今回はコレクションで揃えたくなる旬なブランドをピックアップ。男性美容研究家の藤村岳が大人のための香水を紹介する。連載「オトコの“香印象”のつくり方」とは……
コレクションで香りを揃える
香りの好みは、年齢や季節などによって左右される。そして非常に情緒的なものであるがゆえ、その時の気分によっても、好きな香りとピンとこない香りも変わってくる。実にうつろいやすいものなのだ。売り場では気に入っていたのに、家に帰って纏ってみたら「何か違う」なんて経験もあるだろう。
そこで、今回は“色ち買い”ならぬ、“香りち買い”を思わずしたくなる香水3ブランドをご紹介。大人だからこそできるコレクションの全部買いを提案したい。
自然の恵みあふれるビュリーの香りで心も豊かに
洗練された大人の身だしなみを演出してくれると、昨今評判の「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」。1803年に調香師のジャン=ヴァンサン・ビュリーが創業した由緒あるブランドだ。植物の力を最大限に生かす処方で、香水やスキンケアなどを展開し、総合美容専門店としての地位を確立している。
そんなビュリーから新しいコレクション「レ・ジャルダン・フランセ・ドゥ・オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」が登場。
世界各地の珍しい草木がヨーロッパへ持ち込まれ植物学が飛躍的に発展した18~19世紀当時、種子や苗のアンティークコレクションからインスパイアされたという。トマトやキュウリ、ニンジンなど、菜園で採れる野菜を香りで表現した全6種をラインナップ。丁寧に耕された土の香り、素朴な野菜や香草、そして花。まさに自然を表現した要素で香りが構成されている。
コレクションすべての香りを詳細に説明したいが、今回は男性にお薦めしたい2つの香りをご紹介。
まずは「コンコンブル・ダンド・エ・マント・ドゥ・シリィ」。キュウリのみずみずしさと、甘いムスクが特徴的でミネラル感のあるミント系の香りだ。
もうひとつは、男性のみならず女性からも好かれる「ヴェルヴェーヌ・デザンド・エ・バジリック・ドゥリュ」。どこか懐かしいホワイトムスクのパウダリーな香りに黒海産バジル、ヴァーベナのレモンのような爽やかさ、シダーとミントなどアロマティックな要素にあふれる。
どちらもこれから迎える夏にぴったりの香りだ。
「レ・ジャルダン・フランセ・ドゥ・オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」コレクションは香りの広がりと純度を最大限に引き出すために、アルコールを一切使用しない水性香水の「オー・トリプル」として展開。肌が弱い人も安心して使えるうえ、アルコールによる揮発がないため、香りは控えめでありながらも優しく長時間香りを放ってくれる。水性香水のため使用の際は軽くボトルを振ってから。クラッシックなパリを想起させるボトルも魅力的で、コレクションを並べて愛でても楽しめる。
世界的調香師フランシス・クルジャンが織りなす爽やかで品のある香り
調香師に与えられる最も栄誉ある賞のフランソワ・コティ賞を2001年に受賞したほか、アーティストとも多くのコラボレーションを行い、フレグランスの新たな領域を生み出してきた天才調香師フランシス・クルジャン。
数々のブランドでヒット香水を手がける彼だが、自身の名を冠するブランド「メゾン フランシス クルジャン」の「コローニュ フォルテ」コレクションから、新作が登場した。
「アクア メディア コローニュ フォルテ」と名付けられたシリーズ4作目となる新しい香りは、グリーンをテーマカラーに調和とバランスを体現したオードパルファム。清々しいグリーンのボトルで表現されたのは虹のプリズムの中間に現れる色。そして、香りはイタリア産ベルガモットやバーベナ、スイートフェンネル、ヘディオン、そしてウッディムスクなどから成り立っている。身に纏えば、間違いなく爽やかで心地よい。自然に囲まれた別荘で過ごす時などにふさわしいだろう。
同コレクションは、「健全な精神は健全な身体に宿る(ラテン語:Mens sana in Corpore sano)」という格言を体現したシリーズ。アクア メディア コローニュ フォルテのほかに3つのフレグランスを揃え、それぞれがテーマカラーを持つ。
