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2024.07.15

「笑点」女性初出演、新メンバー候補入りした蝶花楼桃花。抜擢された落語家たちを語る

真打昇進からわずか4ヶ月で寄席のトリを務め、テレビ番組「笑点」のレギュラー大喜利に女性初の出演を果たした落語家の蝶花楼桃花(ちょうかろう ももか)に特別インタビュー。第3回。

女性初「笑点」レギュラー大喜利への出演

2022年9月には、テレビ番組「笑点」のレギュラー大喜利に、“代打”として女性初の出演を果たした蝶花楼桃花(ちょうかろう ももか)。そのきっかけは、BS日テレの番組「笑点 特大号」での若手大喜利だった。

番組企画のひとつとして行われた、レギュラーチームと若手大喜利チームの対抗戦。チームの座布団数の合計で競う大喜利に、若手が勝利した場合の賞品として出されたのが、三遊亭円楽の“代打”として地上波に出演する権利だった。

見事、優勝した若手大喜利チームのメンバーとして、蝶花楼桃花も地上波に出演することが決定。しかし、自身が“女性初”の出演者になることを、収録直前まで知らなかったという。

「円楽師匠の代打ってことは聞いていたんです。レギュラー大喜利に出るのは初めてだったのですごく緊張していて。そしたら、スタッフの方から直前になって『女性初だよ!』と聞かされ、『そうなんですか!? ちょっと待ってください!』と軽いパニックになりました(笑)。

特大号の若手大喜利には、以前からよく出演させていただいていて。なんでも歌にする“歌キャラ”でやっていたんです。でも、『今回は地上波だから、歌ネタじゃなくて回答の面白さで笑いを取ってね』と言われ、『そんなこと言わないでくださいよ!』と、頭の中がごちゃごちゃの状態で出ることになり(笑)」

蝶花楼桃花/Chokaroh Momoka
1981年東京都生まれ。2006年、落語家の春風亭小朝に入門し、「春風亭ぽっぽ」として前座修行を開始。2011年、前座から二ツ目に昇進、「春風亭ぴっかり☆」︎に改名。2022年に真打に昇進し、「蝶花楼桃花」に改名した。明治座「ふるあめりかに袖はぬらさじ」の舞台出演や、沖縄国際映画祭出品作品「耳かきランデブー」の主演を務めるなど、落語家だけでなく女優としてもマルチに活動している。

そんな女性初のレギュラー大喜利への出演もあり、多くのメディアから注目を集めるようになった蝶花楼桃花は、次第に「笑点」の新メンバー候補として名が挙がるように。

一方、周囲から新メンバー候補として期待される蝶花楼桃花にとって、新メンバーが発表されるまでの時期は、なんともいえない困った思いを抱えながら過ごしていたという。

「宮治くんの時も、一之輔兄さんの時も、晴の輔兄さんの時も、レギュラー大喜利の新メンバーが発表されるまで、多くの方から期待の声をいただいていて。非常に光栄なことだし、とても嬉しいことでもありました。でも、私が新メンバーではないことは、私が一番わかっている。

みんなから『新メンバーになるんでしょ?』と言われ、『いや、私じゃないんです』と答えても、『発表までは言えないよね、、、』と信じてもらえず。私はなにも隠しごとをしてないのに、どこか皆さんを裏切っているようで、なぜか申し訳ない気持ちでいっぱいになるんです(笑)」

若手落語家たちとの楽屋は、いつも和気藹々とした雰囲気が漂っている。

笑点の新メンバーに3人が選ばれた理由

2022年に、林家三平の後任として選ばれた桂宮治。2023年に、三遊亭円楽の後任として抜擢された春風亭一之輔。そして、2024年に林家木久扇の卒業と同時に、新メンバーとして加わった立川晴の輔。

国民的なテレビ番組として55年以上の歴史を誇る「笑点」のレギュラー大喜利に、若手落語家の3人が選ばれたことについて、蝶花楼桃花はどのように感じているのだろうか。

「宮ちゃん(桂宮治)は、私より4歳くらい年上なんです。でも、もともとサラリーマンだったところから弟子入りしたので、3〜4ヶ月ほど後に入門した後輩。若手大喜利の時から一番目立っていて、新メンバーに選ばれたのも納得でした。

力技でもっていくっていうか、ブルドーザーのような勢いで、エネルギッシュに笑いを取る感じ。でも、楽屋ではすごく大人しいんです(笑)。それは本人も認めていて。普段は静かで落ち着いているんですが、スイッチが入るとどこまでも加速していける。同期として尊敬できる落語家のひとりですね」

