アスリート、文化人、経営者ら各界のトップランナーによる新感覚オンラインライブイベント「Climbers(クライマーズ)」。その第6弾が、2023年4月26日から3日間にわたって開催され、ビジネスパーソンを大いに熱狂させた。今回、ドラァグクイーンのナジャ・グランディーバさんによる特別講義を一部抜粋して掲載。すべての講義を聴くことができるアーカイブ配信はこちら。※2023年5月2日〜5月15日18時までの無料限定公開。申し込みは画面内右上もしくは下の「視聴登録はこちら」より
堂々と振る舞っていたら、自然に人が集まってきた
子どもの頃から、所作や言葉遣いが女の子っぽくて、オカマやオカマラスってあだ名で呼ばれていました。高校に入って思春期になると、男が好きだとはっきりとわかった。私にとっての恋愛対象は男性なんだなあと。
でも、いじめられた記憶はないんです。「あの人、オカマじゃないの」と陰で言われることはあったけど、それで嫌な思いをしたことはない。だって、「その通りです。それが私なんです」としか言いようがないじゃない。そう生まれてきたんだから、しゃーないやんか。受け入れて生きていくしかないんです。
同性愛者であることでいじめられるという人は、過敏に反応しちゃっているのではないでしょうか。感情的に言い返しても、周りはおもしろがって、さらにいじめてくる。「そうだけど、何か悪いの?」くらいの毅然とした態度でいれば、周囲は何も言ってこなくなります。
堂々と振る舞っていたら、自然に人が集まってきました。「しゃべってみたら、意外におもしろいヤツだな」と言われて。学生時代、友達はいっぱいいましたよ。
ただ、少し寂しい気持ちもありました。私は兵庫の田舎町で育ったので、周りに私みたいな人はいなかったんです。私のようなゲイは、テレビで見るおすぎさんとピーコさんだけ。世界にゲイは3人しかいないのではと感じていましたね。
それが大学進学で大阪に出て、世界ががらっと変わった。ゲイバーに行ったら、私と同じ人がたくさんいる。しかもイケメンがいっぱい。自分の居場所を見つけ、どっぷりゲイライフを楽しみ始めました。
マツコ、ミッツとは別の路線で
芸能界で働くようになって意識したのは、自分らしさを重視して、考え過ぎずにやっていこうということ。だって、毒を吐くのはマツコ・デラックスさんに敵わないし、知識で勝負しようとしたらミッツ・マングローブさんに勝てません。2人と勝負するのは無理だなと。でも、私には2人にはない「穏やかでのんびりしている」という個性がある。それでやっていこうって思ったんです。
今は人の目を気にせずに、マイペースで仕事に励んでいます。6割くらいの力の入れ具合。それが私に合っていて、楽しく幸せに仕事を続けられています。でも、家族へのカミングアウトは苦労しましたね。
テレビでレギュラー出演の仕事をいただいた時、家族にカミングアウトしようと決意しました。母親に電話をかけ、「女装してオネエとしてテレビに出ることになりました」と報告したんです。母親は「それだけはやめてくれ」と。実家は兵庫の田舎町で米屋をやっていて、息子がゲイだと知れたら、商売に影響するかもしれないと言うんです。
でも、次の日の朝、母親から電話がかかってきました。たぶん、家族会議でも開いて、1日考えたんでしょう。「好きにしたらいい」と言ってくれた。その言葉がなかったら、私は今もアンダーグラウンドのままだったと思う。家族も息子がゲイであることを今も隠し続けていると思う。勇気をもって決意してくれたことを、ありがたく感じています。
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2023年5月2日〜5月15日18時までの無料限定公開。申し込みは画面内右上もしくは下の「視聴登録はこちら」より。※アーカイブ視聴申し込みは5月14日18時まで
ナジャ・グランディーバ/Nadja Grandiva
兵庫県生まれ。大阪在住のドラァグクイーン。毒舌を言わない「のんびりオネエ」として、関西を中心に活動中。CBC『ゴゴスマ』やMX『バラいろダンディ』等のレギュラーや多数のメディアに出演している。MBSラジオ「ナジャ・グランディーバのレツゴーフライデー」が、2021年の日本民間放送連盟賞【ラジオ・生ワイド番組部門】にて、優秀賞を受賞。近著に初エッセイ『毎日ザレゴト』(大和書房)がある。