ヴィンテージ専門店や有力コレクターの協力のもと、ヴィンテージロレックスの奥深い魅力を解説する本特集。第6回は、「コスモグラフ デイトナ」の手巻きモデルから、Ref.6239とRef.6265の初期モデルを紹介する。#1 #2 #3 #4 #5
パーツの整合性で評価が大きく変わる手巻きデイトナ
2023年で誕生から60周年を迎えるロレックス「コスモグラフ デイトナ」。その始まりである手巻きモデルは、およそ1963年~1980年代後半頃まで製造された。ヴィンテージロレックスのなかでも別格の人気があり、クオリティの高い個体に関しては価格上昇の傾向にある。ステンレススチール、イエローゴールド、さらにはジュエリーモデルなど含めると品番は10種類以上もあり、なかには極めて入手困難なモデルもある。
1960年代当時、腕時計式クロノグラフは防水性能に難点があり、「コスモグラフ デイトナ」も例外でなかった。この課題を克服するためにロレックスはねじ込み式のクロノグラフプッシャーを開発し、「コスモグラフ デイトナ」を唯一無二の存在へ押し上げた。
端的に述べると、手巻き時代の「コスモグラフ デイトナ」は未完成だったからこそ、試行錯誤の中から様々なパーツの仕様が生まれ、それが今日のプレミア化へ繋がっている。ここでは、非防水のポンプ式のクロノグラフプッシャーと、ねじ込み式のクロノグラフプッシャーの時代から、それぞれの実例を挙げてみよう。
注目ポイントはプッシャー。ポンプ式とねじ込み式とは
「コスモグラフ デイトナ」の記念すべきファーストモデルRef.6239は、ロレックス史上初めてベゼルにタキメータースケールを搭載したクロノグラフ。スリムなポンプ式のクロノグラフプッシャーに加え、ケースサイズは36.5mmと現行モデルと比べるとかなりコンパクトに感じられる。製造期間は1963~70年頃で時期によって外装パーツの仕様が異なる。
ダイヤルに「DAYTONA」の表記が入るのは、1964年頃から。この1964年製の個体の場合は、12時位置には「ROLEX」と「COSMOGRAPH」のプリントが入る。オリジナリティを見極める重要なポイントのひとつが針にあり、年式によって形状が異なってくる。平均時速300kmまで計測できるベセルが揃っていることも高ポイントだろう。
一方、プレキシガラス製ベセルのRef.6263とともに、ねじ込み式クロノグラフプッシャーを正式に初採用したのがステンレススチール製ベセルのRef.6265。防水クロノグラフとしての機能を確立できたこともあってか、製造期間は1970年初頭から1980年代後半とかなり長い。ポンプ式のクロノグラフプッシャーの時代と比べると、ケースのサイズも一回り大きくなる。
こちらの1972年製の個体に収められている「DAYTONA」の表記が入らないダイヤルのひとつである“マーク1ダイヤル”は、デイトナマニアがこよなく愛する希少なダイヤルだ。経年変化でダイヤルがブラウンに変色していることも評価に値する。
次に注目すべきポイントは、Ref.6265の特徴であるねじ込み式クロノグラフプッシャーだろう。マーク1型と呼ばれるグリップの溝が浅いタイプが装着されており、ブレスレットが交換されている点を差し引いても高評価されるべき1本である。
真贋の問題以前に、パーツの整合性を見極めることが非常に難しい「コスモグラフ デイトナ」の手巻きモデルは、状態が整った個体が市場から減りつつある。高値になるかもしれないが、納得がいく1本を見つけたらチャンスを逃さないように早めのチェックをオススメしたい。
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