PERSON

2025.01.23

「なんか生きてんな」コーチ・長谷部誠、ぶち当たる“壁”との向き合い方

2024年5月に現役を引退したサッカー元日本代表主将の長谷部誠が、指導者として充実の日々を過ごしている。2024~25年シーズンからドイツのアイントラハト・フランクフルトU-21(21歳以下のチーム)でアシスタントコーチを務め、8月からは日本代表のコーチも兼務。現役時代とはまた違った課題にぶち当たっているという長谷部の、“壁”との向き合い方とは。

選手の時とはまったく違う視点でサッカーを見ている

目の前の壁をどう乗り越えるか。

2024年5月に現役を引退して指導者の道に進んだサッカー元日本代表の長谷部誠は、新たな挑戦に悪戦苦闘しつつも自らが置かれた環境を楽しんでいる。

「新しい道に進んで日々、壁にぶち当たっている。できないこと、上手くいかないことが非常に多い。逆にそれが楽しいというか、新鮮というか、自分にとっては“なんか生きてんな"みたいな感じがありますね」

現在はドイツ4部相当のリーグに在籍するアイントラハト・フランクフルトU-21(21歳以下のチーム)のアシスタントコーチとして、主に20歳前後の選手を指導。国際試合の期間は日本代表のコーチを務める。

フランクフルトU-21では現役時代と違い、朝から晩まで練習場に詰めて勉強の日々。失敗や新たな発見の多い生活は刺激に満ちているという。

「選手の時とは全く違う視点でサッカーを見なければいけないので、そういうところの難しさがある。コーチングで上手く言葉が出てこなかったり、試合の中で相手の出方への対応を瞬時に判断できなかったり。(コーチ業を)始めたばかりなので当たり前だけど、日々勉強ですね」

自分に何ができるかを常に考え、壁を乗り越えてきた

日本代表の主将として、2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会の3大会連続でワールドカップに出場。キャプテンでの国際Aマッチ出場試合数は、日本歴代最多81試合を数える。

雰囲気の悪い時などに選手によるミーティングの開催を呼びかけるなど、現役時代からチームマネジメントにも気を配っていた。だが、コーチの立場からのチームビルディングへの関わり方は別物だと認識している。

「選手は戦術や戦い方を決めるものではないので、選手の時とコーチではまったく違う。例えば今は監督に進言するとか、そういうこともやる立ち位置だと思っているので」

2002年に浦和レッズでスタートしたプロのキャリアは22年。プロ1年目はカップ戦1試合の出場にとどまった。

2008~2013年に在籍したVfLヴォルフスブルクでは、鬼軍曹の異名を持つフェリックス・マガト監督の猛練習に耐えたが、移籍を画策したことで干された時期もある。

2013~2014年に所属した1.FCニュルンベルクではケガで長期離脱を強いられ、チームは2部に降格。歴代7位の通算114試合に出場した日本代表を含めて、数々の修羅場を経験して苦難と向き合ってきた。

プロ入り当初は縦への推進力のある攻撃的な選手だったが、欧州移籍後は厳しい生存競争を勝ち抜くために、プレースタイルが変化。ボランチから後ろならどこでもできる守備的な万能選手になった。

2014年から引退までプレーしたフランクフルトでは、確固たる地位を確立。キャリア終盤は円熟味を増したプレーを見せ“カイザー(皇帝)"と称されるまでになった。2023~2024年シーズンのラストマッチで記録した40歳4ヵ月でのブンデスリーガ出場は、フィールド選手では歴代5位の年長記録だ。

「サッカー選手としてはある程度の年齢がいったら、なんとなく掴めてきた部分が多くて、壁にぶち当たる局面も少なくなった。新たに挑戦している指導者の道は簡単なものではないので、また、それを掴みにいくところをコツコツとやっていきたい」

2025年1月18日に41歳の誕生日を迎えた長谷部だが、気負いはない。

「年齢はそんなに気にしていません。この1年も楽しみたいなと思います」

欧州サッカー連盟(UEFA)の指導者最高資格であるUEFAプロライセンスの取得を目指して、トライ&エラーを繰り返す姿は、生き生きとしている。

長谷部誠/Makoto Hasebe
1984年静岡県生まれ。藤枝東高校卒業後、浦和レッズに入団しプロデビュー。2008年にドイツ1部リーグのVfLヴォルフスブルクに移籍。その後2013年に1.ニュルンベルク、2014年からアイントラハト・フランクフルトでプレー。2024年に現役を引退した。著書『心を整える。』は150万部以上のベストセラー。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=YUTAKA/アフロスポーツ

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