ワールドカップ北中米大会に出場した日本代表は決勝トーナメント1回戦でブラジルに1-2で敗れて、ベスト32で敗退した。10番を背負い、全4試合に先発したMF堂安律(フランクフルト)は、敗戦翌日に何を思ったのか。世界との個人能力の差を痛感したうえで、本気で優勝を目指してきたプロセスを誇った。【特集 2026FIFAワールドカップ】

「本気で優勝を目指したからこそ」4年間積み重ねた日本代表への自信
全身全霊を注いで4年間、準備してきた。決勝まで勝ち進めば8試合。日本代表が戦ったのは1次リーグ初戦のオランダ戦から4試合だけ。優勝を目指した戦いは、決勝トーナメント1回戦で幕を閉じた。
ブラジル戦で敗れた翌日。ヒューストン市内のホテルで取材に応じた堂安はすっきりとした表情で言った。
「本気で優勝を⽬指したからこそ1ミリでも1%でも世界に近づいたと僕は確信している。本気で⽬指さないと成⻑はない。全選⼿、全コーチ、全スタッフ、日本代表に携わる全員が同じ目標に本気で向かってきた。4年前よりは⼿応えのある⼤会だった」
堂安は、優勝を目標に掲げるチームを先頭で引っ張ってきた。皆が同じ熱量で優勝を目指す雰囲気を作り上げ、大会前には「ワールドカップ優勝と言った人が浮くような集団ではない。言わないと、逆に取り残される、そういう集団になれている」と手応えを得ていた。
今大会は4試合すべてに先発出場。右シャドーに入った1次リーグ最終戦のスウェーデン戦を除く3試合は右ウイングバックでプレーした。
1次リーグ初戦のオランダ戦ではFWガクポ(リヴァプール)、決勝トーナメント1回戦ブラジル戦ではFWヴィニシウス(Rマドリード)と対峙(たいじ)。相手の攻撃キーマンを相手に守備で奮闘した。
ゴールよりも勝利を優先。“エゴ”との葛藤を乗り越えた堂安律
大会をとおして献身的な動きでチームに貢献した一方、4試合無得点。守備にパワーを使うことを余儀なくされ、2得点した2022年カタール大会に続く2大会連続ゴールはならなかった。
「葛藤はありました。⾃分がやるべきことと、堂安律の⾃分なりの理想像は違う。ただ、これだけサッカー界にいれば、⾃分がどこまでやれて、どこからできないかというのもわかってくる。そのなかで⽇本代表のために何ができるかを考えたので、葛藤はあったけど、後悔はしていない」
かつては自我を全面に出し、先発から外れると露骨に不満を態度に表すこともあった。2022年ワールドカップに向けたアジア最終予選でメンバーから外されたことを機に、森保監督と腹を割って対話。指揮官から信頼を感じ、チームのために身を粉にする覚悟を固めた。
「森保さんは本当に偉⼤な⼈。僕は森保さんしか知らないので、歴代の⽇本代表監督と比べることはできないけど、僕の中では歴代最⾼の監督だと思っている。8年間一緒にやってきて、時間をかけて育ててもらった。だからこそ⼀緒に勝ちたかった。
一つ言っておきたいのは、自分はエゴを捨てたわけじゃない。チームのためにエゴを出すことは大事だと思っている。それほど⽛は抜かれていない」
「ブラジル代表に入れる選手はいるのか」敗戦で痛感した世界との差
ブラジル戦後は敗戦と向き合い「どうやったらブラジルに勝てたのか?」「他にやり方はあったのか?」など自問自答した。
ブラジル戦ではミドルブロックを敷き、ボールを奪ってからの速攻で勝機を見いだそうとした。ボール保持率は30%。主導権を握る時間帯もあったが、多くの時間を守備に割くことを前提とした戦い方でもあった。
堂安は言う。
「⽇本代表のなかで誰がブラジル代表に入れるかとなった時に“うーん”とクエスチョンになる。結局それが今の⽇本代表の答えなんじゃないかなと思う。だから団結⼒で戦う。今持っている⼿札、武器で優勝を⽬指した結果があの戦い⽅だったので、やりがいは感じていた。
4年後もベースは変えられないと思う。4年間でブラジル代表のようなメンツになれるかといえば、可能性は限りなくゼロに近いので。今の団結力をキープしながら個々が1%でも2%でも、そこ(ブラジル代表の個人能力)に近づく必要がある」
次回2030年ワールドカップは32歳で迎える。今後は今大会のDF長友佑都やサポート選手のDF吉田麻也のように、自身の経験を伝えていく立場にもなる。2度のワールドカップで得た教訓を日本代表の未来のために生かす。
堂安律/Ritsu Doan
1998年6月16日、兵庫県尼崎市生まれ。ガンバ大阪ユース時代に2種登録されて16歳でトップチームデビュー。オランダ1部フローニンゲン、PSV、フライブルクなどを得て2025年からフランクフルトに所属。日本代表は2018年9月のコスタリカ戦でデビュー。U-24日本代表で出場した2020年東京五輪は6試合1得点を挙げた。国際Aマッチ通算69試合11得点。1m72cm、74kg。左利き。

