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2024.07.17

実は「大人AKB」の補欠だった! 女優志望から落語家に転身した真打・蝶花楼桃花

真打昇進からわずか4ヶ月で寄席のトリを務め、テレビ番組「笑点」のレギュラー大喜利に女性初の出演を果たした、落語家の蝶花楼桃花(ちょうかろう ももか)に特別インタビュー。第5回。

子供の頃の夢は、ミュージカル女優

今注目の女性落語家のひとりとして、多くの人々から期待を集めている蝶花楼桃花(ちょうかろう ももか)。しかし、幼少期の時分に目指していたのは、落語家ではなく“ミュージカル女優”だったという。

「きっかけは、幼稚園に移動ミュージカルが巡演に来たことでした。役者さんたちの演技が幼心に響いたのか、いつしかミュージカルの虜になっていて、家に帰るなり『将来はミュージカル女優になる!』と言っていたそうです。

また、近所に宝塚ファンのおばちゃんが住んでいて。ある日、宝塚歌劇のビデオを見せてもらったんです。以来、小学校低学年なのに、宝塚の世界にどっぷりハマって(笑)。親の手伝いをしてお小遣いを貯めては、日比谷の宝塚劇場にミュージカルを見に行っていました」

ミュージカル女優になることを夢見ていた幼少期の蝶花楼桃花。

高校生になっても宝塚への熱が冷めることはなかったという蝶花楼桃花。周囲の女友達が男性アイドルに夢中になるなか、ひとりだけ涼風真世などの宝塚スターを追いかけ、休日になると劇場の舞台を見に足繁く通っていたそう。

その後、高校を卒業した蝶花楼桃花は、東京のミュージカル専門学校に入学。本格的に女優を目指して講師の演技指導を受けながら、さまざまな劇団のオーディションに受けていた。

しかし、それは蝶花楼桃花にとって苦難の日々でもあったという。

「ミュージカル女優になることが、幼い頃から抱いてきた夢だったので、いくつものオーディションを受けました。しかし、いくらやってもオーディションで役をもらえず。

気がつけば専門学校を卒業していて、歳も20代半ばに差しかかる年齢に。そんな時、今まで伝統芸能のような自国の文化に目を向けていなかったことに気づいて。落語の世界に目覚めてからは、新たな希望が目の前に見えてきたんです」

蝶花楼桃花/Chokaroh Momoka
1981年東京都生まれ。2006年、落語家の春風亭小朝に入門し、「春風亭ぽっぽ」として前座修行を開始。2011年、前座から二ツ目に昇進、「春風亭ぴっかり☆」︎に改名。2022年に真打に昇進し、「蝶花楼桃花」に改名した。明治座「ふるあめりかに袖はぬらさじ」の舞台出演や、沖縄国際映画祭出品作品「耳かきランデブー」の主演を務めるなど、落語家だけでなく女優としてもマルチに活動している。

補欠にまで残ったAKB48のオーディション

そんな“落語”に人生を救われたという蝶花楼桃花だが、そこに至るまでには、さまざまなタイプのオーディションを受けていたそう。

「実は、AKB48のオーディションを受けたこともあるんです。しかも、1回だけでなく2回も受けていて(笑)。2回目に受けた時は、結構いいところまで行ったんですよ!」

女性アイドルグループ「AKB48」のオーディションを初めて受けたのは、ミュージカル女優を目指していた20代前半の頃。AKB48の1期生となるメンバーを決める最初のオーディションだった。

「年齢をサバ読みして応募したんです(笑)。でも、結果は残念ながらというか、やっぱりというか不合格でした」

その後、25歳で春風亭小朝に弟子入りした蝶花楼桃花は、30歳の時に前座から二ツ目に昇進。落語家として新たな一歩を踏み出す時期に、再びAKB48のオーディションが開催されることを知った。

尚美ミュージックカレッジ専門学校ミュージカル学科に在学して頃の蝶花楼桃花(右から3番目)。

「2014年に、30歳以上を対象に期間限定のメンバーを決める、「大人AKBオーディション」という企画が発表されたんです。期間限定のメンバーだったら、私もオーディションに合格できるかもしれないと思って。

でも、師匠の小朝に相談したら止められるだろうと思い、ダメ元でオーディションを受ける話をしてみたんです。そしたら、『君、受けなきゃダメだよ!』って、意外なことに師匠もノリノリで(笑)。応援してくれたんです」

オーディションの審査会では、他の受験者が歌やダンスなどを披露するなか、 ひとり“AKB48漫談”というネタで勝負に出た蝶花楼桃花。それは師匠の小朝とネタを出し合い考えた渾身の作だったという。

「ひとつだけ覚えているネタがあって。当時、AKB48の『前しか向かねえ』という曲がリリースされていたんです。

それで、前後開脚をしながらバナナを食べる動きをして、『メンバーの○○ちゃんって、変なバナナの食べ方をするよね、、、そう“前しか剥かねえ”!』っていう。

そのネタが受けたのかどうかはわかりませんが、途中審査をすべて通過することができ、最終審査にまで残ることができました」

そして迎えた最終審査の当日。プロデューサーの秋元康も審査員席に座り、5〜6人のグループで面接を受けることに。最終審査の課題は、その場で『会いたかった』の振り付けの指導を受け、審査員の前でダンスを披露するというもの。

ミュージカル劇団の役者たちとの思い出の写真(上段右端)。

緊張のなか即興で振り付けを覚えて披露した蝶花楼桃花は、どうにか最後までダンスを踊りきったそう。そんな最終審査から数日後、彼女のもとに1本の電話がかかってきた。

「『合格者がひとり決まったのですが、その方が辞退された場合、メンバーとして加入していただく可能性があります』と言われて。思わず『えっ!?』って飛び上がりました。

最終的にはそのままの結果になってしまったんですが、もしかしたら私が期間限定のメンバーになっていたかもしれないんです!」

その時、合格者として選ばれたのが、“まりり”の愛称で知られる塚本まり子。惜しくも不合格になってしまった蝶花楼桃花は、これまで通り二ツ目として落語家の道を歩み続けることに。

現在は、落語界で真打にまで昇進した蝶花楼桃花だが、もし大人AKB48のオーディションの結果が違えば、女性アイドルとして活躍する未来が存在したのかもしれない。

一緒にミュージカルをやっていた女性友達と(下段右端)。

蝶花楼桃花にとって“仕事”とは

最後に、これまで多くのことに挑戦してきた蝶花楼桃花が、これからやりたいことについて聞いてみた。

「今年で、真打になってから2年目を迎えました。とにかく多くのことを詰め込みながらがむしゃらにやってきたのですが、これから少しペースを落として“話”に向き合う時間も作っていきたいですね。

私はやはりお芝居が好きなので、歌舞伎を題材にした演目も覚えていきたい。でも、師匠が得意としている分野でもあるので、弟子としてはなかなか手を出しづらくところもあって、じっくりと時間をかけて習得していこうと思います」

また、さまざまなカタチの“芸能”にも挑戦していき、自ら経験したことを落語に還元することも、これからしてみたいことのひとつなのだとか。そんな蝶花楼桃花にとって、“仕事”とはなんなのだろうか。

「私にとって“仕事”とは、人生そのものです。落語家には、仕事とプライベートの境がない。日常生活で起こったこともネタになるし、プラスなこともマイナスなことも、人生で体験したことすべてが芸の肥やしになる。

落語って、稀有な商売なんです。なので、私そのものが“落語”になれるように頑張りたい。これからも高座にあがり続け、誰かの救いになればと思っています」

TEXT=坂本遼佑

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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