2025年シーズン序盤で前人未到のJ1リーグ通算200完封を達成した、浦和レッズのGK西川周作。プロ21年目、大ベテラン域に入っても高いパフォーマンスを維持し続けられる理由は何なのか。独自の思考や調整法に迫った。#1

好きな言葉は「笑門来福」
GKにはマークのズレなどのミスが起きると味方の守備陣を鬼気迫る表情で怒鳴りつける選手が多い。あえて感情を表に出すことで、仲間に喝を入れてチームを引き締める意味合いもあるかもしれない。
ゴール前の最後の門番として失点の責任を背負うポジションであるだけに当然ともいえる行動だが、西川周作の場合は違う。好きな言葉は「笑門来福」。厳しい状況でも笑顔でいることを心がけている。
「笑顔でいれば、自分もそうですけど、周りに幸せを与えることも可能だと思っています。失点にはミスがつきもので、DFのミスで失点することもある。でも、人のせいにしないことは大事にしています。自分に矢印を向けて”自分は何ができたか””自分はどうすればよかったのか”ということを常に考えながらやってきました」
守護神の笑顔はチームに安心感をもたらす。失点の責任転嫁をせず、他の選手のミスが原因の失点さえも自分事として捉える姿勢はチームメートからの信頼を生む。
「ミスをしてもそれを次に生かせれば、そのミスが良かったと思える。そこで非難するよりはポジティブな方向に持っていく声がけをしていきたい。自分もそうして成長できた部分がある。今も、ミスした後に”何でミスしたのか”の分析を常にやっている。ミスをミスで終わらせないことが大事」
「チームに勝ち点をもたらすGKを目指す」
2025年シーズンがプロ21年目。トレードマークの笑顔は、長きに渡りJ1クラブの正GKを張り続けてきた秘訣でもある。
独自の調整法も目を引く。ベテランになればケガや疲労を考慮して練習量を落とす選手もいるが、逆に西川は30代前半からトレーニング量を増やした。
試合の間隔が1週間空く時はもちろん、ミッドウィークに試合の入る過密日程でも必ず1回は筋力トレーニングを入れる。
「キープするよりも成長する意識で1回でも多く筋力トレーニングを入れようという気持ちでやっています。もちろん体と相談しながらですが、その日の自分のベストなトレーニングをやりたい。トレーナーさんと常にコミュニケーションを取って、1週間あれば2回は体を触ってもらう。休むことがいいとは思っていないし、逆にやらなければ不安に感じることもあります」
体調管理のための水分摂取も独特だ。尿の透明度が高いほど体調が良い感覚があり「毎日、そこ(尿の色)は意識しています」とチェックを欠かさない。
毎食最低でも500mlの水を飲むことを習慣にしており「1日10Lぐらいは水を飲んでいるんじゃないですかね」と言う。
日本代表でもしのぎを削った同学年のGK東口順昭(ガンバ大阪)が2024年シーズンから所属クラブで正GKの座を明けわたし、川崎フロンターレで長きにわたり正GKを務めてきたGKチョン・ソンリョンも2025年シーズンは大幅に出場機会を減らしている。
JリーグでGKの世代交代が進むなか、西川はコンスタントにピッチに立つGKでは最年長となった。
「自分は試合に出ているGKでは年齢が一番上だと思う。いろいろな若手の選手が見てくれていると思うので、常に試合に出続けていいパフォーマンスで結果を残し続ける、チームに勝ち点をもたらすGKを常に目指してやっています」
J1通算出場試合数は歴代のGKで最多の644試合。次の試合で最高のパフォーマンスを発揮することが、その次につながっていく。
西川周作/ Shusaku Nishikawa
1986年6月18日大分県生まれ。大分トリニータの下部組織で育ち、2005年にトップ昇格。2005年ワールドユース(現U-20W杯)、2008年北京五輪など各世代の日本代表を経験。2010年にサンフレッチェ広島へ移籍し、2014年に浦和レッズに加入。Jリーグ・ベストイレブンを6度受賞。国際Aマッチ通算31試合。左利き。身長183cm、体重81kg。