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2023.06.28

【野村克也】組織の危機時、新リーダーが交代後にまずすべきこと

戦後初の三冠王で、プロ野球4球団で指揮を執り、選手・監督として65年以上もプロ野球の世界で勝負してきた名将・野村克也監督。没後3年を経ても、野村語録に関する書籍は人気を誇る。それは彼の言葉に普遍性があるからだ。改めて野村監督の言葉を振り返り、一考のきっかけとしていただきたい。連載「ノムラの言霊」3回目。

野村克也監督連載第3回「組織の危機時、新リーダーが交代後にまずすべきこと」

日本一9連覇・川上監督の核心を突いた言葉

「野村君、リーダーや監督が交代するというのは組織の危機のときなんだ」

野村克也(南海=現・ソフトバンク)が、監督就任を川勝傳オーナーに依頼された1969年(昭和44年)オフ、川上哲治監督(巨人)に聞いた、この言葉を思い出したそうだ。川上はのちに巨人不滅の日本一9連覇の金字塔を樹立した名監督である。

巨人は1956年から3年連続して日本シリーズで「三原脩・西鉄(現・西武)」に敗れる。1959年日本シリーズは杉浦忠(南海)の4連投でストレート負け。1960年は「三原脩・大洋(現・DeNA)」に敗れ、巨人はリーグ優勝からも遠ざかる。川上は1961年に巨人監督に就任した。

南海は長期政権だった鶴岡一人監督が勇退、後継者の蔭山和夫監督が急逝、飯田徳治監督は最下位により、わずか1年で引責辞任。巨人にしても南海にしても、チームが崩壊しそうな、まさに危機のときの監督交代劇だった。

監督も手探りだが、選手はもっと不安

思えば2021年シーズンを最後に、10年間日本ハムを率いた栗山英樹監督が勇退した。後半5年間は3位が1度、5位が4度と低迷。新たに新庄剛志監督が就任し、16.5ゲーム差の最下位に沈んだが、今季は4位浮上と、「育成」の結果を出しつつある。

2023年プロ野球界の監督交代は4チームある。

<阪神>矢野燿大監督2022年3位→岡田彰布監督1位、<広島>佐々岡真司監督2022年5位→新井貴浩監督4位、<西武>辻発彦監督2022年3位→松井稼頭央監督6位、<ロッテ>井口資仁監督2022年5位→吉井理人監督3位である(2023年6月18日現在)。

岡田監督は2005年の優勝監督とはいえ、再建を託された阪神は17年間も優勝から遠ざかる。それ以外は「新米監督」である。現段階では4チーム中、西武を除く3チームが順位を上げ、「監督交代」の効果を出していると言っていい。

ただ、方向性の継承であろうと、刷新であろうと、「リーダーの交代期」はチームの危機に変わりはない。

監督はチーム力を把握するのにしばらくは手探り状態であるし、選手たちも監督の「野球観」「野球の方向性」「采配」を知るにはそれなりの時間がかかる。しかも投手出身の監督と打者出身の監督で、めざす方向性が大きく違うこともあるだろう。

サッカー界などは任期途中での監督交代劇が日常茶飯事なくらいシビアだが、プロ野球とて当初3年契約でも、2年での解任は多くみられる。

10年間で監督が9人交代、結果はすべてBクラス

特に、選手サイドの不安は大きい。

支配下登録選手70人のうち、一軍登録は29人(投手12人、捕手3人、内・外野手14人)の枠がある。

新監督が「自分の色」を出そうとしたとき、方向性が異なれば除外される。人間だから性格の不一致もある。試合に起用してもらえない選手は、トレードや引退の危機もある。

選手も部下も、監督や上司を選べないのだ。
                         
監督の交代で失敗した顕著な例を挙げる。

オリックスは2001年仰木彬(4位)、2002年石毛宏典(6位)、2003年レオン(6位)、2004年伊原春樹(6位)、2005年仰木彬(4位)、2006年中村勝広(5位)、2007年コリンズ(6位)、2008年大石大二郎(2位、2009年6位)、2010年岡田彰布(5位)。10年間で9人と、監督が目まぐるしく変わった。

監督によって当然めざす野球は変わるし、コーチの顔ぶれも指導も変わる。

気の毒なのは選手のほうで、落ち着いてプレーできない。この間、打者でベストナインに選出される活躍をした日本人選手は谷佳知が4度とT-岡田(貴弘)が1度のわずか2人しかいない。

5つの監督タイプ

野村が挙げた例によれば、監督のタイプは大別して5つある。

1.管理型
食生活、体調管理に厳しい。(例:広岡達朗監督)

2.納得型
根拠を納得させて選手を動かす(例:野村克也監督)

3.情感型
選手の心に訴える(例:星野仙一監督)

4.報酬型
やればやるだけ給料に反映させる(例:鶴岡一人監督)

5.実績型
現役時代の成績で引っ張る(例:長嶋茂雄監督、王貞治監督)

さて、冒頭の巨人に戻ろう。

川上監督は、戦力に恵まれないメジャーリーグのドジャースが毎年優勝争いに加わることに注目。

「ドジャースの戦法」の著者であるアル・カンパニスから直接指導を仰いだ。

「情報野球」「管理野球」を導入し、指導役として牧野茂をヘッドコーチに置いた。

監督1年目の1961年に「チーム打率リーグ6位」、当時としては珍しい「20勝投手不在」ながら、「守備力中心」の野球を実践して、いきなりセ・リーグを制覇した。

野村は捕手として脂が乗っていた34歳だった。現役を引退するのではなく、捕手・4番打者の「プレーイングマネージャー(選手兼任監督)」として戦力の低下を防いだ。

またドン・ブレイザーをヘッドコーチに起用し、ともに「考える野球」を推進、最下位のチームを2位に引き上げたのである。
 

まとめ
監督が交代するときは監督自身もだが、選手も不安を抱いている。片腕となるべきコーチを置き、めざすべき方向性を選手に明確に示すのが重要である。
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著者:中街秀正/Hidemasa Nakamachi
大学院にてスポーツクラブ・マネジメント(スポーツ組織の管理運営、選手のセカンドキャリアなど)を学ぶ。またプロ野球記者として現場取材歴30年。野村克也氏の書籍10冊以上の企画・取材に携わる。

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TEXT=中街秀正

PHOTOGRAPH=毎日新聞社/アフロ

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