レストランを愛してやまない秋元康、小山薫堂、中田英寿、見城徹が選ぶ、最強のレストランガイド「ゲーテイスト2024」。シェフズテーブルのような料理人とゲストが一体化した“弩級の特等席”をご紹介。今回は東京・九段の「水右衛門 虓」。
ひっそりとオープンしたが、2026年末まで予約満席に…
兵庫・芦屋で「食材を活かし切る天才」と熱狂的なファンに支持されていた『DOHVA(ドーヴァ)』を閉め、2018年に上京。『銀座 盡(じん)』として再スタートし、瞬く間に予約困難店に。その後、若手を育てることを目標に2021年、16席の『虎ノ門 虓』をオープンさせた。ここも2年先まで予約が埋まる人気ぶりだったが、若手の独立を促すべく2023年末で閉店。そしてこの3月、九段にてひとりで料理を作る4席のみの『水右衛門 虓』を開いた。
見城 皆さんも大好きな佐藤慶さんの新しいお店です。
秋元 まだうかがってないんです。誰にも開店案内を出さなかったとか。
見城 2024年2月に佐藤さんが出版した著書に今年新しいお店を開店予定と書いてあったから「いつオープンするの?」と聞いたんです。そうしたら「まだ決めていないけど見城さんが来てくださる日をオープン日にします」って候補日をいくつか送ってくれたんだよ。
小山 羨ましい!
見城 それで3月3日になってね。奇しくもこの日はかつて石原慎太郎さんと夜中まで酒を飲み交わした思い出深い日。その時に一句詠んでいたんですよ。佐藤さんとも絆を結んだ仲なので、この句を贈ろうと、書家の金田石城さんに書にしてもらい、それを携えてうかがいました。
小山 『水右衛門』って歌舞伎の『霊験亀山鉾』の主人公で冷血な極悪人の名前ですよね……。
見城 想像だけど「悪も貫けば華となる」、つまり「覚悟」を表しているんじゃないかな。だからひっそり店を開けようとした。
秋元 きっとそうですね。それにしてもたった4席とは。計り知れない覚悟を感じますね。
中田 食材ありきのスタイルは変わっていないですよね?
見城 ひとりで集中できるようになった分、確実に精度は高まっています。厨房の壁側に切る、焼く、揚げる、炊く、蒸すの道具が並んでいて。そのひとつひとつの工程に命を削るように向き合っているよ。
中田 じんわり染み入るピュアな料理はいつまでも心に残りますよね。予約しなくては!
水右衛門 虓/Mizuemon Kou
今までの顧客に不義理だと思われて店が傾くことになったとしても、それは料理人としての評価だと決めて誰にも招待状を出さず、ひっそりとオープン。しかし、情報が自然と漏れ、顧客から問い合わせが殺到、2026年末まで満席に。現在予約は受付けていない。
カウンターは6席あるが、開放しているのは1日4席のみ。ちなみに『水右衛門 虓』のメディア取材は、今回のゲーテイストが最初で最後とのこと。2024年2月『素材に挑む 虎ノ門COHの料理』を上梓。
住所・TELほか非公開
この記事はGOETHE 2024年7月号「総力特集:恍惚レストラン ゲーテイスト2024」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら