2020年より日本で本格的に音楽活動を開始。2022年に放送され社会現象を起こしたドラマ『君の花になる』で劇中のボーイズグループ「8LOOM」のメンバーの一人を演じたことでも、注目を集めたNOA(ノア)。デビューするも、コロナ禍によって思うような活動ができなかったが、アジアツアーの集大成となる東京・有明での公演を直前に控えて、ゲーテに、自身のキャリアと仕事への思いを語ってくれた。後編ではそのクリエイティブの源を聞く。#前編 ■連載「NEXT GENERATIONS」とは
インプットは人間観察とドライブ
日本語、英語、韓国語の3ヵ国語を操る、トリリンガルという強みを活かし、SNSを通じて海外のファンとも交流するなど、アジア圏を中心に人気を獲得し、グローバルな活躍をする新世代アーティスト・NOA。
韓国大手事務所YGエンターテインメントから日本人初の練習生としてスカウトされ、2020年より日本で本格的に音楽活動を開始した。
楽曲制作やダンスの振り付け、そしてライヴ構成やセットリストもNOA自ら手がける。やるべきことが日々たくさんあるが、焦る気持ちより、喜びのほうが大きい。
「クリエイティブな作業は、時間を決めてやる、というのではなく、言い方は悪いですが、気が向いたらという感じなんです。
一日のなかでそういう感情になった時にやったほうが、そこからのエンジンのかかり方、浮かび上がるものが違う。
もちろん締め切りもありますし、そこは意識しますが、『今日はやるぞ!』と決めて、無理やり絞り出したものって、後で聴いてもあまり良いとは思えなくて。なら、そういう日は、表現ではなく別の作業をする時間にします。そのほうが自分にとっては効率がいいんですよ。
幸いなことに、まだ僕は、アイディアが浮かばずに苦しい、と感じたことはあまりないんです。浮かばなければ、すぐ諦めるからでしょうが(笑)。今は、生む苦しみよりも、インスピレーションが湧いた瞬間の幸福を噛み締めているんです」
アイディアを生み出すためのインプットは、散歩とドライブだという。
「音楽を聴きながら、街を歩いて、人間観察。これが1番曲作りにはいいですね。
カップルが歩いていたら、その時聞いている曲のイメージで、そのカップルの物語を勝手に想像したり。そうすると、自然と新しい音楽や歌詞が浮かび上がってきます。
ある程度曲が完成したら、その音源をドライブしながらクルマの中で聞いてみる。
僕は音楽を聴きながらするドライブが大好きなので、その新しい曲を聴きながら気持ちよく走れたら、その曲は完成。
『あれ? なにか違和感があるな』と思ったらもう一度つくりなおす作業へ。クルマの中は大事な確認の場所ですね」
ファンがつないでくれたjoanとのコラボ
アメリカのエレクトロ・ポップ・デュオ joanとコラボレーション楽曲も発表したばかり。彼らの英語の曲に、2行の日本語歌詞を付け加える作業もした。
「joanは大好きなミュージシャンで、曲をカバーして動画に上げたところ、僕のファンが本人たちへ送ってくれて。来日ライブで初めて会って、すぐに今回のコラボレーションのオファーをいただきました。
一緒にスタジオに入り、ニューヨークの街を一緒に歩けたのものとても光栄でした。
彼らのクリエイティブへの思いは聞いていたので、彼らの曲に日本語歌詞をつけるという作業はプレッシャーで(笑)。彼らの世界観を大事に、短い言葉で落とし込もうと考えました。完成後、意味を説明したら彼らも『それはいいね!』と言ってくれて、とても嬉しかったです」
この時、ニューヨークでの体験もまた、NOAにとって刺激になった。
「街を歩いていると、なにもかもが新鮮で、『ああ、もっと曲がつくりたいな』と思いました。すごく覚えているのは、すれ違う人から、ふわっとココナッツの香りがする瞬間がよくあったこと。そういう香水なのか、石鹸なのかを使っている人が多い印象で、僕も真似してココナッツの香りのボディミストを購入してしまいました(笑)。今は、毎朝シャワーの後に使っています。この香りを感じると、ニューヨークを思い出して、よしやるぞ!とスイッチが入るので、朝にぴったりなんです」
2022年はドラマ『君の花になる』で、演技にも初めて挑戦した。
「作詞作曲やダンスは、あくまで自分のままで行うものですが、演技は自分ではない、誰か他の人になる。それが最初はとても難しかったんです。自分では100%を出し切ったつもりでも、画面で見てみると30%くらいしか映っていないこともありました。なぜだろうと、監督や周りのキャストに聞いて、教えてもらったことは逐一メモ。毎晩寝る前にそれを見返す日々でした。とても学びが多く、機会があればぜひまた演技にもトライしてみたいです」
この発言からもわかるように、NOAは、「メモ魔」。毎晩、翌日やるべきことをスマホにメモ、朝は起きて最初にそのメモを確認することで1日を始めるのだという。
「心配性なんです。スマホにはメモのフォルダは10個以上あります。作詞用メモ、作曲用メモ、ダンス用メモ、演技用などなど……。メモして一度文字にすると、内容が身体に入っていく感じがするんですよね」
仕事は、キツければキツいほど楽しいもの
さらに2022年9月22日には初の写真集『Youth』も発売する。撮影は、12歳から練習生として武者修行した韓国・ソウルで行われた。
「写真集をつくることがあるなら、韓国で撮影すると、そう決めていました。みんなに見せたい風景が、韓国にはたくさんありますから」
撮影場所は、YGエンタテイメント練習生時代に使っていた駅や、よく歩いたエリアだ。
「先のこともわからず迷いながら歩いた場所に、仕事として戻ってくることができた。その喜びをかみしめるとともに、僕が見てきたものをみなさんと共有できるのがとても嬉しいんです」
12歳で渡韓し、芸の道を突き進んできた。今、NOAにとって仕事とは何かを聞いてみた。
「幸せ、ですかね。この道に憧れて、この道以外見えていなかった。だから仕事としてやらせてもらっていることが嬉しくて、楽しくてしかたない。もちろん、体力的にキツいことはたくさんあります。ダンスで肉体を酷使して、ツラいなって感じることは毎日です。
でも『キツイな〜、楽しいな〜』ってなっちゃいます(笑)。エンタテインメントって楽しいものですよね。楽しいからこそ生まれるもの、それを届けるのが僕の仕事だと思っています」
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■連載「NEXT GENERATIONS」とは
新世代のアーティストやクリエイター、表現者の仕事観に迫る連載。毎回、さまざまな業界で活躍する10~20代の“若手”に、現在の職業にいたった経緯や、今取り組んでいる仕事について、これからの展望などを聞き、それぞれが持つ独自の“仕事論”を紹介する。