CAR

2025.11.27

プジョーの新たなフラッグシップモデル「3008」は、見目麗しく財布にやさしい【試乗】

プジョーのミッドサイズSUV、3008が8年ぶりに第3世代へとフルモデルチェンジ。ハイブリッドと電気自動車(BEV)の2種類の電動パワートレインを設定し、新世代プジョーのフラッグシップモデルと位置づけられたモデルだ。果たしてその出来栄えやいかに。

車正面
画像/Stellantisジャパン

新世代のフラッグシップモデルとして

現在のプジョーのラインアップは、ハッチバックの「208」、「308」、SUVの「2008」、「3008」、クロスオーバーの「408」、レジャーアクティビティビークルの「リフター」となっている。

ちなみにプジョーといえば伝統的に真ん中がゼロの3桁の数字を車名にしてきた。そして2004年に発表された1007を皮切りに、SUV系の車名は真ん中2つがゼロの4桁の数字が使われるようになった。以前は、1桁目はサイズ、末尾は世代をあらわしていたが、現在は世代が一巡したモデルもあり、末尾はすべて8とする法則になっている。

サイズでみれば「408」が現行プジョーのフラッグシップのはずだが、あえてこの新型「3008」を新世代フラッグシップモデルと位置づけている。それは新開発のプラットフォームを採用し、デザインも機能も動力性能もすべての面において従来モデルを凌ぐという自信のあらわれというわけだ。

8年ぶりにフルモデルチェンジした3008は、ステランティスグループが新開発した最新の電動車用プラットフォーム「STLA-Medium」を採用する初のモデル。このプラットフォームは、ホイールベース、全長、地上高、サスペンション形式などにフレキシブルさをもち、いわゆるC〜Dセグメントに対応。また電気自動車のみならずハイブリッド車などにも使える設計の自由度をもっている。今後はこのプラットフォームをベースとしたアルファロメオやジープなどさまざまなブランドのモデルが登場する予定だ。

新型3008のエクステリアデザインは、ファストバックスタイルのいわゆるクーペSUV。幾何学模様のグリルの中央にはライオンをモチーフにしたブラックの新世代ブランドエンブレムが、そして左右には最新のプジョーのアイデンティティとも言えるライオンの爪痕をモチーフにした3本ラインのLEDデイタイムランニングライトを配置する。また、リアのLEDランプにも同様に爪痕を思わせる3本ラインが採用されている。

エクステリア以上に新しさを感じさせるのがインテリアデザイン。プジョーはこれまでも「i-Cockpit(アイコックピット)」という独自のデザインを採用してきた。小径のステアリングの位置をできるだけ下げ、ドライバーはその上からメーターを覗きこむレイアウトになっている。メーターがステアリングによって遮られず、また前方の視界が広くなるといった利点がある。

インテリア
インテリアは直線基調のエッジのきいたデザインながら、ファブリック素材を組みわせることで居心地のいい空間に。

新型が採用するのはその進化版となる「Panoramic i-Cockpit(パノラミック アイコックピット)」と呼ばれるもの。21インチのワイドなスクリーンにメーター類やインフォテインメントなどを集約。ダッシュボード中央には、頻繁に使用する機能を10個のショートカットキーに任意でわりあてることができる「i-Toggles(アイトグル)」を配置するなどしている。適度な囲まれ感があり計算されたボタン配置など、独自性は高いが慣れると使いやすいものだ。

伝統と革新をうまくバランスさせている

今回の試乗車はハイブリッド仕様だった。パワートレインは、新開発の1.2リッター直列3気筒ターボエンジンと、6速デュアルクラッチ式トランスミッションに内蔵する電動モーターを組み合わせた48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載。マイルドハイブリッドといっても約30 km/h までは電動走行が可能で、燃費は19.4km/L (WLTCモード)を実現している。少し燃費走行を心がければ20km/Lオーバーも難しくない。

シート
人工スエードであるアルカンターラを用いたシート。肌触りがよくかつホールド性に優れるといった特性がある。

試乗車は最上級グレードの「GT HYBRID アルカンタラパッケージ」で、シート中央部にアルカンタラ素材を使用し、上質さと身体のホールド性を両立。またサイドサポート部などの張り出し具合をドライバーの好みに調整できるアダプティブボルスター機能をプジョーとして初搭載し、さらにマッサージ機能まで備わっていた。フランス車に共通する特長として、ソフトだけれどしっかりと体をサポートしてくれ、ロングドライブでも疲れにくいシートを採用することが挙げられるが、その例に違わぬ出来の良いものだった。

ミッドサイズSUVが、ハイブリッドといえどもわずか1.2リッターの排気量でちゃんと走るのか心配だったが、走りだせばそれはすぐに杞憂に終わった。電動走行する時間はわずかだが、深夜早朝にスタートする際などに静かに走り出すことができるし、エンジン始動中もモーターは黒子として発進、加速をサポートしてくれる。1.2リッターターボエンジンの出力は最高出力136PS/最大トルク230Nm、これにモーターのアシストが22PS/51Nm加わって、システム最高出力は145PSとスペックだけをみればたいしたことはないけれどしかし、実に軽快に走る。

背面画像
プジョー3008の車両価格は、エントリーグレードの「Allure Hybrid」が489万円。「GT Hybrid」が540万円。最上級グレードの「GT Hybridアルカンタラパッケージ」が558万円

その軽快さは足回りのよさにも起因している。プジョーのサスペンションは伝統的にスプリングを柔らかく、ダンパーの伸び側の減衰力を高める独自のセッティングを施し、猫の足さばきのしなやかさになぞらえ“猫足”と呼ばれてきた。その良き伝統が最新のモデルにもしっかりと息づいている。

10月30日、「2025-2026 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の10ベストカーが発表されたが、この新型3008は見事にベスト10入りを果たした。その理由は「高い燃費性能と先進的なデザイン、そして優れた快適性が評価」とある。これに加えるならば、のきなみ自動車の車両価格が高騰している現状においてエントリーグレードなら500万円以下、最上級グレードでも558万円〜という設定も魅力的。まさに見目麗しく財布に優しいクルマだ。

TEXT=藤野太一

PHOTOGRAPH=Stellantisジャパン

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