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2021.06.07

パンデミックの先を見据えたbills創業者が描く未来【ビル・グレンジャー#3】

スクランブルエッグがイギリスの『The Times』紙で”世界一の卵料理”と絶賛され、トム・クルーズやヒュー・ジャックマンなどハリウッドセレブにもファンが多い「bills」。いまだに収束の気配が見えないコロナ禍の中で、ブームの仕掛け人であるビル・グレンジャー氏を独占インタビューした。現在5ヵ国で19店舗を展開する「bills」創始者の現在・過去・未来とは――。第3回は未来編。【第1回現在編】【第2回過去編

(c)Mikkel Vang

ロンドンではデリバリーサービスにチャレンジ

リピーターが絶えない人気店とはいえ、コロナ禍の今、「bills」もかつてない苦境に断たされている。日本での営業時間短縮はもちろんのこと、シドニーやロンドンでは、ロックダウンで休業を余儀なくされた。その中で、充実を図ったのがテイクアウェイとデリバリーだ。

「ロンドンでも、ロックダウンが始まってからロンドンの”Granger & Co”というレストラン名を文字った”Granger&Go”というネーミングで独自のデリバリーサービスを始めたんだよ。専用のサイトをつくり、レストランスタッフが直接デリバリーし、2マイル圏内限定で温かいお料理などを提供している。これが、予想以上に好評で、お客さまから嬉しい声をたくさんいただいているんだ」

日本国内の全8店舗では、テイクアウェイサービスを開始。従来のドリンクメニューに加え、昨年5月からフードメニューも提供。公式サイトでオーダーから決済まで行えるようにするなど、極力非接触でオーダーが可能だ。

国内店舗ではバーガーなどのテイクアウェイメニューが人気

パンデミックで再認識したbillsの魅力

「パンデミックの中で私が再認識したのは、billsというレストランは、お客さまが来てくださってこそ成り立つものだということ。billsは、料理だけでなく、店のロケーション、雰囲気、サービスなどを通じて、いつもと違う体験をしていただくためのレストラン。お客さまの存在は、店にとって欠かせない、大切なピースのひとつなんだ」

このパンデミックに大きく影響される世界の飲食業界だが、海外ではレストランの席を道路まで広げることで、密を回避したオープンエアの席をつくるという面白いムーブメントが広がっている。インタビュー時、ロンドン・チェルシーの店舗にいたグレンジャー氏は「許可が下りて、ここでもテラス席を増やせることになったんだ」と嬉しそうにZoomの画面越しから説明してくれた。

シドニーの店舗でもテラス席を増設

オンラインミーティングの定着でコミュニケーションが密に

コロナ禍が「bills」にもたらしたプラスの側面に、オンラインミーティングの定着がある。

「各国の店を訪れ、スタッフと顔を合わせることをすごく楽しみにしていたので、最初のうちは残念でならなかった。けれど、オンラインでのコミュニケーションを始めたおかげで、以前よりスタッフとの話し合いが頻繁にできるようになったのも事実。日本のスタッフとも、頻繁に時間をかけて話し合うことができているしね。これは、パンデミックのおかげと言えるかもしれないね。近い将来、また多くの方々がいらしてくださる時に備え、みなさんが愛してくださっている『bills』らしさを大切にしつつ、より素敵な時間を過ごしていただけるよう考えているよ」

そう言った後、グレンジャー氏は、「そういえば、日本に出店した当時も、離れた地のスタッフとどうコミュニケーションをとればいいか、ものすごく考えたね」と、振り返った。環境も文化も考え方も違う異国の地で、「bills」のスピリットやスタイルを形にするにはどうしたらいいか。日本進出は、グレンジャー氏にとって、経営者としての力を試されると同時に、「bills」の在り方を見つめ直すターニングポイントになったようだ。

「日本に店をオープンすることで、学んだこと、得たものはたくさんあるんだ。日本での出店は、私を大きく成長させてくれたと感謝しているよ」

創業30年に向け、新たな分野に挑戦を

「パンデミックによって、外食という概念が大きく変わりつつある今、それに応じて、私自身も『bills』も変化していきたいと思っているよ。考えているのは、billsの雰囲気を家まで持って帰ってもらえるようなアイデア。『bills』にいるかのような、楽しく、豊かな雰囲気を味わっていただけるよう、テーブルウェアなどを届けられたらいいなと考えているよ」

さらに、毎日通えるような少し規模の小さいbillsを日本にオープンしてみたいという思いもあるのだとか。

「私たちの店も、現在、これまで体験したことのないような困難な状況に直面しています。けれど、これに打ち勝てれば、この先どんなことが起こっても乗り越えられるはず。『“経営”なんてなんてことないさ!』と、冗談が言えるようになる日がくるかもしれないね(笑)」

コップにはまだ水が半分もある。その精神こそが、ビル・グレンジャー氏と「bills」の成功の源になっているようだ。

Bill Granger’s TURNING POINT
1993年 23歳 シドニー郊外のダーリンハーストに「bills」1号店をオープン
2000年 29歳 最初のクックブック「Sydney Food」を発売
2002年 31歳 ニューヨークタイムズ紙で「シドニーのエッグマスター」と称される
2004年 33歳 BBCで自身の名を冠した料理番組シリーズ「Bill’s Food」放映
2008年 37歳 海外1号店として日本に「bills 七里ヶ浜」をオープン
2011年 40歳 ロンドン1号店「Granger & Co Notting Hill」をオープン
バッキンガム宮殿の晩餐会に招かれエリザベス女王に料理を振る舞う
2014年 41歳 ハワイ・ワイキキと韓国・ソウルにそれぞれ「bills」をオープン
2020年 59歳 12冊目のクックブック「Australian Food」を発売

Bill Granger
1969年オーストラリア・メルボルン生まれ。’93年、当時通っていた美術大学を辞め、「bills」一号店を開く。2008年、海外第一号店を日本でオープンし、現在は日本国内に8店舗のほか、ロンドン、ハワイ、ソウルにも店を構える。5つの料理番組が世界30ヵ国で放映され、レシピ本も12冊出版。イギリスとオーストラリアの新聞や雑誌に毎週コラムを執筆するなど、フードライターとしても活躍。

第1回現在編はこちら
第2回過去編はこちら

TEXT=村上早苗

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