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2021.10.21

社会人で花開いた”遅咲き”栗林良吏の伸びしろとは?

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。今回はセリーグ新人王候補筆頭・栗林良吏の夜明け前。【第14回 大野雄大(中日ドラゴンズ)】

トヨタ自動車時代の栗林

2020年9月16日 都市対抗予選 対東邦ガス戦(社会人2年目)

今年はセ・パ両リーグともルーキーの当たり年と言われ、近年稀に見るハイレベルな新人王争いが繰り広げられているが、セ・リーグで頭一つリードしていると見られるのが栗林良吏(広島)だ。故障で出遅れたフランスアに代わって抑えを任されると、プロ野球記録となるルーキーによる開幕から22試合連続無失点を記録。東京オリンピックでも侍ジャパンのメンバーに選ばれると、チームで唯一全5試合に登板し、見事なピッチングで日本の金メダル獲得に大きく貢献した。

そんな栗林だが、愛知黎明高校時代は県内ではそれなりに名前を知られる存在だったものの、全国的には無名の選手で、才能が開花したのは名城大に進学してからである。1年春から先発を任され、4年間でリーグ戦通算32勝という数字を残している。栗林のピッチングを見たのは2016年3月16日に行われた東海地区の社会人チームと愛知大学野球連盟の交流戦。トヨタ自動車との試合だった。当時2年生だった栗林は先発を任せられると、社会人でもトップクラスの打線を相手に5回を投げて1失点の好投を見せている。春先ということもあってストレートの最速は140キロにとどまり、6個の四球を与えるなど制球にも苦しんだが、それでも要所を締めて最少失点にまとめることには能力の高さがよく表れている。

当時のノートにも「体はそれほど大きくないが、テイクバックできれいに肘が立ち、フォームの良さは出色」、「リリースがばらつき、スライダーで少し肘が下がるなど課題もあるが、長所の方が目につく」などと書いている。

全国的に栗林の名前が広く知られることになったのはこの年の秋に行われた明治神宮大会だ。初戦で上武大と対戦し、1対2で敗れたものの被安打8、7奪三振で完投。ストレートの最速は146キロをマークしている。そしてこの試合で強く印象に残っているのは初回に起こった出来事だ。試合開始直後の初球で審判から当時は禁止されていた二段モーションの指摘を受けて、普段とは異なる慣れない左足の上げ方で投げることを余儀なくされたのだ。このことに動揺があったのか先頭打者の島田海吏(現阪神)に四球を与え、先制点を奪われている。しかし2回以降はしっかり立て直し、最終的に9回を2失点で投げ抜いた修正能力の高さは見事という他ないだろう。

しかしその後の栗林は全てが順調だったわけではない。翌年の明治神宮大会では前年を上回る最速149キロをマークしたものの、九州共立大の4番片山勢三(現パナソニック)に2本のホームランを浴びるなど8回を投げて7失点を喫している。また大学4年時にはプロ志望届を提出したが、2位以内であれば社会人に進むという条件だったこともあって指名を見送られている。

全12球団のスカウトの前で圧巻の投球

ようやく栗林がプロからの高い評価を不動のものとしたのはトヨタ自動車に入った社会人2年目、’20年9月16日に行われた都市対抗予選、対東邦ガス戦だった。この年はコロナ禍で軒並み大会が中止となり、公式戦の初戦が最も重要な都市対抗予選の初戦という難しい状況だったが、そんな条件でも栗林は試合開始直後から相手打線を圧倒。最速150キロをマークしたストレートと140キロ近いカットボール、130キロ台のフォーク、120キロ台のカーブと多彩な変化球も完璧に操り、7回を被安打2、無失点、10奪三振という圧巻の投球でチームを勝利に導いてみせたのだ。この日のスタンドには全12球団、35人ものスカウトが集結していたが、シーズン最初の大事な試合でこれだけの注目を集めながら完璧な結果を残せるのはやはり圧倒的な実力がある証拠である。

そして栗林の進化はもちろんこの後も続いている。ドラフト会議後の11月22日に行われた都市対抗本大会の初戦、セガサミー戦では7回を13奪三振と好投しながらも2回に浴びたツーランホームランで負け投手となり、悔しい社会人野球の最後となったが、プロ入り後のキャンプ、オープン戦では決め球となるフォークを改良。10月17日終了時点で51試合に登板しているが、ホームランはいまだに1本も打たれていない。これも都市対抗での悔しい敗戦を糧に成長を遂げた証と言えるだろう。

開幕直後からフル回転してきた疲労もあって走者を背負う場面も増えているが、それでもベンチ、ファンからの信頼は絶大なものがある。来年以降も更にレベルアップを果たし、名実ともに日本一のクローザーへと成長してくれることを期待したい。

【第14回 大野雄大(中日ドラゴンズ)】

Norifumi Nishio
1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

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