2022年に放送されたドラマ『君の花になる』で劇中のボーイズグループ「8LOOM」のメンバーを演じ、人気を集めたアーティストのNOA(ノア)。アジア各国でも注目され、4ヵ国を巡ったアジアツアーも大盛況、そのツアー最終地となる有明での公演を直前に控え、自身のキャリアと仕事への思いを語ってくれた。■連載「NEXT GENERATIONS」とは
作曲、作詞、ダンスの振付まで手がけるトリリンガル
流暢な韓国語・英語を操り、2023年5月にはアジア5ヵ所を巡るツアーを敢行。先日は米ポップ・デュオ joan(ジョーン)とのコラボレーション楽曲も発表したばかりと、国際的に活躍するアーティストNOA。
作詞・作曲・振付まですべて自身で行い、2022年は初めてドラマにも出演。23歳のマルチプレイヤーの、そのキャリアが始まった最初のきっかけは、若干12歳で渡った韓国での日々だった。
「BIGBANGに憧れ、いつか自分も彼らのようなアーティストに、という思いだけで12歳で韓国に渡りました。もともと母は僕に海外経験を積ませたいと考えていたので、『やりたいことがあるなら早いうちに』と、すぐに韓国へ行かせてくれた。最初は言葉がわからず、スマホの翻訳機能片手に苦戦したのを覚えています。でもまだ12歳でしたから、不安よりもワクワクがひたすら強かったですね」
渡韓直後、通っていた美容院で、憧れのBIGBANGの事務所であるYGエンターテインメントからスカウトを受け、日本人で初めての練習生となったNOA。そこからは6年間の、芸と語学の修行が始まった。
「ダンスも歌も表現も、立ち居振る舞いも、英語も、すべての基礎を韓国で学びました。あの日々を忘れては絶対にいけない。
精神的にキツいこともたくさんあったけれど、一緒に泣いたり笑ったりできる仲間がいて、同じものが好きで、同じものを目指していたので頑張れた気がします。韓国語が上手だね、と言ってもらえるようになるまでは5年もかかりましたが(笑)」
そう謙遜するが、その韓国語は今やネイティブレベル。
エンタメの基礎も、語学も、すべてを学んだ地だからこそ、アジアツアー 「NOA 1st Live “NO.A” ASIA TOUR」でソウルを回った際は、他のどの公演より緊張したという。
「初のワンマンライブだったこのツアーは六本木からスタートし、その後、香港・台北・バンコク・ソウルを回りました。それぞれの国でそれぞれのリアクションがあって本当に面白かった。バンコクでは、全曲、お客さんが大合唱してくれて、待っていてくれたんだなと感激しましたね。
その一方、ソウル公演ではめちゃくちゃ緊張してしちゃって……他の公演では全くしなかったのに。すべてを教えてくれた街ですから。僕がソワソワしているので、一緒に踊っているダンサーの『TEAM NOA』の2人にも緊張が移ってしまったみたいで、申し訳なかったです(笑)。
練習生時代にお世話になった方たちにも観に来ていただいたりと感慨深い公演になりました」
BIGBANG・G-DRAGONが教えてくれたエンタメの世界の礼儀
日本でのメジャーデビューは2021年。まさにパンデミックの真っ只中だったため、制限のないライブは2023年5月に開催された「NOA 1st Live “NO.A”」が初めてだった。
「最初の六本木の公演で、歓声を浴びた瞬間にアドレナリンがブワッと出ました。
これまでは歓声を制限したライブしかできませんでしたから。お客さんに歌ってもらうパートをつくることができたのも本当に嬉しかったですね。
正直、こんなに長時間のライブも初めてで、頭で考えてしまうとパニックになりそうでした。実際『あれ、この曲の歌い出しの歌詞なんだっけ!?』と曲が始まっているのに思った瞬間も(笑)。『いや、ここは身体に任せよう』と、スイッチを切り替えた瞬間、スッと歌詞が出てきましたけどね。やはりああいう場所では、頭ではなくて、身体に頼るのがいいのだなと。
その一方で会場の大きさに合わせて、ダンスの見え方を、コントロールすることも必要でした。広い会場だと予想以上に自分が大きく動きすぎてしまっていることがあって。そういう風にリアルな経験をたくさん積ませてもらった、本当にたくさんのものをいただいたツアーでした」
その最終日となる公演が、2023年9月9、10日有明アリーナで開催される。
「僕自身もソワソワするくらい、ツアー初日の六本木の公演とはまったく違ったものになる予定です。今は構成を整えて、身体も最後の調整中です」
初めてだらけだったツアーを、ここまで乗り越えられたのは、ともにステージに立ったダンサー「TEAM NOA」のメンバーの力が大きいと、NOAはいう。
「ステージでは、僕1人を見てもらいたいというよりは、みんな揃って見てもらいたいと常に思っています。彼らは仕事仲間でもあるけれど、大事な友達。そういう関係性を作れるのが理想だったので、お互い忌憚なく意見を言うし、オフの時は一緒に旅行も行ったりしているんですよ。みんなを引っ張れる存在に、僕はならないといけないのかもしれませんが、それよりも、一緒に乗り越えているという感覚が今は、大きいですね」
ソロアーティストとして活動するNOA。ライブの時もだが、一緒につくり上げているチームのメンバーひとりひとりをリスペクトしていることが、インタビューの時も自然と伝わってくる。仲間を大事に、誰にでも丁寧に接する姿勢は、BIGBANGのリーダーでプロデュースも手がけるG-DRAGONから学んだという。
「韓国で練習生をしていた時、たった一度ですがお会いする機会がありました。お会いしたというより、たまたま同じ場所に居合わせただけだったのですが、こんな機会二度とないかもしれないと思って、勇気を振り絞って挨拶に行ったんです。いち練習生の僕がそんな大スターに声をかけていいものかもわからなかったのですが、一番憧れていた人だったので」
BTSのジョングクやJ-HOPEをはじめとした現役アイドルがロールモデルとして名前を挙げるほど、デビュー当時からキング・オブ・K-POPとして君臨し続けるG-DRAGON。震えながら声をかけた時、G-DRAGONは非常に丁寧に、そして深くおじきをした。さらにあまたいる練習生のうちから、すでにNOAの存在を知っていたのだという。
「こんな僕のことも見てくれていて、丁寧に接してくださった。普段からメディアで見ているG-DRAGONさんもメンバーや後輩にすごく丁寧ですよね。ああこんなふうに周りを気遣える人になりたいと、強く思ったんです」
後編では、NOAのクリエイティブの源について、聞く。(9月8日公開予定)
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■連載「NEXT GENERATIONS」とは
新世代のアーティストやクリエイター、表現者の仕事観に迫る連載。毎回、さまざまな業界で活躍する10~20代の“若手”に、現在の職業にいたった経緯や、今取り組んでいる仕事について、これからの展望などを聞き、それぞれが持つ独自の“仕事論”を紹介する。