レストランを愛してやまない秋元康、小山薫堂、中田英寿、見城徹が選ぶ、最強のレストランガイド「ゲーテイスト2024」。皿とともに料理人のほとばしる情熱を心ゆくまで味わいたい、“料理人の覚悟”を感じる店をご紹介。今回は東京・麻布十番の『ニュートラル』。
見城「鮪のとろけ具合と余韻に悶絶。真の熟成鮨に初めて出会った」
2024年2月にオープンした長嶋一茂氏がオーナーを務めるバー『ニュートラル』。森田恭通氏が手がけた空間は、幻想的な雰囲気が漂う。このバーのカウンターに週に1回だけ、一茂氏が惚れこんだ湯河原の鮨店『鮨 こゝろ』の店主・平河大輔氏が立つ。
見城 長嶋一茂が、“週1鮨店、普段バー”というお店を麻布十番で始めたんです。
秋元 一茂絶賛の熟成鮨で、とにかく美味しいから食べてみてほしいと。でも、熟成って好みが分かれますもんね。
見城 僕も魚って熟成するとどれも似たような味になって個性が失われるって思っていた。ところが驚愕。食感、香り、余韻など逆に個性が際立っていて。
秋元「とてつもなく時間をかけてたどりついた珠玉の熟成鮨」
中田 僕も美味しい熟成鮨に出合ったことないです。熟成の手法が違うんですか?
秋元 平河さんはずっと考えていたんでしょうね。湯河原の地でどう勝負するかって。そして、コロナの時に仕入れた魚介がダメになっていくことに耐えられなくて熟成に活路を見出したそう。湯河原のお店のすぐ近くに温度や湿度を管理できる熟成庫用の部屋を借りているんですよ。
熟成庫だけでなく、風に当てて水分を飛ばすとか、塩を打ったり、塩水に浸けたり魚によって下処理もさまざま。研究、試作に莫大な時間をかけてようやくたどりついた味が、一茂はじめ常連さんに認められ、口コミで今や予約困難に。
見城 熟成は温度や湿度が重要だけど、魚が乾かないように保湿をいかにうまくできるかが鍵らしい。よりよい熟成環境を寝ても覚めても考えているって。
中田 熟成はある程度のセオリーはあっても基本は独学。試作の積み重ねしかないんですね。
小山 だからこそハマった人は突き詰めていく世界。熟成鮨はねっとりとした食感ですよね。
秋元 うん、身が柔らかく、シャリと自然になじんでいくから、口の中でひとつの料理になる感じ。余韻も長くて感動がずっと続きます。
見城 湯河原のお店は予約が難しいから、一茂に感謝だね。
NEUTRAL/ニュートラル
福岡県、有明海の海苔漁師の家庭で育った平河氏。15歳から日本料理の料理人だった叔父の紹介で修業をしたのち、鮨職人に憧れ27歳で転身。30歳で独立。当初から鮪は熟成させていたが、コロナを機にあらゆるネタの熟成を研究している。週に1回、湯河原の店舗が休みの日に『ニュートラル』のカウンターに立つ。
住所:非公開(会員制)
※現在は新規予約はほぼ受付けていない。
Instagram:@neutral.tokyo
この記事はGOETHE 2024年7月号「総力特集:恍惚レストラン ゲーテイスト2024」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら