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2024.09.16

完璧主義は適応障害やうつになりやすい。期待値を下げ、ストレス耐性を高めよ

会社に行きたくない、不安やイライラが増えた、自信がなくなった……。そんなあなたの心のトラブル、もしかしたら「うつ」ではなく「適応障害」かもしれません。いま急増している適応障害の特徴とすぐに実践できる対処法について、『ストレスと適応障害』から一部を抜粋してお届けします。

「切り替え」は訓練できる!

ストレス耐性を高めるうえで、大切なことがある。それは、切り替えを上手にするということだ。

適応障害に陥り、うつになったときというのは、自分が(つまず)いた問題や降りかかってきた難題にとらわれた状態になっている。そのことを絶えず考え続け、切り替えてリラックスすることができない。いわれた言葉や心理的衝撃を頭のなかで引きずり続け、その言葉や場面が堂々巡りを続けている。

こうした反芻思考に陥りやすい人は、うつにもなりやすい。日頃から、反芻思考を防ぐ習慣を作っておくことも大事だし、反芻思考に陥ったとき、それを切り替える方法を知っておくことも大事だ。

まず心がけたいのは、日頃から切り替えの訓練をしておくことだ。切り替えの方法として、簡単だが有効なのは、体を動かしたり、場所を移動することだ。

職場から出て、自宅に帰る。30分以上の時間がかかったほうが、切り替えにはいい。その間も、いつも習慣にしていること(音楽を聴く、本を読む、情報をチェックする)をするのもよいが、瞑想したり仮眠をとると、さらに切り替えは進む。

自宅と職場が近いという場合は、意図的に徒歩や自転車で通うなどして、ある程度時間をかけると同時に、運動の要素を採り入れて、切り替えを助ける。

もう1つの方法は、反芻思考に陥らない思考習慣を培うことである。同じことを考えてしまいそうになったときは、こう自問する。

「このことを考えて、何か役に立つだろうか。何かプラスになるだろうか。結果を変えることができるだろうか」

よい結果を出すのに役に立つことなら、大いに考えたらいい。しかし、そうでないことなら、次のようにいい聞かせるのだ。

「考えても同じことは、考えるのをやめよう」

そして、その考えを吹き払う。大きく息を吐いてもいい。頭をブルブルッと振ってもいい。そうした儀式をすることで、切り替えを促す。「ストップ」と声に出す方法や輪ゴムパッチンを使う方法もある。

これらの方法は、思考停止法という認知行動療法の技法やその変法である。

100点ではなく50点で満足する

ストレスを減らし、うつにならないために大事なことは、完璧主義に陥らないことだ。うつになったり、自殺をしたりするリスクの一つに、完璧主義全か無かの二分法的思考がある。

二分法的思考というのは、全部よい完璧な状態は100点だが、少しでもダメだと、全部悪い不完全な状態になって、0点になってしまうという認知パターンだ。完璧にしようとするので、それだけ無理がかかるし、些細なミスやちょっとしたアクシデントでも全部が台なしになったように感じて、落ち込んでしまうことにもなる。

二分法的な単純化した思考では、善か悪か、真か偽かということは正反対のもので、中間がないように考えてしまうところが現実は、完全な善も完全な悪も存在しない。真か偽かという問題も、純粋科学という現実ではないイマジネーションの世界の話で、現実には普遍の真理などというものはほとんどみつかっていない。

全か無かの思考になると、どうしても極端に考えてしまう。極端な考え方ややり方というのはだいたい有害である。何事もほどよさが一番なわけだ。われわれが不幸にならないためにも、全か無かの思考に陥らず、ほどよさを目指すことが大事だといえる。

ほどよさを目指すには、どうしたらいいだろう。1つは100点ではなく、50点くらいで満足するように心がけることであり、50点くらいで感じられる喜びを大事にするということだ。

それは言い換えれば、期待値を下げるということである。人は自分が望む期待値と現実のギャップ分だけ、フラストレーションを感じる。期待値が高ければ高いほど、同じ現実に遭遇したとき、落胆やストレスも大きくなってしまう。

実際に完璧主義な人は、適応障害を起こしたり、うつになりやすい。100点をいつも目指していると90点でも、不満足な結果でしかない。いつも人に愛されたい、認められたいという承認欲求が強すぎる人は、人から些細な非難を受けただけでも、強い不安にとらわれる。それもまた、適応を阻害する。

100点ではなく50点で満足する。みんなから評価されることを期待するより、自分を評価する人もいれば、評価しない人もいて当然だと思う。実際、優れた人ほど風当たりも強くなり、中傷も増える。中傷は、存在感の裏返しだと思っておけばよい。

パートナーとの関係も100パーセントを求めると、足りないところだらけで嫌になるが、50パーセントくらいで満足するようにしていれば、60パーセントくらいだったときに大満足できるようになる。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:ストレスと適応障害
岡田尊司

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