての制作本数が減ってしまったうえに、制作費の回収に負担を感じた地上波もドラマ枠を縮小するという悪循環が続いている。

その影響を最も強く受けているのは、“呼ばれてナンボ”の俳優たちかもしれない。実際に、多くの俳優たちが身をもって感じた不安ややるせない気持ちを様々なYouTubeチャンネルで吐露しているのだ。

「次回作が白紙」「オファーが来ない」

最近、人気ドラマ『賢い医師生活』の主演キャストが人気YouTubeチャンネルで大集合したのだが、そこでチョン・ギョンホは「協議中だった次回作が白紙になった」と近況を明かした。

「いい演出家に脚本家、俳優が揃ってもダメで頓挫(とんざ)するケースもすごく多いみたい」「制作中止になった作品だけで6、7本あるらしい」といった彼らの会話から、ドラマ業界の現状があらわになった。

チョン・ギョンホといえば、主演を務めた2023年のドラマ『イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜』での演技が好評を博した、ルックスと演技力を兼ね備えた主演級俳優。

一度も仕事が途切れたことのない彼が暇を持て余しているというのだから、俳優たちの不景気は性別やキャリア、ネームバリューすら問わないようだ。

韓国ドラマ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」のチョン・ギョンホ
数学のNo.1スター講師であるチェ・チヨルを演じたチョン・ギョンホ。Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中。

『マスクガール』に出演したミスコリア出身女優コ・ヒョンジョンも、色んなYouTubeチャンネルで「最近、オファーが来ない。みんなには(好きで休んでいると)誤解されている」と告白。

「単独主演じゃなくてもいいし、出演料を削ってもいいので、いい俳優たちとお仕事がしたい。まだやりたい作品がいっぱいある。ずっと渇望している」と訴えた。

最近彼女はインスタグラムのアカウントを開設してファンと交流を図っているが、それも業界の不況による心境の変化ではないかと考えられる。

Netflixシリーズ「マスクガール」の場面写真
韓国ドラマの女王ともいわれるコ・ヒョンジョン。3人1役という型破りなキャスティングで注目を集め、容姿にコンプレックスを持った平凡な会社員のキム・モミの波乱万丈な一代記を描いたドラマ『マスクガール』で、最後に登場するキム・モミを演じた。Netflixシリーズ「マスクガール」独占配信中。

副業を始める主役級俳優たち

韓国には「歯がなければ歯茎で生きる」という諺(ことわざ)があるが、俳優たちの今の状況がまさにそうだ。本業の代わりに“副業”に取り組んで生きる道を模索している。

『賢い医師生活』のユ・ヨンソク、『サムダルリへようこそ』のチ・チャンウク、『恋のスケッチ~応答せよ1988〜』のパク・ボゴム、『太陽を抱く月』のハン・ガインら多くの人気俳優たちが、メインフィールドではないバラエティ番組にも積極的に出演中だ。

『賢い医師生活』のチョ・ジョンソクは2024年3月、持ち前の歌唱力を生かして歌手デビューを果たした。俳優たちのYouTube参入も進んでおり、自分のチャンネルを立ち上げたり、人気チャンネルにゲスト出演したりするケースが非常に多く見受けられる。

また、舞台やミュージカルに関心を向ける俳優たちも増えている。

前出のパク・ボゴムは2022年4月に兵役を終えた後、復帰作としてミュージカルに初挑戦して大方の予想を覆した。『イルタ・スキャンダル』の女優チョン・ドヨンも2024年6月から上演される舞台に主演する。

彼女が舞台に立つのは、なんと27年ぶりだ。“カンヌの女王”と呼ばれるチョン・ドヨンですら、映画やドラマのオファーが減っていることを端的に物語っている。

韓国ドラマの深刻な不況は、俳優たちの発言や行動によってさらに浮き彫りになった。行き場を失った俳優たちの放浪はしばらく続きそうだが、はたして。

■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。

 ■連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは
ドラマ『愛の不時着』、映画『パラサイト』、音楽ではBTSの世界的活躍など、韓国エンタメの評価は高い。かつて「韓流」といえば女性層への影響力が強い印象だったが、今やビジネスパーソンもこの動向を見逃してはならない。本連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」では、仕事でもプライベートでも使える韓国エンタメ情報を紹介する。

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TEXT=李ハナ(ピッチコミュニケーションズ)

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