ヴィンテージ専門店や有力コレクターの協力のもと、ヴィンテージロレックスの奥深い魅力を解説する本特集。第5回は、「エクスプローラー」のRef.1016と「エクスプローラーⅡ」のRef.1655を紹介する。#1 #2 #3 #4
定番を超える定番ロレックス「エクスプローラー」のヴィンテージモデル
「サブマリーナー」と同じく1953年に発表されたプロフェッショナルウォッチ「エクスプローラー」は、同年にジョン・ハント率いるイギリス遠征隊に所属するエドモンド・ヒラリー卿とテンジン・ノルゲイのエベレスト初登頂を受けて誕生した。
ロレックスは1930年代からヒマラヤ登山の遠征隊へ時計を提供しており、「エクスプローラー」が持つ過酷な環境に耐えられるツールウォッチとしての優れた機能は、冒険家たちの経験からフィードバックを得て開発されたものだ。3・6・9のアラビア数字を配したシンプルな文字盤は、今では時代を超越したアイコンとなっている。
シリーズ初の100m防水を達成したRef.1016は、1960年から30年近く製造され続けてきたロングセラーであり、今日ではヴィンテージウォッチとして親しまれている。そのなかからミラーダイヤルとマットダイヤルの希少モデルをそれぞれ紹介しよう。
Ref.1016の注目ポイントはダイヤルパターンの違い
1960年代初頭は、ロレックスが夜光塗料をラジウムからトリチウムに変更した時期であり、夜光塗料がトリチウムであることを記す様々な表記が生まれた。これはRef.1016についても当てはまる話であり、ラジウムを使用していたのはごく初期モデルに限られる。ダイヤルについては、ミニッツサークルを備えたミラーダイヤルであることを前提に、いくつものバリエーションが確認されている。こちらの1962年製の個体が持つダイヤルもそのひとつであり、6時位置にラジウム夜光のドット型インデックスが配置されている。
数あるRef.1016の歴代モデルでもひときわ個性を放つダイヤルがある。マットダイヤルの初期に作られた“マーク1ダイヤル”では、3・6・9のアラビアンインデックスの夜光塗料が太めに盛られたパターンが稀に見つかる。これらのダイヤルは、“ファット ルミナス”などのいくつかの通り名で呼ばれている。Ref.1016のマットダイヤルのなかでもずば抜けて希少性が高い。
人気急上昇「エクスプローラーⅡ」のRef.1655
近頃、価格高騰が著しい「エクスプローラーⅡ」のRef.1655についても触れておこう。1971年、洞窟や極地での探検のために開発された「エクスプローラーⅡ」は、24時間目盛り入りのベゼルと24時間針を装備し、前作の「エクスプローラー」よりも堅牢性・視認性などを格段に向上させている。注目すべきは、1970年代ならではのレトロスペクティブなデザインにあり、これこそがRef.1655の最大の魅力だと言っても過言ではない。全5種類のオリジナルのダイヤルのうち(交換用を除く)、こちらは最初期の“マーク1ダイヤル”であることに加えて、整合の取れた“マーク1ベゼル”が付く。さらには、貴重な付属品まで揃う狙い目の一品である。
単純にツールウォッチとしての機能だけで比較するなら現代の時計が確実に上回るが、ここで紹介した「エクスプローラー」シリーズの希少モデルは、それを補って余るヴィンテージとしての魅力がある。そしてレトロで趣のあるデザインはファッションとの親和性が非常に高い。「エクスプローラー」のヴィンテージモデルが時代を超えて愛され続ける理由はそこにあるのだろう。
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