プライベートでも一緒に遊ぶことが多いという蝶花楼桃花と桂宮治。

一方、続いて新メンバーに選ばれた春風亭一之輔には、桂宮治とは違う“おっとりさ”があるのだとか。

「一之輔兄さんは楽屋で話している時と、高座に上がっている時とでキャラがほぼ変わらない。まさに“天才肌”の落語家で、高座で語る枕話も面白いし、バラエティ番組などのトークもお上手。計算してやっているのかわからないくらい、平然とした顔ですべての仕事をこなす化け物です(笑)。

若手大喜利に出演したことがあるはずなのに、高座では若手大喜利に呼ばれないことをネタにしていて。そんな一之輔兄さんのスター性を見抜いて、大喜利のメンバーに抜擢した、笑点の番組スタッフの方々の目利きは、さすがだと思いました」

落語会だけでなく飲み会などでも一緒になることが多いという春風亭一之輔。

また、2024年に新メンバーとして加わった立川晴の輔は、大喜利における“立ち回り”が大きな魅力であり能力だという。

「私は、ずっと晴の輔兄さんが新メンバーになると予想していました。晴の輔兄さんとは、若手大喜利で共演していたのですが、全体を盛り上げる“バランサー”としての立ち位置が抜群で。

司会者をいじるネタが続いたら、一緒になっていじるネタをしたり、あえて自分だけ褒めるオチにしたり。前の回答者のネタに被せて面白いこと言う、チームプレイで笑いを取るセンスがあって。臨機応変に対応できる力は、これからも笑点で発揮されると思います」

立川晴の輔(左)がスペシャルゲストとして出演した蝶花楼桃花の「春の独演会」。

笑点のレギュラー大喜利に抜擢される人には、それぞれ落語家としての“力”があり、選ばれるのも納得だと語る蝶花楼桃花。そんな彼女も、いつか新メンバーとして舞台に上がる日がくるのだろう。

今、蝶花楼桃花が注目する若手女性落語家

地上波で放送されている「大喜利」のディレクターズカット版以外にも、さまざまなコーナーが企画されている「笑点 特大号」。最近では、女性の落語家を集めた“女流大喜利”も人気コーナーのひとつなのだとか。

そんな女流大喜利にも出演している蝶花楼桃花は、ここ数年でメンバーとしての立ち位置が変化しているという。

「笑点の大喜利は、メンバーが座る位置によって役割が少しずつ違うんです。例えば、今だと宮ちゃんが座っている右端の位置だったら、全体を盛り上げるネタをやることが多い。逆に、小遊三師匠が座っている司会の横の位置は、全体を見渡しながらバランスよく笑いを取るとか。

もちろん座る位置で上下関係があるわけではないのですが、大喜利はチームワークでやるものなので、自分に求められていることを座る位置で感じ取りながら、メンバーがそれぞれネタを考えて披露しているんです。

最初は、私も右端や中央に座ることが多かったのですが、後輩の女の子たちが増えてきてからは、司会者の横の位置に座ることが多くなってきて。司会者をやらせていただいたこともありました。そんなチャンスもいただけて、本当に有り難いと思いながら頑張っています」

今では、後から入ってきた女性の落語家たちのリーダー的な存在として、後輩女子たちを牽引している蝶花楼桃花。さまざまな個性を持つ後輩たちのなかでも、特に注目している女性落語家を聞いてみた。

「若手の女の子たちは、みんなそれぞれ輝いています。でも、ひとりを挙げるとしたら、やはり上方落語の桂二葉ちゃんでしょうか。2021年に、新人落語家の登竜門である『NHK新人落語大賞』で、審査員全員が満点という快挙を成し遂げ、女性初の大賞を獲得した実力者。

しかも、女性でも落語ができることを証明したうえで、受賞後のコメントで『ジジイども、見たか!』って発言して。新聞の見出しにまでなったんです。これだけ印象的な言葉を、場の空気をこわさずに言ってのけた二葉ちゃんは、本当にカッコいい女性の落語家だと思います」

普段から仲がいい桂二葉とは、一緒に“2人会”を開催したことも。

女性であることが個性のひとつだった落語界のなかでも、その数は年々増えていきつつあり、女性落語家それぞれの特性や性格が目立ち始めている今。さまざまなやり方や語り口を、ひとりの落語家として見てほしい。それが、蝶花楼桃花の一番の願いだ。

TEXT=坂本遼佑

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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