PERSON

2025.02.04

ジョッパーブーツ、海軍バッグ。人気デザイナーが心惹かれる、私物コレクションを公開

「身なりは人を表す」というように、辣腕の経営者が愛用する靴や鞄は、持ち主の人生哲学や思想を如実に表しているものだ。今回は、オールドジョー デザイナー・髙木雄介氏のアイテムから垣間見える仕事哲学を、いざ拝見! 【特集 靴と鞄】

髙木雄介氏
髙木雄介/YUSUKE TAKAGI
1979年香川県生まれ。2008年に設立したオールドジョーは国籍や年代を問わず、古き良き文化との邂逅によりデザイン、制作される。自社での生産工程にこだわり希少性の高いものづくりを貫く。ヴィンテージカルチャーだけでなく工業製品から工藝、骨董などにも精通。写真のデスクはピエール・ジャンヌレ、抽象画は陶芸家の辻村史朗氏によるもの。

ものが持つそのストーリーに惹かれて、鼓舞される

「この鞄、見てください。丁寧に編みこまれているでしょう? 1940年代頃アメリカ海軍の海兵が船上で編んだものです」

国籍、年代を問わず古き良き文化との邂逅をインスピレーションにアパレルプロダクトを手がけるオールドジョーの創設者であり、デザイナーの髙木雄介氏はそう言って、普段デザイン画を描いているスタジオでその鞄を取りだした。10年以上前にアメリカ東海岸で見つけたという。

「船に乗る間、海兵たちはロープワークの練習の一環でバッグやアクセサリー制作をしていたそうです。そして母国に戻ったらそれを家族や恋人のお土産にしていたとのこと。厳しい戦時中の環境で誰かを想いながらつくった。そんな純粋なストーリーに心惹かれてしまいます」

1940年代の海軍のロープワークバッグ
ロープを交差させて編む「マクラメ」という技法でつくられた鞄。海兵たちにとってロープをうまく結べるかどうかは命に関わるゆえ、その技術は高く、ストイックに編みこまれている。

普段は使わず、アトリエにしまい込んでいたが、ある日スタジオでデザインを考えていた際にふとその存在を思いだした。

「私はストーリーのあるものにロマンを感じるので、自分もそういうものを生みだせたらなと日々考えています。スタジオでデッサンをしている際にこの鞄の存在を思い出し、向き合ってみたんです。するとなぜだか再び引きこまれてしまいました」

どう編みこまれているか、職人さんたちとこの鞄を見ながらデザインを再現、2025年春夏のオールドジョーのコレクションにこの鞄から着想を得たバッグを登場させることにした。

「私は投機目的でヴィンテージと向き合ったことはありません。この鞄も市場では需要がないとされているのか、かなり安い金額で手に入れました。けれど私にとってものの価値は希少性よりもユニークなストーリー性。そこに突き動かされてものづくりをしてきたなと、改めて気づかせてくれた鞄です」

自分の生活すべてがデザインの糧になる

普段は自分がデザインしたものを身に纏うことが多い髙木氏。「だから履かないんですけど」と笑いながら見せてくれたのは、1950~’60年代と思われるカーフスキンのジョッパーブーツだ。

「このフォルムの美しさに驚きました。すっと細長い優美な木型、また見るからにオイルが潤沢に含まれている美しい革。特に磨いてはいないのに、こんなに艶々しているのですから」

デナーのジョッパーブーツ
そのフォルムの美しさに感動した1950〜’60年代のデッドストック。「パラシュートブーツで著名なアメリカのメーカーがつくった英国なデザインという意外性に惹かれたのかもしれません」

ドイツ系移民がアメリカで立ち上げた、知る人ぞ知るブランドのデナー。英国イメージのあるジョッパーブーツだが、アメリカ製というユニークなストーリーも気に入っている。

「私は洋服のパターンも見ますから、ストーリーとともにもののシルエットはとても気になるし、インスパイアされます。でもそれはヴィンテージクロージングに限らず生活すべてで。たとえば工藝品やアートピース、景色などを見て『いいフォルム、いい肌感しているな』と思ってそれが自分のものづくりに無意識に出てしまう事もある」

古く美しい物語を持ったものを見続けてきたからこそ、日常を見つめる目もまたクリエイティヴなのだ。

【特集 靴と鞄】

この記事はGOETHE 2025年3月号「総力特集:自分らしくいる、靴と鞄」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=廣瀬順二

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