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2023.12.25

「アイツを見返したい」で頑張る人生は25歳まで。大人の怒りの鎮め方を考える

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、第7世代の生みの親・桝本壮志のコラム。

許せない人間はいますか?

バカにされた上司や先輩を見返したい。学生時代、いじめを受けたアイツに仕返しをしたい。さっきイラッとした取引相手を殴ってやりたくなった……など、頭に浮かんだ人もいるでしょう。

かくゆう僕にもいます。詳しくは後述しますが、僕には「夢を強制終了させられたヤツら」がいました。なので気持ちは分かります。

ということで今週は、イラっときた人、見返したい人、許せない相手への“怒りの鎮め方”についての思考法です。

「イラッ」を「アラッ?」に換えると得をする

まず、どんな人間でも「怒り」は平等に起るものですが、怒りのあとにやってくる「衝動」とは距離を置くことができます。

僕は、芸人学校でよく生徒たちに「イラッとくる瞬間を、アラッ?に換えよう」と伝えます。

明石家さんまさんも「お笑いに、暴力と涙はいらんねん」と言っていましたが、お笑いの力量とは“シリアスを受け流せる知性”にあるからです。

なので僕は、相手にイラッとしたら、「アラッ? 世の中にはこんなキモいヤツがおるんや」「アラッ? この人、よく見たら西岡徳馬に似とるやん」などと、おもしろ変換をしています。

一見、難しそうですが、実践していくうちに必ずルーティン化できます。そして、やがて気づくはずです。あなたが“おこり(怒り)そうな場面”で平然としていたら、良いことが“おこり(起り)”ます。

「アイツを見返す!」の「アイツ」はどんどん増えていく

芸人学校に入ってくる若者は、いじめ経験者、貧困家庭育ち、学歴コンプレックスなど、「アイツを見返したい!」という反骨精神が旺盛です。

あなたにも、かつて仕打ちをうけた上司や、「あなたじゃムリ」と反対した親や先生などがいるでしょう。

「見返したい人間」の存在は、立身出世のエネルギーになるので大いにけっこうですが、僕は生徒らに「誰かを見返したい人生は25歳まで」と伝えています。

なぜなら、見返したい人間を原動力にして、出世や就職をつかんだ人は、おのずとその成功体験によって“次に見返す相手を探し求めるパターンにハマりやすい”からです。

例えば、父親に猛反対されつつ芸人になった元教え子は、売れっ子になったあとも、飲みに行くと「○○局のプロデューサーが許せない」「○○先輩を見返したい」というマインドに支配されていたので、「仮想敵をつくらないと生きていけないヤツになっとるよ」と言うと、ハッとしていました。

そう、「見返す」に執着し過ぎると、周囲の人たちを斜めに見たり、怒りを自家製にしてしまうんですね。

「アイツを見返したい」の「アイツ」は増えていく。25歳をこえたら“自分の敵は、昨日の自分”くらいの感覚でいきたいものです。

怒りの根っこには「恐怖」を植えなければならない

18歳から約3年間、僕は芸人をやっていて、同期トーナメントで優勝したこともありましたが、その夢は強制終了させられました。

無実の罪(バイト先の金を盗んだ)を着せられ、大阪の西成で監禁。複数人にボコボコにされている間に、大切な劇場の出番を飛ばして、吉本に事実上の「クビ」を言い渡されました。

そのとき、僕はとんでもない仕返しを企みましたが、今では、その想像力の無さにゾッとします。

無実の罪で夢が潰えたことは、今でも歯ぎしりするほどの悔しさですが、もしも友人たちの必死の説得がなかったら、その恐ろしい仕返しを実行していたら、確実に塀の向こうにいるはずです。

そんな経験から学んだことは、“怒りの根っこには「恐怖」を植えておかなければならない”という教訓です。

怒りは冷静さを奪い去りますが、「手を出すとどんな刑になるのか?」「仕事や家族を失ってもいいのか?」「どんな暗い未来になるのか?」と想像してみましょう。心の根底に“恐怖”があるかないかでは、土壇場での想像力が180度かわってくるのです。

怒りを覚えたときは、またこのコラムを開いてみてください。一緒に考えていきましょう。それではまた来週。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。第7世代の生みの親。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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