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2025.05.15

W杯で優勝するために。サッカー・宮本恒靖会長「地上波での放送がすごく大事」

就任2年目を迎えた日本サッカー協会の宮本恒靖会長が掲げる政策の一丁目一番地が、「強い日本代表をつくり続ける」だ。2026年W杯北中米大会の目標を優勝に設定する男子日本代表を、最大限サポートすることを約束。自身の会長任期を超えた長期的な視点で、日本を世界のトップに押し上げる施策を打ちだしていく方針だ。

JFAの宮本恒靖会長

格上の相手とのマッチメイクに尽力

日本サッカー協会(JFA)が公表している宮本恒靖会長のマニフェストの冒頭には、「サッカーって日本でもっと大きな存在になれると思います。そうなっていかないといけないと思っています」との思いが綴られている。

これは2012年7月16日にホームズスタジアム神戸(現・ノエビアスタジアム神戸)で開催された、宮本会長の引退試合での挨拶のなかにある言葉だ。

欧州や南米のようにサッカーをもっと大きな存在にする――。その野望を実現するために欠かせないのが、「強い日本代表をつくり続ける」ことだ。JFAは2005年の宣言で「2050年までにW杯を日本で開催し、日本代表はその大会で優勝チームになる」と掲げている。

その宣言から20年。男子日本代表はW杯アジア最終予選を3試合も残して突破。開催国を除けば世界で最も早く2026年W杯北中米大会の出場権を手にした。

主力の大半が欧州クラブに所属し、リバプールやアーセナル、バイエルン・ミュンヘンといった世界的ビッグクラブでプレーする選手も珍しくない時代になった。森保一監督、遠藤航主将(リバプール)をはじめとするチームは、W杯での目標を優勝に設定している。

早々に予選突破を決めたことで、2026年6月のW杯開幕までに強化試合やキャンプ地選定などの事前準備に割ける時間的な余裕が生まれた。宮本会長は「チームからも力のあるチームと強化試合をやりたいという要望があるので、動いているところ」と、世界ランク15位の日本より上位国とのマッチメイク実現に向けて調整を進めている。

また、2025年12月12日のW杯抽選会前から本番のベースキャンプ地の選定も進めている。大会は米国、カナダ、メキシコの3ヵ国にまたがり、出場国も前回の32から48に拡大。時差もあるため、過去の大会以上に移動の負担が増すことが予想される。

W杯ドイツ大会での苦い経験

宮本会長は現役時代に2002年日韓大会、2006年ドイツ大会の2度のW杯に出場。2002年大会は静岡県袋井市の葛城北の丸でベースキャンプを張り、試合に集中できる隔離された環境で16強入りを果たした。

一方の2006年大会はドイツ西部のボンをベースキャンプ地にしたが、宿泊施設を貸し切りにできず、食事会場も窓のない地下。大会に集中することが難しい環境で、1次リーグ1分け2敗で敗退した。

現役時代の経験を「ベースキャンプ地の環境に心身のコンディションづくりが大きく左右されるな、というのはあった」と振り返り「抽選会を見据えて候補地を選ぶ作業はしっかりやらないといけない」との方針を示す。

競技面のバックアップとともに、国民の関心をサッカーに向ける環境づくりも重要になる。放映権料の高騰もあり、アジア予選ではアウェーでの試合が地上波で放送されず、映像配信サービスDAZNでの中継となった。

宮本会長は「近年は視聴方法が変化し、円安、放映権料の高騰もある。いろいろな要素が絡み合い、地上波でのテレビ放映が簡単ではないと認識しています」としたうえで、「サッカーが色んなところで流れている状況をつくりたい。座っていて、どこからかサッカーの試合の音が聞こえてくる環境にするには、やっぱり地上波はすごく大事だと思っています」と強調した。

現状では、日本にW杯開催に必要な収容8万人以上のスタジアムもない。宮本会長は「自分が会長を務める期間だけではなく、10年後や20年後、30年後、次の100年まで見据えたなかで、色んな策を打っていきたい」と力を込める。

JFAは1921年の設立から104年目を迎えている。48歳のリーダーは、歴史を積み上げてきた先人たちへの感謝を胸に、日本サッカー界の更なる飛躍に向けたタクトを振る。

宮本恒靖/Tsuneyasu Miyamoto
1977年2月7日大阪府生まれ。ガンバ大阪ユースから1995年にトップチームに昇格。2006年のリーグ制覇に貢献するなど12シーズン在籍した。その後はレッドブル・ザルツブルク(オーストリア)やヴィッセル神戸でプレー。2000年シドニー五輪、2002年W杯日韓大会、2006年W杯ドイツ大会に出場した。日本代表通算71試合3得点。2011年に現役引退後は国際サッカー連盟(FIFA)が運営する大学院「FIFAマスター」で、スポーツの歴史や経営学などを学んだ。2018~21年はガンバ大阪監督。2023年2月にJFA専務理事に就任し、2024年3月からJFA会長を務める。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=つのだよしお/アフロ

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