Jリーグからベルギー、ドイツを経て、イングランド・プレミアリーグの名門リバプールに移籍した、遠藤航のインタビューをまとめてお届け! ※2024年8月掲載記事を再編。
1.サッカー日本代表・遠藤航「僕がキャプテンをするのは必然」
(シュツットガルトでキャプテンをしていたとき)いざ、シーズンが始まって、若い選手が多いクラブゆえに「もっとここで集中しよう!」「しっかり練習をしよう」と言いたくなることが何度もありました。
けれど(僕は)一度も、そういったことを口にしませんでした。
理由はいろいろとあります。経験的に「悪いとき」に「喝」を入れるのは誰でもできて、逆にネガティブに働く可能性があること。何かを言うならむしろ「いいとき」に言うべきだ、と思っていたこと……。(遠藤航・著『DUEL』)
日本代表のキャプテンを務めるようになってから、「キャプテンシーについて」や「リーダーとは?」みたいな質問を受けることが増えました。
みんなで「優勝」と口を揃えて挑んだ2023年のアジアカップでベスト8どまりになった頃には、メディアやサポーターのなかでも僕のキャプテンシーが足りないという意見があった、とも聞いています。
結果が出なかったのだから、その意見は重要です。あとは、僕が変える(変わる)か、変えない(変わらない)のか……。
自分のキャプテンシーに疑問を向けられたことは、これまでもあります。冒頭に紹介した僕の本の一節は、ドイツ・ブンデスリーガのシュツットガルト時代の話。
チームがなかなか勝てず、キャプテンである僕はメディアから「もっと怒るべきだ」とか「発信力が足りない」といった批判を受けました。地元紙から直接インタビューをされたこともあります。実際に書かれたトーンと違って、話している時は「キャプテンも大変だよね」みたいな感じだったんですけどね……(苦笑)。
2.「リバプールのレベルにない!」遠藤航はその批判をどう思っていたのか
「ステップアップリーグへの遅い移籍」
僕の選択はギリギリの判断だったかもしれません。
けれど、その後の僕は「ステップアップできている」という実感を持てています。
ベルギーのシント=トロイデンからブンデスリーガのシュツットガルトへの移籍、そのチームではキャプテンを務め、さらには二年連続「デュエル勝利数1位」を実現させてくれました。
(南野)拓実も超ビッグクラブのリバプールへとステップアップし、いまでは日本代表の中心選手としてともに戦うようになりました。お互い、苦しい経験をしていたからこそ、カタールワールドカップ出場を決めたオーストラリア戦後の会話はとても感慨深いものがありました。
ともにまだまだ上がるべき階段はありますが、少しずつ成長できていると思います。
「正解を作らないこと」。ここをスタートにすることが、大きな成長のチャンスになると実感しています。(遠藤航・著『DUEL』)
2022年に出した『DUEL』という本で書いた一節です。同世代の拓実とはリオデジャネイロ五輪でともに戦い、その失意の敗戦について語り合いました。詳しくは本書に譲りますが、「このままじゃ、誰もステップアップできない」と。
同じような話はシント=トロイデンの頃の(鎌田)大地、冨安(健洋)ともしたことがあります。シント=トロイデンというクラブに対しては言い尽くせないほどの感謝がありますが、その環境は決して恵まれたものではありませんでした。
当時、一緒にプレーしていた大地と冨安と「こういう環境でしっかり結果を出して、いつかプレミアリーグでできたらいいね」と言い合いました。
イングランドのプレミアリーグはサッカー選手なら誰もが憧れる最高峰のリーグで、レベルはもちろんのこと、サッカーをするための素晴らしい環境が整っていると聞いていました。それが今シーズン(2024-2025年)にかなったことはすごいことだなと実感しています。
3.遠藤航「周りの声は関係ない。“タイトルを取る”ために行動するだけ」
「当落線上という立場に関係なく、代表として、勝つために当たり前のプレーをする」ことを心掛けました。
ロシアワールドカップ前にハリルホジッチ監督は解任されましたが、その後の西野監督にメンバーとして選んでもらったのは書いたとおりです。ただ、当時の「当落線上」と、選ばれたときの「当落線上」では、明らかに心構えが変わっていました。
ワールドカップで試合に出られるかはわかりませんでしたが、チームが勝つためにピッチ内でも、ピッチ外でも自信を持ってふるまう。
いつだってチームのために、というベースが確固たるものとなり始めた瞬間です。
どんな人であれ、どんなチームであれ「立場」や「役割」は必ず存在します。それを与えられることによって「言われたことをやろう」と、アクションにフォーカスできます。
ただそのとき、「立場」に縛られてはいけないと思います。特に成長を願うのであれば、置かれた立場の中で求められていることと、本当に必要なことをしっかりと判断しなければ、逆に成長を止めてしまう可能性があるのです。(遠藤航・著『DUEL』)
イングランド・プレミアリーグのリバプールに移籍してプレーし、今シーズン(2024-2025年)のチャンピオンズリーグを戦う権利も手にした。日本代表のキャプテンにもなった。
もちろん、まだまだ足りないところを補っていく努力は必要ですが、2023年から今にいたるまで、子どもの頃「こうなりたい」と思ったことを次々と実現できた、自分でもびっくりするような時間を過ごしています。
でも一方で、「成長意欲」というこれまで自分の原動力となってきたモノについて、この先どう向き合っていくかを考えるようになりました。
リバプールでリーグ優勝をしたい、チャンピオンズリーグで優勝したい、さらにはワールドカップで優勝したい……。
いずれも実現したい目標です。ただ、それは並大抵のことでは成し遂げることができません。
当然ですが、僕ひとりの力で実現できるものでもないし、自分が成長するだけで成し遂げられるものでもない。自分が力がおよぶ範囲、限界みたいなものは理解しているつもりです。
これまでは、成長したいという思いをわかりやすいカタチで目標にできていました。ビッグクラブに移籍する、デュエルで1位となる、など。
そこに到達できたとき、次はプレーの質が成長の証になりました。前回(第2回)話したように、「リバプールのレベルにない」などと言われないようにする、そしてチームの勝利に貢献する。まだ1シーズンではありますが、自分なりに手ごたえを感じました。
でも同時に、今度は達成したい目標が、自分の力だけではどうしようもないものとなったんです。