流行が目まぐるしく変わる高級時計の世界で独自の存在感を放ち続ける、ヴィンテージロレックス。ヴィンテージ専門店や有力コレクターの協力のもと、気になる話題に触れながらその奥深い魅力を解説する。
世界的に評価されるヴィンテージロレックスの魅力
空前絶後のラグジュアリースポーツウォッチの人気の加熱から始まった世界規模の高級時計ブーム。これまでセカンダリーマーケットでは人気モデルの高騰が続いていたが、このところ下落傾向に転じ、市場は不透明感が増している。
そんな最中、安定した人気・資産性を持つヴィンテージロレックスの動向について、エンツォショップ・オーナーの中井一成さんは次のように話す。
「ヴィンテージウォッチは普遍的な魅力を備えている一方、市場や相場にはトレンドが存在します。ヴィンテージロレックスに関しては、コレクターの層が非常に厚いことから世界的にある程度の評価基準が定まっています。主には、パーツの整合性、個体のコンディションが該当するのですが、そこに希少性や経年変化などの要素が複雑に絡んで個体ごとの評価が決まっていきます」
ここでは、ヴィンテージロレックスの購入ガイダンスとなる5つのトピックスを前編・後編の2本立てで紹介する。
1.希少性と実用を兼ね備えた「コスモグラフ デイトナ」のRef.16520に注目!
「ヴィンテージの世界でも『コスモグラフ デイトナ』の人気は群を抜いていますが、この数年は王道の手巻きモデルだけでなく、自動巻きモデルのRef.16520への注目が高まっています。基本的にヴィンテージウォッチはパーツが交換されていることがほとんどですが、Ref.16520は1988~2000年に製造された比較的新しい時計ということもあって、状態が整った個体が見つかりやすいことも人気の理由に挙がります。とはいえ、一部のモデルはかなり希少で探すことが難しくなっています」
2023年で誕生から60年周年を迎える「コスモグラフ デイトナ」の歴代モデルにおいて、ロレックス初の自動巻きクロノグラフとなるRef.16520は識者からの評価が高い。搭載されたムーブメントCal.4030は、エボーシュ(汎用ムーブメント)をチューンナップしたもので、振動数を毎時3万6000回から2万8800回へ変更することで耐久性を高めつつ、メンテナンスをしやすい設計にアレンジされた。外装についても同じようなことが言える。プレキシガラス製ベゼルを廃止し、サファイアクリスタルの風防やリュウズガードを新たに採用することで一段と実用的に仕上げている。
「この時代に製造されたロレックスは、現行モデルに近い耐久性や防水性能があるので気兼ねなく使えるのが魅力です。この点からもRef.16520はオススメできますね。今ではマニアの研究からダイヤルは約7パターンに分類されています。見比べないと違いが分かりにくいかもしれませんが、こうしたディテールの微差で評価が大きく変わるのが、ヴィンテージロレックスの面白さなんだと思います」
2.定番として押さえたいロレックスの礎を築いた3大モデル
「コスモグラフ デイトナ」の人気が加熱する裏で、「サブマリーナー」「エクスプローラー」「GMTマスター」などのプロフェッショナルモデルの価格は横ばいで推移している。
「付加価値的な側面から捉えると、そのような話でまとまるかもしれませんが、どのモデルもロレックスの歴史を作り上げた傑作であることに変わりはありません。ヴィンテージらしい雰囲気を重視するなら、リファレンスナンバーが4桁のモデルから選んでみてはいかがでしょうか。マニアックな最初期モデルなども魅力的に映るかもしれませんが、ヴィンテージロレックスの基本に触れるという意味でも『サブマリーナー』のRef.5513、『エクスプローラー』のRef.1016、『GMTマスター』のRef.1675あたりから入るのがよいと思います」
“定番中の定番”と呼ばれる上記の3モデルは、いずれもロングセラーであったことから製造された時期によって、スペックやパーツの仕様に違いが出ている。特に文字盤については、1960年代中頃にかけて製造方法が変わり、ミラーダイヤルからマットダイヤルへと切り替わる。
「なぜ、ヴィンテージロレックスがこれだけ支持されているかというと、ブランドが築き上げた知名度やステータス性、時代を超えて愛され続ける傑出したデザインに加えて、ツールとしての優れた実用性を兼ね備えているからだと考えられます。これは、ポルシェの『911』、ライカのカメラなどのプロダクトにも通じる魅力だと言えます」
後編では、「手巻きデイトナ」「ブレスレット」「ゴールドウォッチ」について解説する。