ビジネスシーンにお薦めしたいのが、クリアがテーマカラーの「アクア ユニヴェルサリス コローニュ フォルテ」。透明感がありながらもカラブリア産ベルガモットとムスクアコードによるエネルギーとスピード感のある香りが特徴的。プレゼン前に纏えば、気分を高めてくれるはずだ。
また、ブルーをテーマにした「アクア セレスティア コローニュ フォルテ」は少し意外な香りだ。ラズベリーやブラックベリーのファセットを持つミモザ、そしてストロベリー、アプリコット、ピーチなどの香りを備えたジャスミンが香ってとてもフルーティー。優しく柔らかな印象を与えてくれる香りは、パートナーとのデートにぴったり。
最後に「アクア ヴィタエ コローニュ フォルテ」は元気なイエローがテーマ。イタリア産マンダリンの香りはまるで太陽のような活気にあふれ、しかしその後、柔らかなフローラルノートへと導く。ビーチリゾートにうってつけの香りだ。
自然に囲まれた別荘、ビジネス、デート、ビーチリゾートなどさまざまなシーンに適した香りをシリーズで揃えておけば、貴兄の暮らしはきっと豊かになるだろう。
英国王室御用達の名門ブランド・クリードが再上陸
ブランドの始まりは1760年、ハウス・オブ・クリードの紋章にハサミが使われていることからもわかるとおりテーラーとしてイギリス・ロンドンで開業した。イギリス国王ジョージ3世に香りのついた革手袋を届けたことから始まったとされ、ジェームズ・クリードが創設したメゾンは260年以上、フレグランスをつくり続けている。
ジョージ3世の孫娘のヴィクトリア女王はクリードを王室御用達に任命し、海を越えたフランスでもナポレオン3世やその妻であるウジェニー皇后に認められ、1854年にはフランス・パリにも拠点を設けた。現在は直系の子孫である6代目オリヴィエ・クリードと息子のアーウィンがその伝統を継いでいる。
そんな由緒あるメゾン、クリードが再び、日本に上陸した。ヘリテージコレクションは現在、26種類あり、なかでも名香との誉れ高いのが、「アバントゥス オーデパルファム」。クリアとブラックの力強いルックスのこちらは特に人気で、「追い風に乗り成功に向かってどんな時も全力疾走する」男性をイメージしている。
グローバルなビジネスシーンで活躍する人が自信を裏打ちするように纏っている、そんなイメージがある。レモンやピンクペッパーの弾けるパワフルさ、甘さと優しさ、そして落ち着きなど男性の持つ魅力を存分に引き出してくれるそんな香りなのだ。こちらには「アバントゥス フォー ハー オーデパルファム」という女性用もあるので、カップルでお揃いにするのも素敵だ。
また、男性用として筆者がお勧めしたいのが、「シルバー マウンテン ウォーター」。アルプスの凍てつくような空気をイメージした突き抜けるような活力を帯びた香り。特にティーとブラックカラント(カシス)、そしてラストのサンダルウッドやムスクの香りへの着地がまとまっていて実に心地よい。ちなみに、女性にも人気の香りでプレゼントとしても喜ばれる。
クリードはクリアなボトルが多いが、黒一色の「グリーン アイリッシュ ツィード」や意匠の凝った「ラブ イン ブラック」、ピンクでかわいらしい「ウインドフラワー」などもあり、インテリアとして見ているだけで楽しめる。貴重な天然香料を多く用いるため、価格が高めだがコレクションしたくなるはず。まずは、香りの方向性を確かめるために便利なギフトセットから始めるのもいいだろう。
日々状況が変わり、さまざまなシーンに臨機応変に対応する。これはビジネスパーソンにとっては当たり前のことだ。香水もしかり。気に入っている香りを1、2本持って使い回しているだけでは、シチュエーションに合わせた自分に最適な香りを纏うことはできない。コレクションで揃えておけば、その時々のTPOや気分に合わせて、自分を効果的に演出できるはずだ。
■連載「オトコの“香印象”のつくり方」とは……
第一線で走り続けるビジネスパーソンは、リラックスしたい時もあれば、気持ちを奮い立たせ、勝負に挑まなくてはいけない場面もある。本連載「オトコの”香印象”のつくり方」は、自分を効果的に演出する武器でもある香りを上手に纏い、単なる好みではなく、スーツを誂えるように、自分に合う香りを見つける指南書。男性美容研究家の藤村岳がシーン別にベストな香りを紹介する。