ボビー・オロゴン氏の投資家としての成功は、幼少期のユニークな体験が大きく影響しているという。芸能活動に留まらず、不動産やFXなど多岐にわたる投資分野で成果を上げる彼の原点とは? 第2回。

動物の売買でお金を生む価値を実践的に学んだ
もともとビジネスをするために日本を訪れたボビー・オロゴン氏だったが、実際に投資を始めたのは、いつどんなきっかけだったのだろうか?
「今考えると3歳ぐらいだったと思います (笑)。僕の兄貴がやんちゃ小僧で、僕のご飯を勝手に食べちゃうし、貯金していたお小遣いも油断すると全部使われちゃう。そこでお金を手元に残さないよう、ハムスターに換えたんです。雄と雌で買ったのですが後に子どもを産んで、それが売れたんですよ。お金で何かを買って、それがお金を生む。まさに人生で初めての投資の成功体験でした」
子どもなりのやり方で確実かつ安全な方法で利益が生みだせることを知ったボビー少年。物を生む価値、お金を生む価値を実践的に学んでいった。
「うさぎも買いましたね。ハムスターよりも多産だから、もっと利益率が高い。その後もどんどんグレードアップしてニワトリやヤギ、牛も購入していきました。ただ、鶏は学校から帰ってきたらお母さんが鍋の材料にしちゃったことがあって、ちょっと悲しい気持ちになりました(笑)」
ビジネスマンの師である父の教え
そんなボビー少年を見守っていた父だが、7歳になるころには自身が経営する会社に連れていってくれるようになった。
「会社ではお金を数えさせられました。会社のお金だからもちろん大きな束もあるし、数えるのが大変で。でも『このお金を稼ぐ方がもっと大変だから頑張れ』と言われました」

1973年ナイジェリア生まれ。ナイジェリアの国立大学を卒業後、1995年に初めて日本へ。1998年に再来日。2001年TBS『さんまのSUPERからくりTV』の街頭インタビューを受けた際、微妙に間違う日本語での会話が注目され、レギュラー出演へ。その後もユニークな日本語や明るいキャラクターで、一世を風靡した。また、経営者や投資家としても活躍している。
常に現場の仕事や行動を通して、ボビー氏は父からさまざまなことを学んだ。
「お父さんは何台もいいクルマを持っていたので、僕が14歳ぐらいの時、外に停めてあったクルマを運転してガレージの中に入れてあげたんです。そうしたらお父さんが『お前、運転できるようになったのか?』と聞いてきたから、『もしかしてどれか1台譲ってくれるのかな』って期待するでしょ。でも、『じゃあ自分で買えるようにもっと頑張りなさい』って言われました(笑)。ちくしょーと思う反面、絶対稼げるようになっていいクルマを自分で買ってやるぞって心に誓いましたね」
父にとってみれば、そう伝えれば息子はきっと発奮するだろうと、ボビー氏の気質を見抜いての言葉だったのかもしれない。
また、オロゴン家では父は絶対的存在。子どものころ、父と子の食事は雲泥の差だったという。
「お父さんの食事はすごくいいもので、子どもは大したものが食べられない(笑)。でも結果的にはそれがよかったんですよね。一生懸命勉強して、頑張って大人になってお父さんみたいな美味しいご飯を食べたい。そういうモチベーションが湧いてきたので」
ボビー氏の父親は、当時家は土で建築するのが普通だったナイジェリアで、初めて地元にセメント工場をつくり大成功を収めた経営者であり、同時に海外を飛び回る貿易商でもあった。海外を飛び回る父からは、異国の地の文化や情景などさまざまな話を教えてもらった。
「海外から帰ってきた父に呼ばれると、行った国の文化やどんな仕事をしてきたのか、この国ではどんなモノが売れたかといった、あらゆる話をしてくれました。ただ子どもだったし、なぜ僕にこんな話をするのかと思っていたんですが、自分が海外に行くようになって、その時の知識が役に立っています。見たことのない世界を教えてくれた、その影響は大きいと思います」
有能なビジネスパーソンである父親が直接ビジネスや異国の文化、マーケットを教えてくれる。知らず知らずのうちに、起業家の英才教育を受けていたと言っても過言ではないだろう。
子どもにこそ伝えるべきお金と仕事
小さな時からの経験が今の仕事にも生きているというボビー氏だが、日本の教育でも投資教育は必要だと考えている。
「日本だと、子どもの前でお金の話はタブーみたいな雰囲気はありますよね。僕の考えはまったく逆。社会に出るために絶対に必要なんだから、もっと教えるべきだと思います。日本の教育では、子どもに教えることが何十年も変わっていない気がするんです。ビジネスの世界なら、10年前の常識はもう古くて通用しないのに。
もっと気になるのが、学校が子どもが失敗しないように育てること。社会にでたら、失敗しない限り成功にはつながらないでしょ。失敗して学ぶことはすごく多いと思います。
学校がそれを教えてくれないなら、父親が自分の仕事や社会の仕組みを家庭で子どもに積極的に話したりするだけでもいいと思うんです。子どもの頃に教えてもらったことは今でも覚えているし、自分の考え方の基礎になっている。すごく貴重な経験だったと思います」
父の教えとユニークな子ども時代の体験を通して、世界や社会、そしてお金を学んだボビー氏。第3回ではそんな原点を礎に、どんな投資哲学を築き成功していくのかを紐解く。
