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2025.05.05

投資家ボビー・オロゴン「1年の半分近く海外を飛び回っている」その理由とは

タレントとして活躍する傍ら、起業家・投資家としても独自の視点を持ち実践を重ねてきたボビー・オロゴン氏。父親から受け継いだビジネス観を軸に、リスクを恐れず新たな挑戦を続けるその原動力とはどこにあるのか。第3回。

タレント、実業家のボビー・オロゴンさん

データに頼るだけではアドレナリンは出ない

ここ数年、1年の半分近く海外を飛び回っているというボビー・オロゴン氏。そのほとんどが投資をする国の事前調査だという。

「つい最近もインドに行きましたが、投資をするからには、まずその地を知るべき。数字上のデータではなく、自ら足を運ばないと。誰かに聞いた情報だけで動くのでは、自分は納得できないんです」

現地に赴くにあたっての膨大な事前調査も人任せにせず、自らチェック。もちろん税金や法律などいろんな問題も出てくるが、そんな障壁も自分自身のチャレンジと捉えている。

もちろん日本にいても海外への投資はいくらでもできる。「でも、それではいい買い物はできません」とボビー氏は語る。

「だって数字だけみていて、アドレナリンが出ますか? 僕はそんなのじゃワクワクしない。海外に行くことで、その土地の文化やマーケットを肌で感じることができる。それなのに、何も知らずに海外の株を買ってその値が上がったと喜んでいる投資家はまだ甘い。数字だけみて喜んでいるのって、僕は“小さい泥棒”って呼んでいるんですよ(笑)。単に数字を盗んでいるだけみたいでしょ。投資にリスクはつきものですが、実際に現地を見ることで、いいリスクを見分ける肌感も身につくのではないかと思います」

タレント、実業家のボビー・オロゴンさん

世界を巡り体感することで得られる投資感覚

短い滞在であっても、世界に足を運ばなければ、わからないことはたくさんある。そしてすぐにその知識が活かせなくても、その体験は確実に自分の糧になるはず。まさに自分自身への無形の投資ともいえるだろう。

世界を客観的に見るというボビー氏の考えは、投資をするなら世界中に分散投資してポートフォリオをつくるべきだという考えにも表れている。

「バランスをとるには、やっぱり世界を知るべきなんです。ある貨幣の価値が下がっても、別の貨幣は上がっている可能性がある。日本で貯金が3000万あっても不安だという人はたくさんいますが、違う国に行ったら死ぬまで楽に生活できる。そういう可能性を知らないから不安になったり、幸せの価値観の違いもわからないままになってしまうのではと思います」

言葉さえわからない日本に暮らし、極貧時代も経験。芸能界の栄光や儚さも知り尽くしてきたなか投資を続けてきたのは、芸能界の不安定さなどから来る不安に裏打ちされたものなのだろうか?

「いえ。ビジネスにして芸能にしても、不安になったことはまったくないんです。ただしそれは、ライフラインとなる部分をちゃんと固めていたから。お金がなかった時から変わらないんですが、どんなことがあっても稼ぎの30%は絶対に触らず貯金する。お給料が20万だったら、7万は最初からないものとして考える。その30%を半年間積み上げたら、もし仕事が急になくなってもしばらくは生活できますよね。また投資で言えば、短期で堅実に利益を生むものを必ず持っておく。資産はいろんな形で分散して持っておくと、いざという時も安心です」

その堅実さも父親から言われてきた言葉がきっかけとなっている。

「大きいお金を狙うよりも、コツコツと小さく始めることの方が結果的に大きくなる。お金がないならないなりに少額で投資を始めればいい。一発当てようなんて考える人はお金持ちにはなれないって、散々言われてきたんです」

そんなライフラインがあるからこそ、新たな挑戦も可能になる。

2025年7月に東京・大阪・沖縄で開催される日本初のアフロビートフェス「AFRO JAM 2025」のプロデュースや、閉鎖された工場を買い取り、物づくりをする人に無償で貸し出す“シェアファクトリー”も展開予定だそうだ。

投資を始めるならまずはニワトリを飼え!

「誰かのお金を預かって投資するのは苦手だし、あくまでも自分のお金で自分の身体で体験するべきというのが僕のスタイル」というボビー氏だが、「投資のノウハウを教えて」と言われたら、必ず薦めることがあるそうだ。

「まず、ニワトリを飼えって言いますね(笑)。僕も飼っていますがニワトリを飼えない人は投資できないと思うんです。例えば、ひよこ1羽の金額って知っていますか? バラつきはありますが、今だと大体平均して340円。ニワトリになって初めて生む卵は栄養も豊富で味も濃厚なので、1個約500円で売れるんです。

もし不動産とかで1000万を投資して100万儲けたら、みんな喜びますよね。でも、僕は『利回りたった10%じゃねーかよ』と思うわけです。それより僕は340円投資して500円返ってくる方がよっぽど嬉しい。150%ぐらいの利益だから(笑)。そういう意識を持つことが大事だと思います」

そして最後に、子どもの頃からずっと父親に言われてきた言葉を教えてくれた。

「ビジネスは木と同じ。地上で見える以上に地下の根は深く広い。見えない根がしっかりしていないと、軽い風でも倒れてしまう。そしていつか嵐も必ず来る。だからコツコツと根も幹も丈夫にしておけば、絶対に倒れることがないと信じています」

エンターテインメントと投資というまったく異なる世界での活躍を続けるボビー氏。そのユニークな個性と新たな挑戦は、ビジネスの師である父の教えを礎に、自らの卓越した実行力によって、まだまだ進化し続けるに違いない。

タレント、実業家のボビー・オロゴンさん
ボビー・オロゴン/Bobby Ologun
1973年ナイジェリア生まれ。ナイジェリアの国立大学を卒業後、1995年に初めて日本へ。1998年に再来日。2001年TBS『さんまのSUPERからくりTV』の街頭インタビューを受けた際、微妙に間違う日本語での会話が注目され、レギュラー出演へ。その後もユニークな日本語や明るいキャラクターで、一世を風靡した。また、経営者や投資家としても活躍している。

TEXT=牛丸由紀子

PHOTOGRAPH=太田隆生

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