各カテゴリーの日本代表、湘南ベルマーレ、ドイツ・ブンデスリーガのシュツットガルトなど、サッカーを始めてから多くの時間を「キャプテン」として過ごしてきた遠藤航。そんな遠藤が考える、「自分なりのキャプテンシー」とは?
チームが勝てないときは批判されてきた
(シュツットガルトでキャプテンをしていたとき)いざ、シーズンが始まって、若い選手が多いクラブゆえに「もっとここで集中しよう!」「しっかり練習をしよう」と言いたくなることが何度もありました。
(遠藤航・著『DUEL』)
けれど(僕は)一度も、そういったことを口にしませんでした。
理由はいろいろとあります。経験的に「悪いとき」に「喝」を入れるのは誰でもできて、逆にネガティブに働く可能性があること。何かを言うならむしろ「いいとき」に言うべきだ、と思っていたこと……。
日本代表のキャプテンを務めるようになってから、「キャプテンシーについて」や「リーダーとは?」みたいな質問を受けることが増えました。
みんなで「優勝」と口を揃えて挑んだ2023年のアジアカップでベスト8どまりになった頃には、メディアやサポーターのなかでも僕のキャプテンシーが足りないという意見があった、とも聞いています。
結果が出なかったのだから、その意見は重要です。あとは、僕が変える(変わる)か、変えない(変わらない)のか……。
自分のキャプテンシーに疑問を向けられたことは、これまでもあります。冒頭に紹介した僕の本の一節は、ドイツ・ブンデスリーガのシュツットガルト時代の話。
チームがなかなか勝てず、キャプテンである僕はメディアから「もっと怒るべきだ」とか「発信力が足りない」といった批判を受けました。地元紙から直接インタビューをされたこともあります。実際に書かれたトーンと違って、話している時は「キャプテンも大変だよね」みたいな感じだったんですけどね……(苦笑)。
キャプテンの仕事はブレずに導くこと
キャプテンシーとは何か。その答えはわかりません。ただ、遠藤航なりのキャプテンシーは? と問われれば、「変わらない」ことにあるんじゃないかと思っています。
僕はサッカーを始めてからというもの、ほとんどの時間を「キャプテン」として過ごしてきました。
中学時代を皮切りに、各ユース世代の日本代表、Jリーグの湘南ベルマーレ、ドイツのシュツットガルト、そしてA代表……。いろんなことを経験してきて、いつからか「キャプテンは自分だ」とすら思うようになるくらい当たり前のことでした。
もちろん、「自分がキャプテンじゃなきゃ嫌だ!」と思うようなことはありません。でも、たとえば(吉田)麻也さんがメンバーからいなくなった日本代表の発表を目にしたときは、「俺がやるよな」と感じていたことは確かです。
そのくらいずっとキャプテンをやってきたので、左腕にキャプテンの腕章があり、ピッチを先頭で歩くことがしっくりきます。単純にカッコいいと思うし、誰もが憧れている立場にいられる幸福感があります。
だから、簡単に変わってはいけないと思うんです。
ブレないともいうけど、チーム状況が悪い、うまくいかない、という理由でいきなり何かを変えることは「絶対に必要なキャプテンの仕事」だとは思えない。
そこは二者択一ではなくて、変わることが必要なときもあるし、そうじゃないときもあるということ。
今の日本代表は、本当に選手の質が高い。ただ、ワールドカップ優勝という目標がある限り、選手個々のレベルアップは欠かせません。
キャプテンとして選手の信頼を高めつつ、コミュニケーションを増やしながら「優勝」という目標を変えず、ブレさせない方向へ導いていく。それが僕の仕事だと思っています。
遠藤航/Wataru Endo
1993年生まれ。2010年に湘南ベルマーレに加入後、浦和レッズを経て海外に。ベルギー、ドイツでキャリアを積み、イングランド・プレミアリーグの名門リバプールの中心選手として活躍する。1対1の強さに定評のあるミッドフィルダー。サッカー日本代表のキャプテンも務めている。著書に『DUEL』などがある。