「安心してください、はいてますよ」のおなじみのフレーズで、2023年は日本のみならず世界をも明るく照らしたお笑い芸人、とにかく明るい安村。10月にはなんとMC TONY名義でアーティストデビュー。デジタルシングル『PANTS』で、どのようなメッセージを世に放つのか!?
敗者復活→決勝進出のハプニングが楽曲制作のきっかけに
英国のオーディション番組で衝撃の再ブレイクを果たし、持ちネタの「Don’t worry, I’m wearing pants.(安心してください、はいてますよ)」がフランス、イタリアほか各国を席巻。今、勢いにのっている「世界のTONIKAKU」こと、とにかく明るい安村が、2023年秋、MC TONY名義でアーティストデビュー。ファーストシングル「PANTS」が、配信開始2ヵ月あまりで270万回超えという驚異の再生回数を叩き出している。
「ラッパーとしてデビューすることになったのは、アーティストの満永隆哉さんと知り合ったことがきっかけです。『ブリテンズ・ゴット・タレント』には、僕と、僕と同期の芸人・市川こいくちが出場していて、満永さんはこいくちの企画や動画制作で現地に同行していたんです。そこで僕が準決勝から敗者復活で決勝に進むことになったのですが、準備期間が一日ぐらいしかなくて、時差の関係で日本のスタッフとどうしてもタイミングが合わない。『ネタ、どうする!?』となった時に、満永さんが曲の編集や構成を手伝ってくださったんです。その後、帰国してから一緒に食事に行った時に、満永さんから『曲を作りませんか?』とお誘いをいただいたのが始まりです」
楽曲作りのキーパーソンとなった満永氏は、パフォーミングアーティスト「mic」として国内外で活躍し、自らもテックレーベルを率いてコンテンツ制作などに手腕を振るうクリエーターでもある。安村が誘いを快諾した直後にプロジェクトが動き出し、楽曲のプロデュースは、日本のグライムシーンを牽引しUKドリルにも造詣の深いDoucle Crapperz(ダブルクラッパーズ)が担当。楽曲作詞と、同時配信されたミュージック・ビデオの総合演出は満永氏が手掛け、覆面やフェイスマスクで顔を覆うダンサーたちが、UKドリルならではの不穏かつダークなムードを演出。サングラスをかけ、おなじみのフレーズでライムを刻む、MC TONY a.k.a. TONIKAKUが爆誕した。
MC TONYだからこそ刺さる「ありのままでいい」というメッセージ
エッジの効いたUKドリルサウンドにのせてMC TONYが放つ「No punch, No fight(戦いはいらない)」「Don’t flex(虚勢を張らないで)」「Be naked(ありのままで)」といったパンチラインの数々は、現在の殺伐とした世界情勢にも生々しくフィット。シンプルな裸芸ひとつで異国のオーディエンスをも沸かせ、厳しいオーディション番組のファイナリストとなった彼だからこそ発することができる、リアルなメッセージともいえる。
「周囲からの反応は思ったよりもすごかったですね。それまでドリル・ラップというジャンルは知らなかったのですが、ちょうどTikTokで『槇原ドリル』が流行りだした頃でもあったので、タイミングも良かったんだと思います。お笑い芸人が曲をリリースするというのは過去にも多々ありましたけど、プロデューサーの力量でこんなにクールに仕上がってくるのはさすがとしか言いようがないですね。『曲がカッコいい』とハリセンボンの(近藤)春菜とか、ゆりやん(レトリィバァ)から言われたのも嬉しかったし、DA PUMPのKENZOさんもご自身のYouTubeで『PANTS』を踊ってくださったりと、本当にありがたいことだなと思ってます」
聞けば、イギリスのコメディアンにもラップをする文化があるそうで、真夏のビーチでダウンを着こんで「俺たちはHOTじゃない」とラップするBIG SHAQなど、芸人とラップには親和性があるとも語る。『PANTS』のリリース以降は海外の視聴者からの反応もすこぶる良く、コラボレーションのリクエストやライブの要請も多数寄せられているというMC TONY。2024年以降の世界進出に向けて、大いなる野望も合わせて語ってくれた。
「もしマライア・キャリーとかレディー・ガガとかのスーパーセレブからオファーがあったとしても、僕はいつでも演(や)れる準備はしているので受けますよ。まあ向こう次第ですけどね(笑)……というのは置いておくにしても、2024年も世界に出ていって、オーディション番組以外のいろんな仕事にも挑戦して、そこでいい出会いがあれば喜んで演りたいです。アーティストとしてのライブですか?……一曲しか持ち歌がないので予定はまだないです。とりあえず、年末のNHK紅白歌合戦のスケジュールだけは、ばっちり空けていますけどね(笑)」