PERSON

2022.09.21

天才・有田哲平の解体新書「学生時代からプロデューサー気質だった」

くりぃむしちゅー有田哲平の知られざる魅力に迫る5回連載「天才・有田哲平という男」。3回目は、オンとオフの境がないという仕事人間・有田哲平の熱い想いを直撃!

有田哲平

自分でとるより、パスで笑いを起こす!?

「芸人としては、自分が面白いことを言って笑いをとるべきなんでしょうけど、『脱力』では、自分がパスを出すことで場が盛り上がり、笑いが起これば、それでいいって思っちゃうんですよね。極端な話、『今日はオレ、ひとつも笑いとってないな』でいいんです。

学生時代の仲間からは、よく言われるんですよ。『脱力』(『全力!脱力タイムズ』)が一番お前らしいって。確かに、『コイツのここ、面白いな』と思ったら、その人にそれをやってもらって、周りを笑わせることが好きでしたね。『脱力』でやっていることは、その延長かもしれません」

もっと面白くするために、もっと視聴者にサプライズを提供するためにと、これまでにないような番組を目指す有田。熱が入る分、企画会議の回数は増え、時間も長くなる。レギュラーを多数抱える身だ、その時間を捻出するのも一苦労だろう。

「正直、しんどいです。例えば、休日のゴルフ中も、スタッフから、『予定していた〇〇さんが出られなくなったんですけど、どうしますか?』って電話かかってきますからね(笑)。演者として出演し、好きなことをしゃべっている方がずっとラクだし、楽しい。でも、『脱力』が放送された後、いろんな人に『面白かった』と声をかけてもらえると、そのしんどさが吹っ飛んじゃうんですよ。漫才のネタをつくるのは大変だけど、舞台でドカーンと受けたら、苦労はすべて忘れられる。それと、同じですね。

まぁ、コロナ前も、芸人仲間や後輩と飲みに行っては、いつのまにかお笑い談義になっていたり、『この話、いつか『脱力』の中で使えないかな』なんて考えたりしていましたからね。今は、仕事が終わって家に帰ると、ソファに座って、お酒を飲みながら、テレビを流し、スマホをいじり、雑誌をめくって、3~4時間はボーッとするんですけど、その時も、『このニュース、面白いな』とか、『これ、いい話だな』って、なんだかんだインプットしていますね。自分では、ネタを仕入れようなんてつもり、全然ないのに。どこからどこまでが仕事で遊びなのか、自分でも区別できないんですよ」

オフにしたはずのスイッチが、いつのまにかオンに

スイッチをオフにしたはずなのに、いつのまにかオンになっている。常に頭の中に“お笑い”のことがある有田にとって、「仕事」とはなんだろう。

「うーん……。若い頃、バイトしていた時は、お金をもらうためにはしんどいこともしなくちゃいけない。それが仕事だと思っていました。でも今は、『仕事行ってくるわ』みたいに、ワードとして“仕事”を使ってはいますけど、気持ちとしては、毎日、遠足や運動会、学芸会に行くみたいな感覚なんですよ。ワクワク、楽しみでしかたがないというか。

『脱力』にしても、最初のオファー通り、ニュースのVTRを観ながら、面白いことを言うだけの方が、時間もかからないし、ラクだと思います。だけど、『こうしたら、もっと面白くなるんじゃないか』『もっと楽しくできるのでは?』って、動かずにはいられない。だから、月に1回くらい自分に言い聞かせるんですよ。『有田、お前お金をもらって、これをやっているんだぞ。仕事なんだぞ』って。そうしないと、楽しくしようという気持ちが、膨れ上がって、歯止めがきかなくなりそうで(笑)」

演者として、そして、制作者として、ただひたすら“笑い”を考え、追求する有田哲平。彼がつくる唯一無二の笑いに、これからも注目したい。

過去連載記事

Teppei Arita
1971年熊本県生まれ。’91年、高校の同級生・上田晋也とお笑いコンビ「海砂利水魚」を結成。2001年、コンビ名を「くりぃむしちゅー」に改名。現在、『しゃべくり007』『くりぃむクイズ ミラクル9』『今夜はナゾトレ』『世界一受けたい授業』などレギュラーを多数持ち、ピンでも『全力!脱力タイムズ』等に出演。俳優のほか、YouTubeチャンネル『有田哲平のプロレス噺【オマエ有田だろ!!】』も好評。

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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