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2022.06.12

パテック フィリップのヴィンテージウォッチ全39点が総額約26億円で落札!──連載「オークションから読む高級時計の行方」Vol.6

新興の富裕層を巻き込み、かつてない白熱した落札が繰り広げられる時計オークション。この連載では、ジャンルは一切問わず、高級時計のトレンドを占う注目の時計をフォーカスする。第6回は、2022年4月25日にサザビーズ・香港が開催した注目の時計オークション「The Nevadian Collector」を取り上げる。【連載 オークションから読む高級時計の行方】

連載「オークションから読む高級時計の行方」

©Sotheby’s

永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.2499の最高落札額が更新

去る2022年4月25日、「The Nevadian Collector」と題されたサザビーズ・香港が主催する時計オークションに出品されたパテック フィリップの時計はすべて、アメリカのネバタ州に在住するコレクターが所有するものだ。オークションの結果を述べると、全39点が完売(カタログには40点が掲載)。総額1億6237万8100香港ドル(日本円で総額約26億4350万円で落札)という驚異的な記録を残した。※4月25日時点のレートで1香港ドルを16.28円で計算

氏が約30年かけて収集したコレクションの主な特徴として、ゴールド製ケースに強いこだわりを持っていることが挙がる。パテック フィリップのヴィンテージウォッチにおいて、希少性という意味でならステンレススチール、あるいはプラチナ製のケースを無視することはできないが、それよりもあくまで自分らしいコレクトに重きを置いていることがこの点からもよく分かる。今回のオークションに出品された時計に限らず、氏が所有するコレクションはオークションの売買のみで築き上げられたことも特筆に値するだろう。

オークションに出品された39点の時計

オークションに出品された時計は39点すべてがゴールドケースである。©Sotheby’s

とりわけ偏愛ぶりを感じられるのが、永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.2499の貴重なコレクションだ。最注目の1本は、文字盤にイタリアの宝飾店「ゴッビ・ミラノ」のサインが入った1957年製のピンクゴールドケース。4人の電話入札者が6分間ほど入札を競い合った後、Ref.2499におけるオークションレコードを更新する6026万5000香港ドル(日本円で約9億81000万円)で落札された。ちなみに、永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.2499の約35年間で349本しか製造されておらず、第2世代のピンクゴールドケースは9本確認されており、Wネームにあたる時計はこの1本しか存在しないと言われている。

永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.2499 ピンクゴールドケース

永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.2499 第2世代ピンクゴールドケース(1957年製造)。©Sotheby’s

このほかにも3本のRef.2499が出品。同じ第2世代でも現存するのは世界で1本だけだと言われる夜光付きイエローゴールドケース(1958年製造)が2336万5,000香港ドル(日本円で約3億8038万円)、第3世代イエローゴールドケース(1965年)が882万香港ドル(日本円で約1億4358万円)、第4世代のイエローゴールドケース(1984年)が756万香港ドル(日本円で約1億2307万円)、この4本のみで合わせて約1億香港ドル(日本円で約16億2800万円)と、売上の半分以上を占める数字を出した。

永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.2499 イエローゴールドケース

永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.2499 第2世代夜光付きイエローゴールドケース(1958年製造)。©Sotheby’s

永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.2499 イエローゴールドケース

永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.2499 第4世代イエローゴールドケース(1984年製造)。©Sotheby’s

めったにお目にかかれないコレクターズピーズが続々と登場!

オークションのハイライトは、Ref.2499だけではない。1948年製永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.1518のピンクゴールドケース×ピンク文字盤の組み合わせは、14本しか生産されていないと言われることから一際注目を集めた。落札価格は、予想落札額の800万-1600万香港ドルを大きく上回る2276万香港ドル(日本円で約3億7035万円)であった。また「カラトラバ」の系譜にあたる1954年に製造されたピンクゴールドケースのRef.570は、138万6000香港ドル(日本円で約2256万円)で落札され、このリファレンスにおける史上最高額を更新した。

永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.1518 ピンクゴールドケース

永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.1518 ピンクゴールドケース(1948年製造)。©Sotheby’s

ラウンドウォッチ Ref.570 ピンクゴールドケース

ラウンドウォッチ Ref.570 ピンクゴールドケース(1954年製造)。©Sotheby’s

こちらの懐中時計も注目すべき逸品である。現存が1点しか確認されていない1957年製の永久カレンダー Ref.665/1のイエローゴールドケースは、ティファニーを通じて著名なコレクターに1958年に販売された来歴があり、352万8000香港ドル(日本円で約5743万円)で落札された。パテック フィリップの販売店とのWネームと言えば、ティファニーが圧倒的に有名だが、その他にもいくつかの例がある。スイスの宝飾店ギュベリンとのWネームの1946年製ワールドタイム Ref.605のピンクゴールドケースは予想落札額の6倍近い252万香港ドル(日本円で約4102万円)で落札された。

永久カレンダー Ref.665/1 イエローゴールドケース

永久カレンダー Ref.665/1 イエローゴールドケース(1957年製造)。©Sotheby’s

ワールドタイム Ref.605 ピンクゴールドケース

ワールドタイム Ref.605 ピンクゴールドケース(1946年製造)。©Sotheby’s

ここのところ、セカンダリーマーケットでは一大勢力であるラグジュアリースポーツウォッチの相場がやや下落の傾向にある。その一方で、パテック フィリップやロレックスを例に、一定レベルのクオリティが担保されたヴィンテージウォッチの価格が上昇しつつある。このようなトレンドからも分かるように、オークションを賑わす存在として、パテック フィリップのスペシャルピースはやはり見逃せない。

 

【連載 オークションから読む高級時計の行方】

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連載
オークションから読む高級時計の行方

インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。本連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。

TEXT=戸叶庸之

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