「身なりは人を表す」というように、辣腕の経営者が愛用する靴や鞄は、持ち主の人生哲学や思想を如実に表しているものだ。今回は、U-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEO・宇野康秀氏のアイテムから垣間見える仕事哲学を、いざ拝見! 【特集 靴と鞄】
自由と個性を表し会話のネタにも社風を自ら体現する
「愛用の靴と鞄を見せていただけませんか?」とのリクエストに、U-NEXT HOLDINGSの宇野康秀CEOが取りだしたのは、アグレッシブで攻めた面持ちの鞄とブーツ。想像を遥かに超えたインパクトに、その場にいた全員の視線がこの2点に釘付けになったほど。
「セリーヌの鞄は、3年ほど前に表参道の旗艦店に並んでいたのを見て、ひと目惚れして購入したものです。日本には2点だけの入荷で残りのひとつだったのと、この頑丈さなら暴漢に襲われても護身用として役立つかな……というのは冗談ですけれど(笑)、今は大きな財布を持たなくなり、スマートフォンがあればすべて事足りる時代になりましたから。このサイズでも機能的にはまったく問題ありません」
メタリックのクロスボディバッグはコンパクトながらも、中のコンパートメントには手持ちのスマートフォンやカード類が余裕で入る。モダンなフォルムはスーツやジャケットにもマッチ。何よりも相手から「それ、なんですか!?」とたずねられることで会話が弾み、絶好のカンバセーション・ピースになるという。
そしてもうひとつの衝撃アイテムであるブーツは、アッパーに多種多様なピアスが配されたパンキッシュなルックス。「たまにピアス同士が絡んで転びそうになるんです」と笑いながら、自身の思い入れと偶然につながったというブーツとの出合いを宇野氏はこう語る。
「このブーツはバレンシアガの表参道店で1年前に見つけたもの。ちょうどこの時は、自分が製作として参加し2008年に公開した、金原ひとみさんの小説『蛇にピアス』の映画のリブート版を製作できないものかと密かに構想していた頃でした。そんななかでこのブーツを見つけたものですから、運命的な出合いを感じて、思わず衝動的に買ってしまいました」
試しに宇野氏に履いてもらうと、ジャケットスタイルにブーツは違和感なくなじむ。会社でも常にカジュアルで、靴や鞄も「カブりたくないので、他の人が持っていないようなものを選ぶ」という宇野氏だが、クローゼットにはモノトーンのアイテムが並ぶということからもわかるように、“着道楽”の美学とセオリーが、太く一本、貫かれていることがよくわかる。
自分なりの個性を表現して会社でも自由であってほしい
トップが率先して自分らしいスタイルをしているように、社員の服装も基本的には自由。そこには、宇野氏の想いが色濃く反映されているようだ。
「2018年に本社オフィスを移転した際に、服装は限りなく自由にしようと決めました。それで各々の個性が表れるのだとしたら、自分が目指すオフィスのあり方や働き方に近づくような気がして。もちろんTPOは大事ですが、仕事に直接影響しない部分では、なるべく自由であってほしいし、これからの時代はそうあるべきと思っていますから」
ファッションが持つ社会的な底力と影響力は、ビジネスの場でも大いに発揮されている。
この記事はGOETHE 2025年3月号「総力特集:自分らしくいる、靴と鞄」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら